「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は、自動車関連メディア39媒体が主催する、日本の自動車界でもっとも権威のある賞典。毎年一定期間(今年は2022年11月1日~2023年10月31日)にデビューした国内外の新型車の中から「今年を代表する1台」を選出する。44回目となる今年度のノミネート車は全34車種で、各メディア(実行委員会)から選出された自動車に造詣の深い選考委員60名により選出される。
今年、最も点数を集めて「イヤーカー(大賞)」に選出されたのは、トヨタのプリウスだった。
「文句なしの10点!」わたしが「今年の一台」にトヨタプリウスを推した理由【日本カー・オブ・ザ・イヤー2023】
本稿では、当社から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員として推薦した国沢光宏氏に、投票先と投票理由を伺います。
文/国沢光宏、写真/日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
■「今年の一台」に「プリウス」を選んだ理由
今回もおそらく次回も、日本だけでなく世界の自動車産業がカーボンニュートラル時代へ向かう「変革期」ということを感じさせる日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下「COTY」)選びになると考えます。
国沢光宏氏の最終選考会の投票内容とスライド
あらためて説明するまでもなく、エンジンを積んだクルマはハイブリッドやPHVを含め、遅くとも今後十年くらいしか販売出来なくなるだろう。となれば、今から開発したって10年ほどしか製品寿命がありません。新しいパワーユニットを投入するメーカーなど出てこないかと。
かといってエンジン車のような使い勝手やコストパフォーマンスを持つ電気自動車が出てくるのは、これまた世界規模での自動車産業の動きを総合したら早くて2026年頃という状況。
逆に考えると、次世代の技術が出てくるまでは、デザインを含めたブランドイメージで勝負していくしかない。デザインが悪くて企業イメージの薄いモデルは厳しい戦いになることを意味する。それがわかっていないメーカーは、売れ行きを落とす。
早くもその兆候が出ており、直近の納期を調べると、プリウスもアルファード/ヴェルファイアも需要が爆発しており(欲しい人が多いということ)、受注を停止しているほど。「10ベスト」に残ったクルマの中で圧倒している。
国沢氏は「今年の一台」として10点をトヨタプリウスへ投票
そんなプリウスながら、先代モデルは世界的な規模での大失敗作だった。そらそうだ。初代からプリウスに乗り次いできた私ですら、見た瞬間に「いらね」と思ったほどカッコ悪かったからだ。世界中から「いらね」と言われた。
興味深いことにトヨタの中にはデザインの悪さが原因じゃなく、「プリウスというクルマの記号性が無くなった」と評価する人も居たそうな。そらそうだ。超カッコ悪いデザインを決めた人は、そう言って逃げるしかあるまい。
けれどプリウスの開発陣は逆バネにする。「売れることを期待されないのなら開き直って趣味性の高いクルマにしよう!」ということです。おりしもデザイン部門のトップがサイモン・ハンフリーズさん(Simon Humphries/トヨタ自動車デザイン領域担当取締役・執行役員)という素敵な人になった。
それでも「プリウスの寿命は終わった」と考える人が多かったらしく、生産計画台数は最小限に絞っている。欧州などはPHVしか売れないと判断したほど。
一方、開発陣は「趣味のクルマにする」と決めた時点でパフォーマンスの追究を行い、さらに最新のADAS(先進運転支援システム)まで投入。結果的にデザインは世界的に「超」が付くほど高く評価され、まったく生産が追いつかなくなった。という面白い物語でございます。文句なしの10点!
■わたしが選んだ「今年の一台」2位 トヨタ・アルファード/ヴェルファイア…4点
前回までのように5車種に点数を入れられるのであれば、相当違う配点になったと思う。アル/ヴェルはもっと高い点数にしたことだろう。事実上の最上級グレードしかラインナップしていないのに、受注を停止しなければならないほど売れている。
「今年の一台」、国沢氏が2番手となる4点を投じたのはトヨタアルファード/ヴェルファイア
今回の10ベストカーの中でナンバーワンの商品力だと考えます。しかも兄弟車に2000万円のレクサス(LM)があったり、タイなど新興国で2000万円近い価格にも関わらず売れたりしてるなど、話題豊富。
■わたしが選んだ「今年の一台」3位 スバル・クロストレック…2点
3台目を選ぶのは大いに迷った。プリウスやアル/ヴェルとまったく視点を変えた(マセラティ)グレカーレや、同じボディに電気とガソリン、ディーゼルというパワーユニットを同時に搭載してきたBMW X1なども、前回までの「5台に投票」なら選んだと思う。
三番手となる2点を投じたのはスバルのクロストレック
クロストレックは、10ベストに漏れたレイバック(日本車の中で群を抜いたシャシ性能)と、すばらしいコストパフォーマンスを持つインプレッサの兄弟という観点から選びました。
■「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選んだのは三菱デリカミニ
プリウスの投票理由でも紹介したとおり、クルマという商品にとってデザインは重要。本来ならプリウスをデザインCOTYにしてもよかったのだけれど、他の要素も大きかったということで本賞に。純粋にデザインが販売台数に直結したクルマとしてデリカミニを選んだ。なんたってeKクロスと中身は同じ。主としてフロントデザインを変えただけで、これほど話題を集め販売台数を伸ばした。デザインのチカラって大きい。
「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に選んだのは三菱デリカミニ
■「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」に選んだのは…棄権(該当車なし)
私にとって今までのテクノロジーCOTYは「まったく新しい技術」が対象となっていた。といった観点から今回のノミネート車を見ると、これといった新しい技術やトライは見当たらず。ノミネート車の中から技術レベルの高いクルマを選ぶと言うことも考えたけれど、それだと賞の権威みたいなものを損なうことになる。総合的に評価し、今回は辞退することにした。このあたりは選考委員の考え方次第だと思う。
【日本カー・オブ・ザ・イヤー2023-2024結果】
イヤーカー(大賞)…トヨタプリウス
インポートカー・オブ・ザ・イヤー…BMW X1
デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー…三菱デリカミニ
テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー…日産セレナ
60名の選考委員の投票により「日本カー・オブ・ザ・イヤー2023-2024」の「イヤーカー(大賞)」に輝いたのはトヨタプリウスだった
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