BMWのフルモデルチェンジしたフラグシップセダン「7シリーズ」のガソリンモデルに、島下泰久がアメリカで乗った!
フロントマスクにビックリ!
BMW 7シリーズは、モデルチェンジの度に、常にインパクトの大きなスタイリングで登場してきた。いよいよ登場した新型の姿もやはりまた度肝を抜くものだった。何より目をひくのは、そのフロントマスク。ヘッドライトは水平2分割され、上側にスワロフスキーがキラキラと煌く、伝統の4灯式をモチーフとしたデイタイムライト/ターンインジケーター、下側にメインライトを置く。縦にも横にも大きなキドニーグリルは輪郭をぐるりと囲むイルミネーションが備わった。
続いて登場した「X7」にも基本線が踏襲されたこの顔、BMWは今後、ラグジュアリークラスにのみ使っていくという。セールス的に大成功となったX7と合わせて、これまで今ひとつ突き抜けられなかったこのセグメントで、確固たる存在感を築いていこうというわけである。
この顔を除けば、プロポーションはむしろオーソドックス。中国が最大のマーケットだということもあるのだろうが、典型的なスリーボックスのサルーンとしてまとめられている。キャラクターラインの類も煩雑ではなく、往年のBMWのようにすっきりスマートだ。
7シリーズとしては初めて、新型はロングホイールベースだけの設定に絞った。全長は5391mmと非常に大きい。ホイールベースは3215mm。当然、そのスペースは後席居住性に充てられているわけだが、初めてバッテリーEV版であるi7を用意するというのも、ロングだけとした大きな理由に違いない。バッテリーは前後車軸の間のフロア下に積まれる。1544mmという全高も、その余波だろう。
そのインテリアは広さもそうだが、なによりハイテクぶりに圧倒される。ドアの開閉からして電動で、操作はタッチするだけ。センサーが周辺を監視しており、障害物がなければおごそかに開閉する。
そして室内に入れば、目の前にはBMWカーヴドディスプレイ。「OS8」と呼ばれるBMW最新のインフォテインメントシステムで動作する。ダッシュボード下側でクリスタルのように輝くのはBMWインタラクションバー。室内を艶やかに照らすだけでなく、たとえば車両接近中にドアを開けようとすると赤く点滅するなど、実用的な機能ももたされている。
そして後席にまわれば、エグゼクティヴラウンジ仕様はパッセンジャー側シートは深々とリクライニングができ、更に座面前端がせり上がるかたちのレッグレストも伸びて、リラックスして過ごせる。アームレストには5.5インチのタッチコントロールディスプレイを装備。スカイラウンジパノラミックグラスサンルーフは、LEDライトが埋め込まれていて開けていない時も目を楽しませてくれる。
さらに、普段はルーフに折り畳まれている31インチという超大画面のBMWシアタースクリーンを起動して、Amazon FireTVを使っての映画などの視聴も可能なのだ。これが自動車史上、かつて無かった体験となること請け合いである。
乗って楽しく、乗せられて心地良いクルマ開発陣が新型7シリーズで重視したのは、この室内空間の寛ぎ、そして静粛性だという。今回は日本未導入の4.4リッターV型8気筒ガソリンツインターボエンジンを積む760i xDrive、そして電気自動車のi7に試乗したが、実際に走らせてまず実感したのは、この静けさだった。
なにしろ風切り音もロードノイズもきわめて小さい。何か新しい技術が? そう思って訊いたが、かえってきたのは「凄まじい努力の賜物だよ」という言葉だった。遮音材を増やすのではなく、ボディパネル間の間隔を詰め、段差を可能な限り平滑にしてということを、限りなく高い精度で行なった。そんな話である。おかげで後席は、なるほど映画や音楽を楽しむのに、まさにもってこいの空間となっている。
いや、そこはさすがBMWのフラッグシップらしく、新型7シリーズはステアリングを握っても思いきり楽しめるクルマだ。前後エアサスペンション、後輪操舵を組み合わせたインテグラルアクティブステアリング、単にロールを規制するだけではなく積極的に姿勢づくりを行なうアクティブロールスタビリゼーションなどを組み合わせたシャシーはしなやかな乗り心地を示すが、そのままワインディングロードに入っていっても、確かなロードホールディングにより連続するコーナーを気持ち良く抜けていくことができる。
さらに、SPORTモードに入れれば姿勢変化が抑えられて、タイトなレスポンスを味わえる。ホイールベースの長さ、車体の大きさ、重さをまるで意識させないフットワークは見事というほかない。
乗って楽しく、乗せられて心地良いクルマ。開発陣が新型7シリーズで狙った境地は、この760i xDriveを試した限りでは、見事実現されていたと言って良さそうだ。すでに発表されている日本仕様には現時点では3.0リッター直列6気筒ガソリンターボエンジンを積む740i、同じくディーゼルターボエンジンの740d xDriveと、i7が用意されている。
では、i7は一体どんな走りを見せるのか? は、別の記事として改めて紹介したい。
文・島下泰久
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ってならない。