「日本一速い男」と呼ばれ、かの元F1ドライバーE・アーバインをして「日本にはホシノがいる」と言わしめた「星野一義」。通算133勝、21の4輪タイトルを獲得した稀代のレーシングドライバーの50有余年に渡る闘魂の軌跡を追う。(「星野一義 FANBOOK」より。文:小松信夫/写真:モーターマガジン社)*タイトル写真はムーンクラフト5・BMW(1984年5月3日富士GCシリーズRd2富士グラン250キロレース)。
F2以上の人気を集めたGCでタイトルを獲得
1970年に日産、トヨタといったワークスチームがレース活動を縮小したのと入れ代わるように、71年からプライベートチームを中心としたスポーツカーレースとしてスタートした富士GC(グランチャンピオン)。
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当初は大排気量の2シーター・レーシングスポーツを中心に、フェアレディZといった市販GTカーまで、多彩なマシンが参加できるレースだった。
しかし、72年からは2リッタークラスのレーシングスポーツが主流となり、マーチ、シェブロンといったイギリスのレーシングコンストラクターによるシャシーに、F2でも使われているBMWエンジンなどを搭載したマシンで争われるようになる。
これにシグマ、ノバといった国産シャシーや、マツダのロータリーエンジンなども加わって、国内最高峰のレースであるF2000やF2以上の人気を集めるレースとなっていく。
そして70年代末からは、シングルシーターのF2用シャシーをベースに、ムーンクラフト(MCS))などが製作したフルカウルボディを組み合わせた、富士GC独自のマシンへと移行していた。その中で星野は、接戦を制しての久々のビッグタイトルを手にする。82年の富士GCチャンピオン獲得で、70年代末から80年代初頭にかけての長い苦闘から抜け出したのだ。
さらに、76年から長年在籍したヒーローズレーシングから独立して、自らのチームであるホシノ・レーシングを立ち上げた翌83年、3月の富士GCの開幕戦では、2位の松本恵二を1分近く引き離してのポールtoウインを決める。
星野らしい強さを見せたレース展開での勝利で、幸先の良いスタートを切ったはずだった。しかし続く第2戦、第3戦と、2戦連続してリタイアを喫してノーポイント。最終戦では再びポールtoウインを決めるものの、1勝して2位1回、リタイア1回、最終戦では5位となり、ポイントを着実に稼いだ松本恵二に、僅差でチャンピオンの座を攫われてしまう。
84、85年の富士GCで自身初の連覇を達成
83年に速さを見せながらも、富士GCの連覇を阻止された星野は、その屈辱を晴らすべく84年のGCに挑んだ。そしてこの年の星野は、GCの4戦全てをポールtoウイン、シリーズを完全制圧するという、文句ナシのパーフェクト・チャンピオンとなって見せたのだ。しかもF2での最大のライバルであった中嶋悟を、全戦で2位に抑えこんでの4勝。まさに星野の面目躍如というべき圧勝だった。
星野のGCでの圧倒的な速さは、翌年になっても変わらなかった。第3戦ではリタイアしたものの、2勝、2位1回で初のGC連続チャンピオンを獲得。86年はトラブルとアクシデントで2戦を落とし、1勝はしたがシリーズ4位に終わっている。
レギュレーションが変更され、マシンがF3000ベースになった87年には、第1戦、第4戦でポールtoウイン、第3戦も勝利して合計3勝、第2戦も2位という、安定した速さで5度目のGCタイトルを手にする。さらに鈴鹿ラウンド、菅生ラウンドが加わった88年も、シリーズ3位ながら2勝をマークする。
しかし、ついにGCに全日本選手権がかかった89年、表彰台には3度登ったものの、81年以来の未勝利でシーズンを終了。シリーズ5位に終わってしまう。そしてこの年を最後に、GCは終焉を迎えることになるのであった。
星野が76年に初めて富士GCにフル参戦してから、14シーズンで合計62戦。通算25勝、5度のチャンピオンを獲得という、GCの歴史に残る成績を残した。F2と並んで、そのレースキャリアの前半を支え、星野の強さを確立させたレース、それが富士GCだった。(次回に続く)
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