新型コンチネンタルGTの美しきインテリアは、素材や質感だけには留まらない。最新のインフォテイメントシステムや高度運転支援システムなども搭載されている。回転式ディスプレイなどと合わせて、その内容をご紹介しよう。TEXT◎大谷達也(Tatsuya OTANI)
新型コンチネンタルGTの開発にあたっては、最新の車載テクノロジーを無定見に追加していくのではなく、ベントレーの伝統的な美しさや気品を如何にして保つかという点にも配慮し、慎重な検討が重ねられたという。
【連載】新型コンチネンタルGT 完全解説(5)シャシー編 《動画あり》
そうしたベントレーの思想を象徴しているのが、ダッシュボードの高い位置に埋め込まれたメインインフォテイメントディスプレイだ。12.3インチの高解像度タッチスクリーンは、ナビゲーションシステムを映し出すためだけでなく、様々なエンターテイメント・システムを操作するためにも、また運転支援装置などを制御するうえでも、いまやなくてはならない装備。とはいえ、ベントレーのオーセンティックなインテリアと最新のデジタルディスプレイがそのままマッチするかといえば、必ずしもそうとはいいきれない。なぜなら、そのときの気分や状況で大型ディスプレイが似合っているときもあればそうでないこともあるからだ。
そこでベントレーはこのディスプレイを回転格納式とし、不要なときはクルリと回転させてフェイシアの裏側に隠れる機構を採用した。名付けて、ローテーティングディスプレイである。しかも、回転動作が始まる前にディスプレイが一旦ダッシュボード内に吸い込まれ、回転に必要なクリアランスを確保したうえで動作を開始。最後にダッシュボード表面の高さと揃うようにパネルを押し上げるという凝りよう。このため、ダッシュボード面とのギャップは0.5mm未満に収められているが、こうした高精度の作動を実現するためにベントレーはECUで制御された40個の可動部品によってシステムを構成。さらに、この回転機構には自己学習機能が備えられていて、様々な経年変化が起きても一定の動作を繰り返すように工夫されているのだ。このこだわりようは、さすがベントレーと思わずにはいられない。
ディスプレイが回転して格納されたとき、表面に見えるフェイシアが左右のダッシュボードと共通で、あたかもそこになにもなかったように見えるのはいうまでもないだろう。しかし、ベントレーはそれだけでは飽き足らず、“もうひとつの表情”を用意。ダッシュボードと共通なフェイシア上にクラシカルなアナログ式の外気温計、コンパス、時計(クロノメーター)を並べたパネルも選択できる。つまり、ドライバーやパッセンジャーはそのときの気分に応じてダッシュボードのデザインを3つの表情から選べるのだ。
ドライバーと相対するインストゥルメントパネルが完全にデジタル化されたのも、ベントレーとしては新型コンチネンタルGTが史上初。これもまた、ナビゲーションや運転支援システムの様々な情報を映し出すために必要な措置とはいえ、伝統的なアナログメーターの魅力も捨てがたい。そこでベントレーが選択したのが、アナログメーターの持つ輝きや3次元的な奥行き感をデジタルで完全再現するというもの。その真価は実物をご覧になっていただかなければ伝わらないかもしれないが、アナログメーター特有の重々しさまで再現されていることには驚くばかり。その一方で、簡単な操作でディスプレイの2/3ほどのエリアにナビゲーション情報を映し出すことも可能と、デジタル式ならではの機能性も備えている。
待望の運転支援装置も大幅に強化された。短距離レーダーや長距離レーダーにくわえ、最大で6基のカメラと12基の超音波センサーを活用してボディ周囲の360度をくまなく監視することで様々な新機能を得たのだ。
その内容は装備レベルによって異なるものの、静止状態から250km/hまで対応可能なアダプティブクルーズコントロールに始まって、車線からはみ出しそうになるとクルマ自身がステアリングを自動修正するレーンアシスト、正面衝突の可能性があるとドライバーに警告を発し、それでもドライバーが反応しないと自動的にブレーキをかけるセーフガードプラス、駐車スペースを検出するとステアリングを自動操作して駐車をサポートするパークアシストなど、枚挙に暇がないほど。
とはいえ、こうしたシステムが介入するのはドライバーが要求したとき、もしくは介入が必要なときに限られ、ドライバーの自発的な運転操作が妨げられることは基本的にない。どれほど先進の運転支援装置が装備されても、ベントレーの“ドライバーズカー”としての資質は一切損なわれていないのだ。なお、運転支援装置の作動には一定の条件があるので注意されたい。
オーディオシステムも充実している。標準システムでさえアンプの総合出力は650Wで10基ものスピーカーを備えているのだが、オプションで装備できるバング&オルフセンのシステムでは16スピーカー、DSPサラウンドモード、総合出力1500Wを備え、さらに同社独自のインターフェイス“BeoSonic”を自動車として初採用した。そしてベントレーといえば忘れることのできないNaimの高級オーディオももちろん用意される。この場合は18スピーカー、DSPサラウンドモード、総合出力2200Wに加え、アクティブバストランスデューサーが2基装備されるという贅沢さ。まさに最上級のサウンドといえるだろう。
このほかにもきめ細かな温度設定や空気洗浄機能が強化されたエアコンディショニング・システム、ムードライティングシステムを備えたインテリア照明などを装備。まるで伝統ある建物に最新の設備を盛り込んだ超高級ホテルに滞在しているかのような心地よさと優れた機能性を満喫できるはずだ。
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