2007年6月から正式に日本に導入されることが決定したダッジ アベンジャー、ナイトロ、キャリバー。その上陸を前に、スペインでダッジの国際試乗会が行われた。ダッジは当時積極的に北米以外での販売拡充を進めていたのだ。日本に導入されるアベンジャー、ナイトロ、キャリバーを中心に試乗を行っているので、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年6月号より)
クライスラーとジープ間を補完する
「ダッジ」と聞いて一番最初にイメージする車種はなんだろう。ほとんどの読者がダッジバイパーやダッジラムといったスポーツカーやピックアップを思い浮かべると思うが……。
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クライスラーグループの1ブランドであるダッジ。北米でのラインアップは、キャリバー、アベンジャー、チャージャー、マグナム、キャラバン、ナイトロ、デュランゴ、ダコタ、ラム、スプリンター、バイパーSRT10の実に11車種になる。そのなかからキャリバー、アベンジャー、ナイトロ、チャージャーの4車種が、6月から日本市場に順次正式導入されるが、それに先駆けて欧州で行われた国際試乗会でいち早く3車種に試乗することができた。
もともとダッジはアメリカではファミリー層に支持されてきたブランド。庶民的で手頃な価格のクルマが多く、コストパフォーマンスが魅力でもある。その名前は創業者のダッジ兄弟に由来しており、その1号車は1914年に登場している。ダイムラー・クライスラーグループでは2番目に古く、93年の長い歴史を持つ、アメリカを象徴するアイコン的な存在だと言っていいだろう。
ダッジの業績は好調で、2006年には世界市場で約135万台を売り、グループの販売台数の約50%を占めた。なかでも国際販売は21カ月連続前年度比プラスを記録している。そんなダッジブランドの日本導入は、クライスラーとジープの間を補完する役割をダッジが担い、さらには北米以外でのラインアップ拡充を図ったものだと理解していい。
最初に試乗したのは、マッスルカー「チャージャー」の持つパワフルなイメージを凝縮したDセグメントのアベンジャー。十文字グリルとヘッドライトはダッジのデザイン手法に則っているが、その第一印象は「ちょっとワルそうな雰囲気」だった。しかし中身はかなりの優等生ぶりを見せる。北米仕様のボディサイズはDセグメントでも大柄な方で、サイズ的にはBMW5シリーズに近く、比較すると全長が5mm短く、全幅が2mm狭く、全高が7mm高い。
室内はクオリティ感ある素材とデザインが用いられ、LEDの室内照明は角度を変えることができ使い勝手もいい。シートはやや小さめだがイエスエッセンシャルファブリックというシミ防止に加え匂い抵抗性もある素材を採用している。さらに20GBのHDD、USBインプットや外部入力端子、リア席用のモニターも装備されるが、モニターの角度は変わらない。これが残念でならない。また、空調機能が付いたグローブボックスには500cc缶を4本収納できる。
試乗車は2.7L V6エンジンと4速ATの組み合わせで、タイヤはクムホECSTAKH11 215/55R18が装着されていた。
まず感心させられたのは軽快なその走り。2.7Lで138kWというスペックはハイパワーとは言い難いが、アクセルペダルの踏み込み量に忠実に反応する。試乗コースには、アップダウンに富んだ場面もあったが、そこでもストレスを感じることはなかった。ワインディングでも少ないロールでしっかりボディが付いてくるといった印象だ。
乗り心地はフラット、高速でも安定感ある走りが味わえた。これには2765mmという長いホイールベースも貢献しているのだろう。また、大きなボディの割には運転していてもそのサイズを感じることはないが、道幅の狭いコーナーにきて初めて横幅の大きさに改めて気付かされた。4速ATは、シフトチェンジスケジュールにやや違和感が感じられた。こちらは6速AT化に期待したい。
ひと目でダッジだとわかる刺激的なスタイル
2台目の試乗車は中型SUVとなるナイトロ。フロントには立体的なラムヘッドを備えたダッジの象徴となる十文字グリル、ヘッドランプをコーナー近くにレイアウトし、20インチタイヤを組み合わせた堂々したスタイル。ボディサイズはチェロキーより全長が64mm長く、全幅が36mm広く、全高は47mm低い。
ナイトロは、1999年デトロイトモーターショーにコンセプトカーとしてデビュー。2002年にはその2作目となるダッジM80も好評だったことから本格的に製品化が決定、当初はピックアップトラックとして計画が進行していたが、途中から中型SUVに計画変更され製品化されたという。
40年以上ダッジ一筋というプロダクトマネージャーのスタンシノワック氏は「ナイトロはオンロードメインのSUVだが、オフロードのエレメントは忘れていない」という。この言葉にナイトロの持つ性格が集約されている。その4WDシステムは、全速度域で瞬時に4駆に切り替えることができるパートタイム式だ。
インテリアは、オートバイからヒントを得たダッシュボードや、カーゴルームの床を470mm移動可能にして180kgまでの重量に耐えられるようにするなど、アウトドア志向が強い。運転席に乗り込んで最初に気になったのがエアコンルーバーの下にあるナビの位置。アベンジャーも同じだったが、モニターは少しでも視線移動の少ない位置にして欲しい。
試乗車は4Lエンジン搭載の5速AT。走り出してまず感じたことは、アクセルペダルが想像していたより軽く、サイズの割にキビキビ動くといった印象。また、見切りはそれほど悪くないためボディの大きさをデメリットとして感じることはほとんどない。100km/h巡航で2600rpm。加速時はエンジン音がそれなりに室内に侵入してくるが、巡航速度になるとそれも気にならないレベルにまで落ち着く。
4WD性能は、特設のオフロードコースが用意されていたのでそこで試乗。本格的なオフロード車のレベルとまではいかないのだろうが、深い轍ができた路面やかなり急な登り下りを不安なく安定した速度で走破できることが確認できた。
そして最後は、グリルからテールまでダッジのDNAを持ち込んだSUVに近いポジショニングとなるクロスオーバーCセグメントのキャリバーだ。ダッジのアイデンティティとなる十文字グリルがフロントの表情を際だたせ、インテリアテーマの丸デザインはアベンジャーやナイトロと共通したものとなる。ボディサイズは、同じ5ドアのゴルフより全長が190mm長く、全幅が40mm広く、全高が40mm高くCセグというよりはDセグに近い。
ダイナミック性能で目標にしたのは明言していないが、欧州のCセグでベストモデル、そしてコンペティターはプジョー307やゴルフだという。ちなみに2006年の販売実績で言えば、もっとも売れたダッジ車がこのキャリバーなのだ。
キャリバーには、フラットにできるシートやリアゲートに付くミュージックゲート、取り外しが可能な充電式のフラッシュライトや洗うことができるラゲッジルームなど、まさにアウトドアを前提にした使える装備が数多く用意されている。ただ助手席グローブボックスは開けるとヒザに当たる。これは改善ポイントだ。
試乗車は2L直4とCVTの組み合わせ。タイヤはコンチネンタルプレミアムコンタクト2、サイズは215/60R17を装着。CVTのサプライヤーはジャトコだ。この直4はとにかく元気よく回る。さすがにアクセルペダルを床まで踏み込むと室内にはそれなりに音が進入してくるが、それは騒がしいといったものではない。キャリバーはアベンジャーやナイトロのようなインパクトはないものの、細部までしっかりと作り込まれている、といった印象だ。
欧州車とも日本車ともひと味違うアメリカンスパイスを効かせたダッジ。いままで触れることのなかったこのブランドを理解する上では、今回の試乗は大いに役に立った。価格はまだ正式に発表されていないが、かなり戦略的な設定になるらしい。これは期待できるかもしれない。(文:千葉知充/Motor Magazine 2007年6月号より)
ダッジ アベンジャー2.7SXT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4850×1843×1497mm
●ホイールベース:2765mm
●車両重量:1520-1615kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2736cc
●最高出力:188ps/6500rpm
●最大トルク:256Nm/4000rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●最高速:200km/h
●0-100km/h加速:10.8秒
※米国仕様
ダッジ ナイトロ3.7R/T 主要諸元
●全長×全幅×全高: 4584×1856×1773mm
●ホイールベース:2763mm
●車両重量:1875-1970kg
●エンジン:V6SOHC
●排気量:3700cc
●最高出力:205ps/5200rpm
●最大トルク:314Nm/4000rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:190km/h
●0-100km/h加速:10.3秒
※米国仕様
ダッジ キャリバー2.0SXT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4415×1800×1535mm
●ホイールベース:2635mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:115ps/6300rpm
●最大トルク:190Nm/5100rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●最高速:186km/h
●0-100km/h加速:11.3秒
※米国仕様
[ アルバム : ダッジ アベンジャー、ナイトロ、キャリバー欧州試乗 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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