■おぉ400! 日本特有の免許制度から始まった
自動二輪は中型に限る。1975年(昭和50年)の免許制度改正で、401cc以上のバイクを運転するには、いわゆる“限定解除”試験(合格率は当時1%という超難関)に合格しなければならなくなり、国内市場は中型バイクが主流に。上限を400ccまでと限定することから各社がこのクラスに力を注ぎ、人気を博してきました。
4ストローク4気筒の400ccバイクは一体どこに消えたのか?
市場を牽引したのは“ヨンフォア”ですが、その登場は伝説となっています。1974年(昭和49年)12月、4サイクルSOHC並列4気筒37馬力エンジンを搭載した『ホンダドリームCB400FOUR』は、4本の排気管を1本に束ねた集合マフラーを標準装備するなど、バイクファンらから熱視線を浴びてのデビューでしたが、総排気量は408cc。なんと発売後すぐに免許法が改正され、乗りたくても有資格者が激減してしまうのです。
そこで用意されたのが、76年(昭和51年)3月発売の『ホンダドリームCB400FOUR-I』と『CB400FOUR-II』でした。“中免”で乗れる初めての4気筒バイクとなり、1型はセミフラットハンドル、2型はオーソドックスなスタンダードバーと、両者の違いはハンドルのみ。タンクと同一色であったサイドカバーは黒塗りとなり、408ccと見分けるポイントとなりました。
■新たなるスタンダード誕生
こうしてスタートした“ヨンヒャク”全盛時代。ホンダCBはそのシーンをリードしてきましたが、1992年(平成4年)にまたしても名車を生み出します。いまなおラインナップに欠かせないモデルとして名を連ねる『CB400SUPERFOUR(スーパーフォア)』です。
バイク本来の普遍的な魅力を全面に押し出したカワサキ『ゼファー400』が89年(平成元年)に登場し、ネイキッドブームが到来。ホンダは「堂々と見えるセクシー&ワイルドなフォルム」「エネルギーを内に秘めた力強いフォルム」の2点をデザインコンセプトとした「PROJECT BIG-1」を立ち上げ、『CB1000SUPERFOUR(スーパーフォア)』をフラッグシップにその400cc版をリリースしました。
モーターサイクル本来の美しさを意識したワンクラス上の堂々としたボディで、おだやかな操縦特性とエキサイティングな走りを両立。丸型2灯の尾燈をリアカウル内に融合させ、アイデンティティとなります。
その後、改良を重ねつつ29年間ずっと作り続けられ、販売台数は2002年から17年までクラス16連覇を達成(二輪車新聞調べ)。教習車としても使われるなど、日本のヨンヒャクのスタンダードと呼ぶに相応しい存在となっていることは、バイクファンに広く知られています。
■気がつけば唯一の4発ヨンヒャク
1996年(平成8年)に大型二輪免許が教習所で取得できるようになり、各都道府県の試験場で限定解除試験を受けなければならなかった時代がついに終焉。高嶺の花だった逆輸入車が主軸へと様変わりし、ビッグバイクブームが到来します。
さらに環境規制を国際基準化し、メーカーは仕向地別に仕様を変更する必要がなくなりました。海外向けだった320~350ccクラスが日本でもラインナップに加わり、日本特有の400ccモデルは生産終了が相次いでいきます。
2021年10月現在では、『CB400スーパーフォア』がヨンフォアがデビューした時と同じようにクラス唯一の4気筒エンジン搭載車となりました。さらにヨンヒャクは、ホンダに兄弟車の『CB400SUPER BOL D’OR』があるほか、『CBR400R』『400X』が存在するのみで、あとはカワサキが『ニンジャ400/KRT EDITION』と『Z400』、ヤマハは『SR400ファイナルエディション/リミテッド』(完売)、スズキは『バーグマン400ABS』だけとなってしまったのです。
■これぞ日本のスタンダード
そんな『CB400スーパーフォア』に改めて試乗すると、その完成度の高さに目をみはるばかりです。丸いヘッドライトに砲弾型のデュアルメーター、タンクとサイドカバー、テールカウルがそれぞれ独立していますが、カラーグラフィックスで流れるようなデザインに。
骨格は鉄のダブルクレードルフレームで、ツインショックや集合マフラーが備わり、これぞオートバイと言わんばかりのネイキッドスタイルは、永遠のスタンダードといえるもの。長く所有しても、きっと飽きが来ないでしょう。
■官能的な4発サウンドがエモい!
DOHC4バルブ直列4気筒エンジンは高回転まできっちりと吹け上がり、最高出力56PS/11,000rpmを発揮。1気筒あたりの作動バルブ数を回転数に応じて2バルブ/4バルブと切り換える可変バルブ機構「HYPER VTEC Revo」は、力強い低速域から伸びやかな高速域まで、幅広い領域でスムーズな走りを実現しています。
6速ではスロットル開度に関係なく6750回転で2→4バルブ化し、切り替わりは音やメーター表示でわかりますが、トルクの谷などを感じることはありません。力強さがよりいっそう増し、高回転域は乾いたサウンドの咆哮を楽しめ、病みつきになる楽しさです。
低回転域で低く唸る4-2-1エキゾーストは、力強い加速とともに直4ならではの太く鋭い排気音を奏で官能的。優等生などとよく言われますが、エモーショナルで荒々しさも感じてなりません。音量もあって迫力満点。たしかに優等生かもしれませんが、面白味に欠けるなんてことはないのです。
■まもなく生産終了!?
ハンドリングもキャスター角を立てるなどスポーツ性を打ち出し、キビキビとした現代風に味付けされています。オールマイティで隙がないことはずっと変わらず、取り回しも軽快。シート高755mmで乗り手の体格を選ばないことも人気の秘訣でしょう。
唯一のヨンヒャク4発となり、生産終了のウワサも聞こえ始めた『CB400スーパーフォア』。欲しいならもう迷っている時間はなさそうです。
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