誰も彼もが効率ばかりを求めてくる現代社会。せめて移動時間くらい羽を伸ばしたいなら「ロードスターRF」はいかがだろうか? 2度の改良を経た最新型も良いけど、実はデビュー当時の初期ものがお手頃になっている。
一般的に通勤ルートは効率的なものがひとつあれば十分だ。しかし、ボクは3つのルートを使い分けている。
第29回メディア対抗ロードスターレース参戦記(3)上達に近道ナシ
ひとつは電車で、これはボクの中で最悪の手段だ。残る二つはいずれもクルマで「東名高速」と「首都高速湾岸線」だ。とくに「首都高速湾岸線」は交通の流れがスムーズで、編集部から自宅まではイルミネーションが輝く東京タワーやレインボーブリッジ、羽田空港、横浜ベイブリッジと見所満載で運転し甲斐がある。
しかし、時間が掛かる。通常1時間のところ、このルートは帰宅に2時間を要する。となると、滅多に味わえない特別な雰囲気を纏ったクルマでなければならない。思い出せる車種を挙げると「レンジローバー」「レクサスLC」「シボレー・コルベット」「ホンダNSX」など、いずれも未知の体験を味わえるクルマばかりだ。だからこそ不思議でならない、なぜ「マツダ・ロードスターRF」でこのルートを走っているのだろう。
まず考えられるのがマツダというブランドだ。かつては国産車メーカーのひとつと思っていたが、2012年にデビューした「CX-5」を皮切りとした魂動デザインは、時の経過とともに熟成が進み、いまや欠かせないアイデンティティだ。
今回乗っている「ロードスターRF」も例に漏れず、魂動デザインを採用する。コンパクトなサイズながら躍動感に満ちた佇まいを見せ、その上でボディ後端に掛けての流麗なラインはとても美しく、電動開閉式の屋根を開けてもそのプロポーションが崩れることがない。シックなブラウンで彩られた内装も甘さ控えめで、ステアリングがしっくり手に馴染む感覚も心地良い。外から見ても、中から見ても、気分が高鳴る。そんな雰囲気が、きっとこのルートへ足を向けさせたのだろう。
帰路は非常におだやかだった。出足から力強い2.0ℓ4エンジンや小気味良い6速MT、さらに軽量なボディと突っ走るためのお膳立てがあるにもかかわらず、むしろ穏やかなペースで一つ一つの操作を正確にこなして踊るように走るのが心地よかった。どうにも重かったアタマのモヤモヤは次第にクリアになり、クルマから降りる頃にはスッキリ。清々しささえ感じるほど快調だった。
ワタシは1時間を無駄遣いした。とにかく効率を求めて、与えられた24時間にパンク寸前まで詰め込む現代社会では非常識なことかもしれない。しかし、一旦立ち止まって頭の中の絡まった紐をほどくことで、逆に前に進むこともあるはずだ。これまでボクのなかで「ロードスター」は生粋のスポーツカーだったが、好きなペースで適当に流すだけでも十分楽しめるし、なにより超高級車でしか味わえないと思っていた世界に浸れたことには驚きしかない。
最新技術を素早く商品展開するマツダは、いつでも旬のモデルがショールームを揃えていて、「欲しい」と思った人にいつでも旬の味わいを提供するという。「ロードスターRF」もデビューからすでに2回の商品改良が行なわれているが、最新の「ロードスターRF」が336万9600円~381万2400円なのに対して、2016年式はマツダの中古車検索で走行距離0.1万kmのものが300万円(本体価格)を下回る価格で出回っていることも見逃せない。「う~む、欲しい」
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