現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜ新燃費基準「WLTCモード」導入で車選びが変わるのか?

ここから本文です

なぜ新燃費基準「WLTCモード」導入で車選びが変わるのか?

掲載 更新
なぜ新燃費基準「WLTCモード」導入で車選びが変わるのか?

 ついに2018年10月より本格的に導入された燃費測定方法・WLTCモード。従来のJC08モードとなにがちがうのか? そしてこれによってクルマ業界のなにがどう変わっていくのか? JC08モードとの比較を踏まえ、まとめてみた。

※本稿は2018年10月のものです

ついに”GT”襲名!! YOKOHAMA「ブルーアース」に新銘柄 スポーツとエコを両立するタイヤが登場


文:ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部


初出:『ベストカー』 2018年11月10日号

■WLTCモードの導入とJC08モード、なにがどう違う?

 まずは下の表を見てみよう。

 同一車種による、JC08モードとWLTCモードの燃費表示を並べたものだが、幅の違いこそあれ、すべての車種でWLTCモードの燃費表示のほうが低い値を示していることがわかる。

「どういうことなんだ! JC08モードってのはオレたちを騙していたのかぁ!?」なんていう声も聞こえてきそうだが、これは測定手法や計算方法の違いによるもの。

 まず、従来のJC08モードで想定されていたのは、市街地での走行、また最高速度は80km/hだった。今回導入されたWLTCモードの試験では、「市街地モード」「郊外モード」「高速道路モード」3つの走行モードの燃費を実際の生活に即した比率で組み合わせ、その平均値を出す。想定されている最高速度は「高速道路モード」の100km/hとなる。*

 また、JC08モードでの、エンジンが温まった状態で試験を行う「ホットスタート」がなくなり、エンジンが冷えた状態からスタートする「コールドスタート」のみに。

 試験時の重量の扱いも変わり、JC08モードでは2名乗車の想定(+110kg)で試験が行われていたのに対して、WLTCモードでは1名乗車、および荷物相当の計100kgに、そのクルマの積載可能重量の15%が加算され審査が行われる。

 アイドリング時間が算出に組み込まれる割合がJC08モードの約30%から15%程度に下げられることも大きく響くだろう。

 総じて、より実燃費に近い数値を導き出すのが、今回の導入の大きな狙いの一つだとされている。

 もともとWLTCモードは、国際連合欧州経済委員会(UNECE)の主導のもと、世界共通の排出ガス試験方法の作成を目的とした活動だった。

 2014年3月に乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法の世界統一技術規則として成立すると、2016年10月に国土交通省がJC08モードからの全面移行を表明。この2018年10月、導入が始まった。

 これにより10月以降発売される新車にはすべてWLTCモードでの燃費表記が義務付けられたが、しばらくはJC08モードの燃費表記も併記されることになりそうだ。

*実際には、WLTCモードにはもうひとつ上の最高時速130km/hを想定した「extra-high」なるモードがあるのだが、日本ではこれに対応した道路がないこと、また算出の際の比率が5%と低いことから、算出方法からは除外されている。

■WLTCモードの導入はECOカー減税にも影響を与える??

 現在のECOカー減税の制度の有効期間は1年。つまり、2019年の3月までとなっている。来年度に関してはECOカー減税を続けるかどうかも含めて未定の状態だ。国土交通省はECOカーの普及は至上命題であると考えており、ECOカー減税は存続していく方向で2019年度のルール作りを進めている。

 12月上旬から中旬に税制改正大綱が発表され、それに基づいて国会で予算審議をし、4月から施行される流れとなる。予算が否決されることはほとんどないため、この税制改正大綱で発表された内容が来年度のECOカー減税の内容と見てよい。

 現状のECOカー減税の燃費基準はJC08モードの数字を基準として作られている。2018年度は現在のルールを適用するため、10~3月の間にメーカーが新型車にECOカー減税を適用したい場合、WLTCモードかJC08モード、どちらかの燃費の数字を提出しなければならない。

 国土交通省は、WLTCモードの燃費数字も受け取るが、基準は変えないのがポイントだ。WLTCモードの燃費数字は低いため、メーカーは必然的に両方のモードの燃費を測り、JC08モードの燃費を国に申請することになる。2019年度のECOカー減税だが、WLTCモードの数値で燃費基準が作られるかは不明だ。

■WLTCモード切替でメーカーの燃費向上対策にも変化が出る?

 これは当然変化する……というか、WLTCモードの走行パターンにフォーカスさせたパワートレーン開発になる。特に『燃費アピール』がウリとなるクルマの場合、いかにWLTCモード燃費を高くできるかがセールスポイントなので、当然JC08モードでそうだったように、競争は激化することになる。

 ただ、WLTCモードは総合燃費のほかに市街地、郊外、高速道路と3つの走行パターンごとの燃費値も公表されるため、ユーザーは自分の使い方に即した走行モードでの燃費値を参考にすることができる。クルマ選びの指針としては従来のモード燃費と比べて活用度が高い。

 WLTCモード燃費は実走行燃費にずいぶんと近い、現実的な燃費値と見ていい。つまり、WLTCモードにフォーカスさせた燃費スペシャルの開発は、実走行での燃費も高くなる可能性が大きいということだ。

■今のところ国産車のみ 輸入車にも適用されていく?

 現状、国産車しかWLTCモードの燃費数字を公表していないため、輸入車にはルールが適用されないのか疑問に思い、取材を進めた。

「今のところ国産車のみ」という表現だが、正確には「9月時点でWLTCモード燃費の表示義務がないなか、各メーカーが自主的に公開している」という状況。そもそも今日現在WLTCモード燃費の値は出す必要がないため、輸入車に適用されていないと考えるのは誤解なのだ。

 国土交通省によると、10月からは輸入車も含めて、日本で発売される新型乗用車(フルモデルチェンジ、マイナーチェンジを含む)は義務付けられるとのこと。なので、アメリカ車であろうがヨーロッパ車であろうが、10月以降に登場する新型車であれば、WLTCモードの燃費が表示されることになる。

 輸入車のJC08モード燃費は国産車と比べて低い傾向にあるが、WLTCモード燃費が導入されることで、国産車と輸入車の燃費差が縮まってくることが予想される。

 ちなみに、2018年9月以前に発売されて、継続生産される乗用車に関しては、2020年の9月からWLTCモード燃費の表示が義務化される。そのタイミングで継続生産の終了等の判断を各メーカーが行うだろう。しばらくはJC08モードとWLTCモードが混在する状況となる。

■まとめ…WLTCモードはユーザー側の「見る目」も重要だ

 今回のテストでわかったことは「WLTC燃費は実燃費とかなり近い数字」だということだ。「市街地モード」、「郊外モード」、「高速道路モード」と利用条件に応じた燃費も表示されるので、とてもユーザーフレンドリーなルールと言える。

 WLTCモードが導入されたら、ユーザーは利用状況に応じて、自身にとって燃費がいいクルマをより正確に選べるようになる。なので、クルマを「見る目」が重要になってくるわけだ。

 例えば軽自動車。軽自動車は市街地、郊外であれば低燃費だが、高速での燃費が悪い。今までのルールだと、高速道路の利用が多いユーザーが「燃費がいいから」と軽自動車を買うと、実際には燃費がよくなかったという状況が発生した。

 今後は「高速道路モード」の数値をみればよいわけだが、「自分は高速道路の利用が多い」ことを認識したうえで、「高速道路モード」の数値を見れば、正しい選択ができるようになる。凄くいいことだ。

 パワーユニットによって得意な走行状況は変わる。一般的なガソリン車の場合、市街地→郊外→高速道路の順で燃費がよくなるが、ハイブリッドの場合は市街地と高速道路の燃費は同程度、クルマによっては高速道路のほうが数字が悪いものもある。

 クルマのことがより理解できるルールとも言えるだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
メルセデス・ベンツの新世代4名乗りオープンカーのCLEカブリオレに高性能バージョンの「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」を設定
カー・アンド・ドライバー
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
アキュラIMSA車両ドライブしたフェルスタッペン、デイトナ24時間は出ないの?「出るには十分な準備をしたいけど、今は不可能だ」
motorsport.com 日本版
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
約183万円! 三菱「新型“5ドア”軽SUV」発表に反響多数! 「走りがいい」「好き」の声!半丸目もカッコイイ「ミニ」が話題に
くるまのニュース
新車99万円! ダイハツ「“最安”ワゴン」どんな人が買う? イチバン安い「国産乗用車」は装備が十分! 超お手頃な「ミライース」支持するユーザー層とは
新車99万円! ダイハツ「“最安”ワゴン」どんな人が買う? イチバン安い「国産乗用車」は装備が十分! 超お手頃な「ミライース」支持するユーザー層とは
くるまのニュース
2025年は赤・黄・黒の3色 スズキ「V-STROM 250SX」2025年モデル発売
2025年は赤・黄・黒の3色 スズキ「V-STROM 250SX」2025年モデル発売
バイクのニュース
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
レスポンス
KTM1390スーパーデュークGT発表!カテゴリーで最も過激なスポーツツアラーを標榜するGTが1390系エンジンでバージョンアップ
KTM1390スーパーデュークGT発表!カテゴリーで最も過激なスポーツツアラーを標榜するGTが1390系エンジンでバージョンアップ
モーサイ
新しい2.2Lディーゼルエンジンと8速ATを搭載したいすゞ「D-MAX」および「MU-X」がタイでデビュー
新しい2.2Lディーゼルエンジンと8速ATを搭載したいすゞ「D-MAX」および「MU-X」がタイでデビュー
カー・アンド・ドライバー
新型「メルセデスCLA」のプロトタイプに試乗!次世代のメルセデス製電気自動車の実力やいかに?
新型「メルセデスCLA」のプロトタイプに試乗!次世代のメルセデス製電気自動車の実力やいかに?
AutoBild Japan
紀伊半島の「最南端」に大変化!? 無料の高速「串本太地道路」工事進行中! 関西エリアの交通を一変する「巨大ネットワーク計画」とは
紀伊半島の「最南端」に大変化!? 無料の高速「串本太地道路」工事進行中! 関西エリアの交通を一変する「巨大ネットワーク計画」とは
くるまのニュース
ホンダ、栃木県とスポーツ振興協定を締結…ラグビーとソフトボールで地域活性化へ
ホンダ、栃木県とスポーツ振興協定を締結…ラグビーとソフトボールで地域活性化へ
レスポンス
軍用車マニアはたまらない!? 大戦中の1942年に製造された“フォード製ジープ”をオークションで発見 フォード「GPW」ってどんなクルマ?
軍用車マニアはたまらない!? 大戦中の1942年に製造された“フォード製ジープ”をオークションで発見 フォード「GPW」ってどんなクルマ?
VAGUE
ズボラ派にもバス&タクシーにもうってつけ! 洗車後の拭き取りをサボれる純水洗車にメリットしかなかった
ズボラ派にもバス&タクシーにもうってつけ! 洗車後の拭き取りをサボれる純水洗車にメリットしかなかった
WEB CARTOP
スズキが新型「ソリオ」1月発表!? “迫力顔&先進機能”採用!? 既に予約した人も!? 何が変わった? 販売店に寄せられた声とは
スズキが新型「ソリオ」1月発表!? “迫力顔&先進機能”採用!? 既に予約した人も!? 何が変わった? 販売店に寄せられた声とは
くるまのニュース
カワサキ「Z2」エンジン お気楽過ぎる「丸塗り」では後々後悔 可能な限り緻密なマスキングを目指す!! ~日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承~Vol.23
カワサキ「Z2」エンジン お気楽過ぎる「丸塗り」では後々後悔 可能な限り緻密なマスキングを目指す!! ~日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承~Vol.23
バイクのニュース
[DSP大全]「位相」を合わせられれば、“一体感のあるサウンド”を獲得可能!
[DSP大全]「位相」を合わせられれば、“一体感のあるサウンド”を獲得可能!
レスポンス
ノリス、ラスベガス初日は上位タイムも低グリップに手を焼く「市販車の方が速い気がする……」燃料多載での走行にはまだ課題も?
ノリス、ラスベガス初日は上位タイムも低グリップに手を焼く「市販車の方が速い気がする……」燃料多載での走行にはまだ課題も?
motorsport.com 日本版
アドベンチャーツアラー「V-STROM 250SX」が色変更!新設定「ソノマレッドメタリック」の鮮やかな赤が眩しい!   
アドベンチャーツアラー「V-STROM 250SX」が色変更!新設定「ソノマレッドメタリック」の鮮やかな赤が眩しい!   
モーサイ

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

593.0980.0万円

中古車を検索
ヨーロッパの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

593.0980.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村