トレンドは「SUV系」
最近はSUVの売れ行きが急上昇している。
【画像】ライバル比較【クロス系ヤリス/ノート/フィットを比べる】 全100枚
2010年頃は、国内で新車として売られる小型/普通乗用車の10%少々がSUVだったが、今は約30%だ。
セダンやステーションワゴンが減り、SUVは増えて、ミニバンと並ぶ売れ筋カテゴリーになった。
この中でもとくに、コンパクトなSUVが好調だ。
2021年1~12月における1か月の平均登録台数を見ると、ヤリス・クロスは8670台(ヤリスとGRヤリスを除く)、ライズは6800台、ヴェゼルは4400台で、いずれも小型/普通車販売ランキングの上位に入る。
ほかの上位車種は、コンパクトカーのヤリスが8400台、フリードは5800台だから、コンパクトSUVの高人気が分かる。
ヤリス・クロスは、エンジンやグレードの種類はヤリスよりも少ないが、登録台数はヤリスを上まわる。
またカローラ・クロスは2021年9月に発売され、2022年1月には7500台を登録した。
この売れ行きはカローラ・シリーズ全体の59%に達する。
ただし、すべてのコンパクトSUVが好調とは限らない。
日産のノート・オーテック・クロスオーバー、ホンダ・フィット・クロスターは売れ行きが伸び悩む。
ホンダの販売店によると「フィットはホームの売れ行きが圧倒的に多く、クロスターは少ない」という。
ノートも売れ筋はXとSで、オーテック・クロスオーバーは少数派だ。
なぜヤリス・クロスに比べて、ノート・オーテック・クロスオーバーやフィット・クロスターの販売は低迷しているのか。
クロス系ノート/フィットは苦戦のワケ
ホンダの販売店では「SUVを購入するお客さまは、ヴェゼルを選ぶ。フィット・クロスターは、フィットのグレードに位置付けられるが、ヴェゼルは外観が異なり、コンパクトカーとは違うSUVと認識されている」という。
そしてSUVのユーザーは、立派な外観、上質な内装、荷室高に余裕のある積載空間などを重視する。そうなるとヴェゼルが有力候補になる。
仮にヴェゼルがなければ、フィット・クロスターがもう少し注目されたかも知れないが、実際はユーザーを奪われた。
ノート・オーテック・クロスオーバーは、フィット・クロスター以上に存在感が乏しい。
ノートの発売は2020年12月だが、ノート・オーテック・クロスオーバーは2021年10月と遅れた。
しかも2020年8月にはノート・オーラが発売されて人気を高め、その後にノート・オーラ・ニスモも加わったから、ノート・オーテック・クロスオーバーは埋もれた。
オーラをベースにすべきだった
価格の問題もある。
ノート・オーテック・クロスオーバーは253万7700円で、装備を充実させたものの、ノート「X」グレードの218万6800円に比べて約35万円高い。
しかも上級のノート・オーラ「G」が261万300円で設定される。
ノート・オーテック・クロスオーバーに約7万円を加えると、ノート・オーラ「G」を買えるなら、多くのユーザーは後者を選ぶ。
ノート・オーラはSUVではないが、内外装はノート・オーテック・クロスオーバーよりも上質で、動力性能も高い。
ボディのワイド化とサスペンションの設定変更により、走行安定性も向上するからだ。
つまりオーテック・クロスオーバーは、ノートではなく、ノート・オーラをベースに開発すべきだった。
ノート・オーラは機能や装備を充実させた割に、ノートと比べた時の価格上昇が抑えられ、買い得度も強い。
開発者は「そこも検討すべきだったかも知れない」と振り返った。
ちなみにスポーティなノート・オーラ・ニスモは、エアロパーツを装着して専用のアルミホイールとハイグリップタイヤが備わり、シートを始めとする内装もスポーツ指向にあらためられ、走行安定性も向上した。
ドライブモードもスポーツモードをニスモ・モードに変更して走りの楽しさを盛り上げる。
ノート・オーラ・ニスモは内容をここまで充実させて、価格は286万9900円だ。
ノート・オーラ「G」と比べて26万円の上乗せに抑えた。
そのために販売面ではノート・オーラ全体の20%をニスモが占める。
仮に「ノート・オーラ・クロスオーバー」を開発して外観もカッコ良く仕上げ、価格を274万円前後に設定すれば、ノート・オーテック・クロスオーバーに比べて20万円高くても魅力的な商品に仕上がる。
なぜヤリス・クロスは売れる?
ヤリス・クロスが好調に売られ、フィット・クロスターやノート・オーテック・クロスオーバーが伸び悩む背景には、残価設定クレジットの残価率(新車価格に占める残存価値の割合)や返済額も影響を与えている。
ヤリス・クロス・ハイブリッドZ(258万4000円)は、3年後の残価率が52%と高く、残りの48%を3年間で分割返済する。
月々の返済額は4万6900円だ(頭金のない均等払い)。
それがノート・オーテック・クロスオーバー(253万7700円)は、3年後の残価率が47%だから、残りの53%を返済する。
そのために新車価格はヤリス・クロス・ハイブリッドZよりも約5万円安いのに、月々の返済額は4万8500円と若干高い。
フィットe:HEVクロスター4WD(248万6000円)も、3年後の残価率は48%で、ヤリス・クロス・ハイブリッドZほど残価設定クレジットで有利にならない。
トヨタの販売店では以下のように説明する。
「ヤリス・クロスは内外装がカッコ良く、しかも残価が高い。そのために残価設定クレジットを使うと、返済額を安く抑えられる」
「同等の装備を採用したコンパクトカーのヤリスに比べると、価格はヤリス・クロスが高いのに、月々の返済額は逆に安くなる場合もある」
「そのために残価設定クレジットの見積りを比較して、ヤリス・クロスを選ぶお客さまもいる」
ヤリス・クロスの3年後の残価率は前述の52%だが、ヤリスは41%と低い。
そのために価格はヤリス・クロスが高いのに、返済額はヤリスよりも安くなる場合があるのだ。今は残価設定クレジットの利用者が増えたから、その返済額も、車種の売れ行きに大きな影響を与える。
「派生」で成功しているモデルも
以上のようにコンパクトSUVの売れ行きを見ると、ヤリス・クロスやヴェゼルのような専用ボディを使う車種が好調だ。
ノート・オーテック・クロスオーバーやフィット・クロスターなど、既存のコンパクトカーをベースに開発されたタイプは、グレードの1つに位置付けられて売れ行きも伸び悩む。
専用ボディとSUV風のグレードでは、SUVらしさも異なるから販売格差が生じるのも当然に思えるが、例外もある。
スバルXVは、インプレッサ・スポーツの派生モデルだが、売れ行きは好調だ。インプレッサ・シリーズ全体の59%をXVが占める。
インプレッサ・スポーツは34%で、セダンのG4はわずか7%だ。
XVが派生モデルなのに成功した背景には、複数の理由がある。
筆頭は外観のカッコ良さと悪路走破力だ。
XVの最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は200mmを確保して、外観も派生モデルながらSUVらしさが濃厚だ。
全車が4WDを搭載して悪路走破力も高い。さらに価格は割安で、1.6i-Lアイサイトは、実用装備を充実させて233万2000円に抑えた。
さらにスバル車は、低重心の水平対向エンジンと4WDに特徴があるから、SUVのイメージも強い。
フォレスターよりもコンパクトなSUVはXVのみで、ユーザーを集めるうえでも有利になった。
スバルはレガシィ・ツーリングワゴンをベースにしたアウトバックを古くから手掛け、派生モデルのSUVも定着していた。
このような好条件が重なり、XVは人気車になった。
その点で日産には、コンパクトなSUVにはキックスもあり、ホンダにもヴェゼルが用意される。そうなると需要を奪われてしまう。
ノート・オーテック・クロスオーバーやフィット・クロスターの売れ行きには、両社のSUVラインナップから価格設定、残価設定クレジットの残価率まで、国内販売のさまざまな事情が影響を与えている。
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みんなのコメント
専用ボディのヤリスクロスとハッチバックにお化粧しただけのノートやフィットを比べるのはナンセンスでしょう。ただのハッチバックにフェンダーモールやらルーフレールをつけたところでSUVとは見られないんですよ。ノートに至ってはAUTECH扱いだし...
クロスターみたいなグレードと比べられるのは先代アクアのクロスオーバーモデルでしょ。あれも大して売れてないよね。
分析や考察するまでもない。 理由は、ひと目見るだけで自明。