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ホンダの切り札 VTECのタイプR シビック/インテグラ/アコード 3台を振り返る 後編

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ホンダの切り札 VTECのタイプR シビック/インテグラ/アコード 3台を振り返る 後編

想像以上にシリアスなインテ・タイプR

EK9型ホンダ・シビック・タイプRのレブリミットは、8600rpmに設定されている。だが、アクセルペダルを煽るとメーター上は9000rpmをかすめた。

【画像】アコード、シビック、インテグラ 3台のホンダのタイプR 最新型シビック・タイプRも 全84枚

鋭く吹け上がり、スピードメーターへ目を配るタイミングを掴みにくい。フロントガラス越しに前方を確かめるか、激しく上下するレブカウンターを確かめるか。

英国の郊外で許される97km/h以下の速度でも、高まるサウンドに聞き惚れる。エンジン音が車内に充満する。オックスフォードシャーで取材していても、日本の群馬県に伸びる峠道が頭に浮かぶ。アスファルトの傍らに、落ち葉が落ちているような。

欧州の古いホットハッチのように、挙動が安定しないわけではない。路面へしなやかに追従し、アスファルトの凹凸を緩やかに揺れながら処理する。軽くて扱いやすい。カーブへ飛び込んでも安定性は失われにくい。空想を交えながら運転できる。

アクセルペダルを急に戻しても、不意にオーバーステアへ転じる様子はない。ハードブレーキングで、ステアリングホイールに気を配る必要もない。

シャシーは間違いなく敏捷。能力を存分に引き出せるが、華やかさという点では控えめのようだ。ホンダらしい。

シビック・タイプRより加速力は明確に勝る

続いて乗り換えた、ブラックのDC2型インテグラ・タイプRが今回の3台では最も古株。登場は1995年で、ホンダNSX タイプRに続く2台目の「R」だった。そして、内容は想像以上にシリアスだった。

ドアを開くと、背もたれが大きく寝かされたバケットシートが意表を突く。ルーフは低く、シビックの派生モデルではない。本物のクーペとして作られている。

B18C型の4気筒エンジンの印象は、シビックより強烈。チタン製のシフトノブで操る、5速MTのフィーリングもソリッド。タイプRとして増強された雰囲気を、ボディの隅々から感じる。

EK9型より0.2L大きい、1.8Lの排気量を持つだけあってたくましい。アクセルレスポンスも鋭い。VTECのカムが切り替わる領域を求めずとも、不満ない動力性能を引き出せる。それでも、回さずにはいられないが。

アクセルペダルのストロークは、シビックより長い。カムが切り替わる、6000rpmのポイントは同じ。車内へ響くノイズは小さくても、加速力は明確に勝る。レブカウンターの針が9000rpmへタッチする間際まで、勢いよく加速し続ける。

コーナリングの堪能に必要なすべての要素

ペースを速めていくと、アコードとシビックがカーブで感心するほどのグリップ力を発揮し、粘り強くラインを保持するのに対し、インテグラは違う素質を備えているのが見えてくる。恐らく、意欲的なLSDの設定によるものだろう。

アクセルペダルを緩めれば、デフが効果的に機能し旋回力が一層高まるのがわかる。ノーズの向きが変わったら、右足へ徐々に力を込めていく。狙ったラインを辿りながら、素早く脱出していける。

エンジンは不足なくパワフルで、ペダルのストロークは充分。フロントタイヤへ過度に負担を掛けることなく、必要な推進力を細かく調整できる。

タイヤが均等に発揮するグリップ力と、ボディロールが抑えられたシャシー、感触豊かなステアリングホイールと低いシート位置が生む、豊かなフィードバック。コーナリングを堪能するために必要なすべての要素が、インテグラ・タイプRに与えられている。

今でも特別なVTECユニットの刺激

今回集まった1990年代の3台のホンダで、最も強い印象を与えてくれたのはインテグラ・タイプRだった。高性能モデルとして最も妥協の少ない、低く滑らかなクーペ・フォルムから得られる想像通り。峠道を駆け回るのに最適といえるだろう。

だが、残りの2台も魅力には欠かない。アコード・タイプRの実用性は、ネオ・クラシックとなった今では、さほど重要ではないかもしれない。それでも、純粋に運転を楽しめる能力に優れたパッケージングが融合していることは、間違いなく強みといえる。

シビック・タイプRはより楽しさを追求した、若々しさがある。ホットハッチとしてドライバーが望む体験を、鮮やかに味わわせてくれる。日本製の高性能モデルへ抱く、期待通りともいえる。

最も驚くべき事実は、この3台の仕上がりが見事に異なっているということ。いずれも同時代に生まれた前輪駆動のタイプRではあるが、ホンダはそれぞれに異なる設計と調整を与えたのだろう。

一方で、比較的控えめなスタイリングでありながら、並外れた感覚や運動神経を秘めているという点で共通している。タイプR的な個性として。

小さなハッチバックと4ドアサルーン、2ドアクーペとを結びつける切り札こそ、高回転域まで爽快に吹け上がるVTECユニットだ。エキゾチックな刺激を生み出す、核心部分は今でも特別な存在だった。

アコード、シビック、インテグラ 3台のタイプRのスペック

ホンダ・アコード・タイプR(CH1/1998~2002年/英国仕様)のスペック

英国価格:2万2995ポンド(新車時)/8000ポンド(約134万円)以下(現在)
販売台数:1980台(英国仕様)
全長:4495mm
全幅:1750mm
全高:1430mm
最高速度:228km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:1405kg
パワートレイン:直列4気筒2157cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:212ps/7200rpm
最大トルク:21.8kg-m/6700rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ホンダ・シビック・タイプR(EK9/1997~2000年/英国仕様)のスペック

日本価格:199万8000円(新車時)/2万ポンド(約334万円)以下(現在)
販売台数:約3万台
全長:4180mm
全幅:1695mm
全高:1360mm
最高速度:180km/h
0-97km/h加速:6.4秒
燃費:10.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:1090kg
パワートレイン:直列4気筒1595cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:185ps/8200rpm
最大トルク:16.2kg-m/7500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ホンダ・インテグラ・タイプR(DC2/1995~2001年/英国仕様)のスペック

英国価格:2万2500ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約417万円)以下(現在)
販売台数:約3万台
全長:4380mm
全幅:1695mm
全高:1320mm
最高速度:233km/h
0-97km/h加速:6.5秒
燃費:11.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:1120kg
パワートレイン:直列4気筒1797cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:190ps/8000rpm
最大トルク:18.0kg-m/7300rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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みんなのコメント

3件
  • ホンダに限らず、ここぞとばかりに振り返りすぎて
    懐かしさも新鮮さも何もないという
  • 「ホンダ、軽蔑するトヨタの“猿真似経営”で普通のメーカー化…聖域・技術研究所にメス」
    しがらみのない技術研究所で自動車開発に専念できることが、技術でライバルをリードするホンダの競争力の源泉だったはずだが、あっさりとその看板を下ろす。しかも「社員の多くがもっとも軽蔑するトヨタ自動車」(ホンダ社員)と似たような戦略を相次いで打ち出している。普通の自動車メーカーになるホンダに明日はあるのか。


    トヨタばっかり意識し過ぎて勝手に自滅していくホンダ笑
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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