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水平分業と垂直統合の総括【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

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水平分業と垂直統合の総括【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

車の最新技術 [2023.07.07 UP]


水平分業と垂直統合の総括【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●BYD、トヨタ

米国トヨタ 新型SUV発表を予告 ウワサの次期型ランドクルーザープラドか?

 「BEVになれば部品点数は1/3。水平分業になって参入障壁が下がる」という話がメディアを賑わし始めたのは概ね2010年頃のこと。以来13年、水平分業化は遅々として進んでいない。

 タイヤやバッテリーなどの、いわゆる旧来の部品の分類に入るものを除き、ある程度アッセンブリー化された汎用中間部品としては、辛うじてeアクスルくらいのものだが、eアクスルで躍進が期待されていたニデック(旧日本電産)は、かなり悩ましい決算発表となった。

 もちろん世の中は流転するものなので、今後また話は変わってくるかもしれないが、自動車産業を「水平分業 vs 垂直統合」で見るならば、23年現在は垂直統合が圧勝である。垂直統合の典型的勝ち組はテスラとBYDだ。


中国深セン市のBYDグローバル本社
 世の中が水平分業に期待するロジックは、「自動車は汎用部品をアッセンブリーするだけで作れるようになる」という理屈だったが、もう良い加減そんなに簡単ではないことを理解した方が良い。

 汎用部品の順列組み合わせで簡単に製品化が可能になるためには、規格化が避けられない。例えばコンセントを考えてみるとわかりやすい。日本の規格通りのコンセントであれば、どんな電気機器でも何の心配もなく接続でき作動する。はずなのだが、もうちょっと丁寧に記憶を辿ってみよう。電子機器に多い変圧器付きのコンセントは、1つ挿すと物理的にアダプターの筐体が隣と干渉して隣のスロットが使えなくなることは頻繁に発生する。

 これは差し込み機器のサイズ指定がなく、コンセント側のスロット間隔も含めて、現場に即したサイズ規格がないからだ。PCに詳しい人なら拡張スロットも同じ状態なことをご存知だろう。

 クルマの場合、もっとこうした制約が多い。インターフェイスだけ規格を合わせても、耐熱性や耐振動性、防水性その他もろもろ沢山の制約があって、それを全部指定して定義していくことは、もはやオープン規格ではなくすり合わせであり、外部メーカーから汎用品を買ってくるのではなく、サプライヤーとOEMの共同開発ということになる。

 そしてこう言う制約条件の設定のキーは、メインテナンスの現場でもたらされる不具合情報にある。あらゆる性能を青天井で上げて行けばコストも青天井になる。だからこそ、ライフサイクルの中でリアルロードで壊れるラインをきっちり割り出して、必要な性能に設定する必要があり、その情報を独占しているからOEMは強い。サプライヤーがそういう条件を設定しようにも、根拠となるデータがない。これが原則論である。

 ところが走行用のバッテリーではこの関係が逆転している。EVはこれまでの常識が通用しないのだ。

 BEVの最大手であるテスラでさえ、年産100万台。走行用バッテリーに関して言えば、一番トラブル情報を持っているのはバッテリーメーカーである。しかも日々技術的に進化を続けているバッテリーの情報は、まさに競争領域の機密情報なのでバッテリーメーカーはOEMにも情報を漏らさない。バッテリーに関しては、トラブル情報を持っているのはOEMではないのだ。

 バッテリーメーカーでもあり完成車メーカーでもあるBYD有利に事が進んでいるのはそういうわけである。

 いつの日か、バッテリーの性能が十分になり、完成車の故障データを追うことで、事足りる日が来るかも知れないが、当分はまだバッテリーの情報をどの程度持っているかが勝負の分かれ目である状態が続く。


トヨタ bZ4Xは当初、バッテリー保護を優先する設定で市場投入したが、利用者の声を受け、アップデートでバッテリーの使い方を改良した
 多くの伝統的自動車メーカーは、リスク情報をバッテリーメーカーに握られているからこそ、バッテリーの使い方に高めの安全率を見込まざるを得ないため、カタログ性能的に不利になる。トヨタがbZ4Xで批判を受けたのも、1日あたりの充電上限の設定や、電池残量ゼロからまだ走れる余裕を見込んだことが原因だった。

 この状態を何とかしようと思えば、BEVに関しては、垂直統合化を進めて、バッテリーの基礎データを集めるしかない。そのためにはコネクテッドによって、リアルタイムなバッテリー情報を収集し、バッテリーのモニタリングに、より深くコミットすることを意味する。それは場合によってはOEMによるバッテリーの直接生産か、資本系列の会社で半内製化する方向へ進むということになるだろう。

 ということで、現在のトレンドで見ると、一時期騒がれた水平分業はどうも下火になり、代わって垂直統合の波が色濃くなってきた。つまりバッテリーの研究開発が可能な会社に絞られるという意味では、参入障壁は下がるどころか現在上がる方向へと向かっているのが現実である。

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みんなのコメント

2件
  • 水平分業を知りたいならtsmcを調べろ。
    車屋の水平分業?単に組立屋を頂点とするピラミッド構造じゃねぇか。下請けからの部材調達してるだけだ。
    OEMとODMの違いも分かってないし。テスラのような外来種が来たおかげて今まで当たり前と思っていた事が実はデタラメだった事がよくわかる。
    池田、そうゆう事を書けよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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