現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「FR車」は何がいいのか マツダが新SUVに採用の後輪駆動 日本で少数派になったワケ

ここから本文です

「FR車」は何がいいのか マツダが新SUVに採用の後輪駆動 日本で少数派になったワケ

掲載 更新 213
「FR車」は何がいいのか マツダが新SUVに採用の後輪駆動 日本で少数派になったワケ

マツダCX-60発表 ラージ商品群は「FR」でいく!

 マツダが欧州において新型クロスオーバーSUV「CX-60」を発表しました。かねてマツダがアナウンスしていた新しい「ラージ商品群」の第一弾、2022年3月から生産が始まり、4月上旬には日本向けモデルも公開されるそうです。

これも「スバル車」!? 世界唯一 スバルの水平対向エンジン搭載の「大砲」 一体どう使うのか

 この「ラージ商品群」には、エンジン縦置きの後輪駆動ベース、つまり日本では少数派となった「FR」が採用されます。日本の主流ではなくなったFRをなぜ新しい商品群に選択したのか、そこにはマツダのこれからを見据えたビジョンがあるようです。

 クルマは、いろいろなエンジンの配置と駆動の組み合わせがあります。その代表格が、エンジンをクルマの前へ縦に置いて、後輪を駆動する方式のFR(フロントエンジン・リアドライブ)と、エンジンを前へ横向きに置いて、前輪を駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)のふたつです。

 このうち先に普及したのはFRでした。その理由は簡単です。前輪を操舵のため左右に動かしながら、駆動まで行うFFは、技術的に難しかったから。そのため、日本でも先にFRのクルマが生まれ、1980年代まで主流を占めました。今ではFFのトヨタの「カローラ」も、最初はFRだったのです。

 一方で、FFには、「室内を広くとれる」というメリットがあります。このメリットは、クルマのサイズが小さいほど効きます。そのため小型車を中心とする日本車は、1980年代以降どんどんとFFが増え、気が付けば、現在の日本車でFRなのはトヨタ「センチュリー」「クラウン」、レクサス「LS」「IS」、日産「スカイライン」などの大型セダンと、トヨタ「GRスープラ」「GR86」、スバル「BRZ」、マツダ「ロードスター」、日産「フェアレディZ」といったスポーツカーだけになっています。ちなみに、4WDの日産「GT-R」もFRベースです。

 その他は、ほとんどFF、もしくはFFベースの4WDです。軽自動車からミニバン、SUVまで、日本車の大多数はFFになってしまっているのです。

FF王国は日本だけ?

 そんな状況なのに、マツダがわざわざCX-60にFRを採用したことを不思議に思う人もいるかもしれませんが、「世界市場では、まだまだFRは大人気」ということが理由に挙げられます。

 実のところ、FFばかりになったのは、日本だけ。なぜかといえば、FFには「大馬力が苦手」という弱点があるのです。一方、FRは「大馬力が得意」です。

 その違いは、加速するときのクルマの姿勢を考えれば理解できるでしょう。クルマは加速の際、前上がり・後ろ下がりという姿勢になります。FFの場合、前輪が浮き上がると、結果的に前輪がスリップしやすくなります。一方、FRは後ろのタイヤに体重がかかり、力が逃げません。だから、欧米の大馬力のクルマは、みんなFRになっています。

 メルセデス・ベンツやBMW、キャデラックの大きくパワフルなモデルは、どれもFRか、FRを基本とした4WDとなっています。例外はポルシェの「911」くらいですが、それでもセダンのポルシェ「パナメーラ」はFRです。また、そんなFRセダンをベースとしている欧米の大型SUVも、当然、FRベースが主流。エンジン・ルームを覗けば、みなエンジンは縦向きに配置されています。

 また、アメリカは、ラダーフレーム(はしご状の車体フレーム。耐久性に定評がある)を使う巨大なピックアップトラックや、そのSUV版が数多く売れるという特殊な市場。過去何十年にわたって、乗用車よりもピックアップトラックの方が数多く売れているのです。そんなラダーフレームのクルマは、当然、エンジン縦置きのFRとなっています。

狙うはアメリカ! SUVだけでなく

 そして、マツダが今、狙っている市場はアメリカです。トヨタやホンダと比べると、マツダのアメリカ市場での販売は微々たるもの。逆に言えば、アメリカ市場は伸びしろのある新天地です。ここで販売を伸ばすことができれば、マツダの成長に直結します。

 そこで必要となるのが、新たな商品です。マツダは、すでにアメリカ市場で「CX-5」や「CX-9」といったSUVを販売してきました。2022年1月からは、新しく作ったアラバマの工場で新型「CX-50」の生産も始まりました。しかし、これらはすべてFFベース。日本では立派に見えますが、アメリカでは“小さなクルマ”になってしまいます。

 そこで欲しいのは、アメリカの売れ筋となる、より大きなSUV。それがマツダの言うところの新しい「ラージ商品群」となるわけです。当然、大きいクルマですから、大馬力を受け止めるFRの必要があるでしょう。ちなみに、新型CX-60は、日本と欧州向けのモデルは車幅が若干狭いナローボディとなります。本命のアメリカ向けは、もっと幅広いワイドボディの「CX-70」と「CX-90」の2つです。近く、その2モデルも発表されることでしょう。

 また、ラージ商品群の量産化は、マツダにとって、ただ「SUVが増えた」だけではなく、別の価値もマツダにもたらします。それは、より大きく、大馬力のセダンにも挑戦できる資格です。

 これまでのマツダのフラッグシップセダンはFFの「マツダ6」でした。車格的には、トヨタの「カムリ」、ホンダの「アコード」クラスに該当します。ところが、それよりも上の車格、メルセデス・ベンツの「Cクラス」「Eクラス」、BMWの「3シリーズ」「5シリーズ」、レクサス「IS」「LS」といったFRのアッパーミドルセダンには届きません。しかし、FRのプラットフォームがあれば、マツダにも挑戦する権利があります。

 正直、FRプラットフォームさえあれば売れる! というほど、市場は甘くはないでしょう。しかし、スタートラインに立つ権利を得たというだけでも、マツダにとっては大きな一歩。これからのマツダの挑戦に期待しましょう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

こ、これアウトランダーじゃね!? 決算説明から見えた[日産PHEV第1号車]は三菱からのOEMか?
こ、これアウトランダーじゃね!? 決算説明から見えた[日産PHEV第1号車]は三菱からのOEMか?
ベストカーWeb
日産「フェアレディZ」にワゴンが登場!?  実は「ステージア」ベースで「リーフ」リアゲートを移植…車検をとって公道走行可能なカスタムカーでした
日産「フェアレディZ」にワゴンが登場!? 実は「ステージア」ベースで「リーフ」リアゲートを移植…車検をとって公道走行可能なカスタムカーでした
Auto Messe Web
実はサーキットより面白い? 本気のオフロード走行のススメ SUV人気の裏にある魅力
実はサーキットより面白い? 本気のオフロード走行のススメ SUV人気の裏にある魅力
AUTOCAR JAPAN
「オートモビリア」って、なに? ミニカーや古本などがずらりと並んだ「アミューズメントゾーン」にはキャンギャルも登場して熱気に包まれてました
「オートモビリア」って、なに? ミニカーや古本などがずらりと並んだ「アミューズメントゾーン」にはキャンギャルも登場して熱気に包まれてました
Auto Messe Web
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
乗りものニュース
沼にハマる 『レトロモビル2025』でフランス車の魅力に迫る 高い技術力と芸術的デザインの融合
沼にハマる 『レトロモビル2025』でフランス車の魅力に迫る 高い技術力と芸術的デザインの融合
AUTOCAR JAPAN
トヨタ「86」&スバル「BRZ」用クラッチは「歯打ち音」を低減!「ヤリス」用は半クラが扱いやすい…待望のアイテムが「小倉クラッチ」からリリース!
トヨタ「86」&スバル「BRZ」用クラッチは「歯打ち音」を低減!「ヤリス」用は半クラが扱いやすい…待望のアイテムが「小倉クラッチ」からリリース!
Auto Messe Web
先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ
先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ
AUTOCAR JAPAN
帽子を焦がしたレーシングシャシー ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1) バラバラからの再生
帽子を焦がしたレーシングシャシー ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1) バラバラからの再生
AUTOCAR JAPAN
トヨタ勝田貴元、惜しくも優勝逃す2位フィニッシュ……3.8秒差で僚友エバンスに軍配|WRCラリー・スウェーデン
トヨタ勝田貴元、惜しくも優勝逃す2位フィニッシュ……3.8秒差で僚友エバンスに軍配|WRCラリー・スウェーデン
motorsport.com 日本版
スズキの超ハイルーフ「本格SUV」に期待大!「ジムニー」超える“悪路走破性”に「まるで軍用車!?」な斬新デザイン採用! 日常から“アウトドア”まで大活躍の「エックスヘッド」コンセプトがカッコイイ!
スズキの超ハイルーフ「本格SUV」に期待大!「ジムニー」超える“悪路走破性”に「まるで軍用車!?」な斬新デザイン採用! 日常から“アウトドア”まで大活躍の「エックスヘッド」コンセプトがカッコイイ!
くるまのニュース
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
WEB CARTOP
被災3年…ついに架設スタート! 阿武隈川を渡る国道399号“軽くなる”新しい橋の姿は?
被災3年…ついに架設スタート! 阿武隈川を渡る国道399号“軽くなる”新しい橋の姿は?
乗りものニュース
“ランクル250”をハードコアにカスタマイズ!? オフロードチューニングのスペシャリストが最新コンプリートカー「AT37」を発表!
“ランクル250”をハードコアにカスタマイズ!? オフロードチューニングのスペシャリストが最新コンプリートカー「AT37」を発表!
VAGUE
FDJ2がMIDホイール一色に! 公式ワンメイク化でドリフトシーンに新時代到来!!…大阪オートメッセ2025
FDJ2がMIDホイール一色に! 公式ワンメイク化でドリフトシーンに新時代到来!!…大阪オートメッセ2025
レスポンス
【特集】レッドブルの非情なドライバー育成……しかし彼ら以上にドライバー育成に注力してきた存在はゼロ
【特集】レッドブルの非情なドライバー育成……しかし彼ら以上にドライバー育成に注力してきた存在はゼロ
motorsport.com 日本版
前の車との「車間距離」めちゃ大事! でも運転中「どうやって」測る!? 「高速」や「一般道」で適切な車間を取る方法とは
前の車との「車間距離」めちゃ大事! でも運転中「どうやって」測る!? 「高速」や「一般道」で適切な車間を取る方法とは
くるまのニュース
まるでリアルRPG!? 目指せ鈴鹿8耐優勝! レーシングライダー石塚健が新チーム立ち上げを発表
まるでリアルRPG!? 目指せ鈴鹿8耐優勝! レーシングライダー石塚健が新チーム立ち上げを発表
バイクのニュース

みんなのコメント

213件
  • 今までFF車ばかりで展開してときは
    FRを否定してなのに
    FRが登場したら他社のFF車をバカにし
    否定しだして笑える
    ツダオタの手のひら返しには呆れる

  • マツダ車はみんな同じですね。
    小型車デミオ デミオ中型 デミオ大型 馬鹿の一つ覚えのデザインじゃ
    飽きてしまいますね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村