筆者のまわりには「スポーツカーに乗りたかった」と後悔している40代のなんと多いことか。ひょっとしたら20代は好きなクルマに乗れる最初で最後のチャンスかもしれない。“平成生まれ”として、そんな悲劇は看過できない。20代の20代による20代のためのスポーツカーをここに提案したい。
先日、TOKYO FMで放送されたラジオ番組「シンクロのシティ」で思わず聞き入ってしまうテーマが取り上げられていた。ズバリ、「お父さんが本当に乗りたいクルマ」だ。
合流は車線先頭部で交互に【お盆休み交通渋滞撲滅委員会Vol.3】
番組の冒頭では、若者のクルマ離れに歯止めを掛けるべく開発されたスポーツカー「トヨタ 86」を買うために販売店を訪ねてくるのは20代ではなく60代が大半を占めたというエピソードを取り上げ、もしかしたらファミリーカーに乗っていても心の奥底ではスポーツカーに乗りたい!というパパ、実は多いのでは?を探っていた。
ミニバンのようなファミリーカーに乗っているパパの本音はやはり違った。家族を優先しなければならないが心の底ではBMWに乗りたいと語ったパパは、子育てにひと区切りが付いたら絶対BMWに乗ると夢見ていた。
そんなことをイヤホン越しに聞いていたボクは思った。
(若いうちに乗っとけばよかったのに……)
しかし、果たして若者向けのスポーツカーというのはあるのだろうか?
「トヨタ 86」や「マツダ・ロードスター」といったピカピカの新車に大金は掛けたくないし、「スバル・インプレッサWRX STI」や「三菱ランサーエボリューション」のような20~30年も昔のスポーツカーは野暮ったい。そもそも免許は大半がAT限定だ。
思うに、いまのスポーツカーには2種類の意味がある。ひとつは、これまでのように走りの楽しさを追求したクルマだ。もう1つは、ファッションとしてのスポーツカーだ。そして、後者は圧倒的に少ない。誰もが知っているブランドで、清潔感のあるスタイリッシュな内外装をもち、運転が気軽なオートマチックトランスミッションのスポーツカー……つまり、カッコつけるためのスポーツカーだ。しかし、ボクは魅力的な3台を見つけた。
BMW Z4(2009年~2016年)
真っ先に思い浮かんだのが、BMWのZ4だ。憧れを抱かれるブランドの常連であり、なかでも2人乗りのオープンカーであるZ4の存在感は半端ない。切れ長のヘッドライトとキドニーグリルを組み合わせた表情に加えて、乗員をボディ後方に置くことで実現した長大なフロントノーズがもたらす独特なシルエットは息をのむほど美しい。以前、ヴァレンシアオレンジのカラーを纏い、340psを誇る直6ターボを積んだ「Z4 sDrive35is」で陽光降り注ぐ表参道を駆け抜けた。電動ハードトップで気軽に楽しめる爽快感とエンジンの奏でるサウンドは格別だった。
メルセデス・ベンツ SLKクラス(2004年~2011年)
対抗馬として挙げられるのがメルセデス・ベンツのSLKクラスだ。ブランドの知名度は申し分なく、2人乗りのオープンカーという特別感も十分だ。また、フロントグリルに大胆にあしらわれたスリーポインテッドスターを強調するようなデザインは、かの6000万円に及ぶスーパーカー「SLRマクラーレン」を彷彿させ、いまなおその造形は目立つ。エンジンは最もコンパクトなもので1.8L 直4スーパーチャージャーだが、最高出力は184ps、最大トルクは25.5kgmと必要十分なレベルだ。
Audi・TT(2006年~2015年)
最後の一台がアウディのTTだ。ひと目でアウディと分かる顔つきや流麗なプロポーション、ダッシュボードをドライバー側に傾けることでコクピット感を強めたインテリアなんか惚れ惚れするほどCOOLだ。これぞ若き成功者の証だ。このルックスの良さはオーナーが若いほど輝きを増すに違いない。エンジンや駆動方式にこだわらないなら1.8L直4ターボ(160ps/25.5kgm)の前輪駆動車で十分。ちなみにクーペなら2名分の後席が備わる。
今回紹介した3台はいずれも一流ブランドのクルマばかりだが、デビューから時間が経っているため徐々に値段が落ちてきている。輸入車と聞くと故障や維持費に対する不安を煽られるが、大学卒業と同時に輸入車を買ったボクの経験談で言えば、認定中古車なら大きなトラブルも保証で対応できるため安心だ。
40歳を迎えたボクはきっとこう思う。
(若いうちから乗っといてよかったぁ。まだ乗ろう)
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