最新技術と最高レベルのマテリアルでRB26DETTを覚醒させる
HKSアドバンスドヘリテージからの刺客
2021年の発表以降、多くの反響を呼んでいる「HKSアドバンスドヘリテージ」。これは旧いクルマにずっと乗り続けたい、或いはチューニングによって新型車以上に魅力的なクルマに仕上げたいというユーザーのニーズと、環境性能に代表される避けられない社会受容性とを、技術によってどう折り合い付けるかというテーマに挑むプロジェクトになる。
開発は現在も進められているが、その過程で誕生したのがここで紹介するRB26DETT用の“CFRPインテークシステム”だ。この製品は、流速や抵抗などを最新の流体解析ソフトで解析し、理想的な形状へと導いた逸品。パイピングの径やレイアウトをタービンごとで変え、ツインターボそれぞれの吸気流量が均一になるよう設計されている。
素材はドライカーボンだが、部位によって含有する樹脂を変えているのがポイント。「一般的なドライカーボンはエキポシ系の樹脂を使うのですが、耐熱温度が120度くらいなんです。それだとタービン付近では耐えられないので、350度対応のシアネートエステル系の樹脂を使っています」とは開発担当のHKS中島さん。
ちなみに、シアネートエステル系の樹脂を使ったドライカーボンは非常に高価で、航空宇宙・防衛用途の極端な使用温度環境下を想定したシロモノ。チューニングパーツとして使われるのは恐らく初だろう。
なお、ドライカーボン化の恩恵は絶大で、従来のアルミ製パイプに比べて30パーセント以上の軽量化を実現。パイプ自体の温度上昇および滞留温度の軽減も可能になるため、吸気温度上昇によるパワーロスを抑えられるメリットもある。
インダクションボックスは、吸気温度の低減を狙って純正同様のクローズドレイアウトを採用。内部フィルターは純正から6パーセントの容量アップを果たした専用品だ。また、外気導入口もデュアル化して断面積を2.4倍まで広げている。
エアフロ部分のサクション配管は、80φへとサイズアップ(純正70φ)。その他、集合管の形状も再検証し、既存モデル(HKSスペシャルパイピングキット)に比べて90パーセントの流量差低減を実現している。
サクションパイプ内のトピックとしては、サージングを抑えるアンチサージプレートの採用も見逃せない。
噛み砕くと、タービン直前のパイプ内に整流板を設けるのだが、このプレートでサージ発生の要因となる強旋回を伴う再循環流(逆流)を抑制。実際の性能評価試験では、サージ流量の12~25パーセント低減を確認しているほど。これまで、RB26DETTツインターボの課題だった吸気干渉の発生マージンを拡大することに成功したのである。
従来の対策手法であるタービンのポーテッドシュラウドに対して、この仕様は高流量域でのコンプレッサー効率低下もない。まさに最強のサージング防止装置なのである。
その他、システムのインストールで行き場を失うラジエターのリザーバータンクは専用品を開発していたり、ステーもドライカーボンで設計するなど、妥協のない作り込みが光る。各部のクオリティは異常なほど高く、もはや芸術品の域である。
驚くのは、ゴムのダクト部まで型を起こして製造していること。しっかりとロゴが刻まれ、HKSの強い拘りが感じられる部分だ。
開発担当:HKS中島久晴さんHKSの技術力が注ぎ込まれた、まさに究極と呼ぶに相応しいインテークシステム。現在は製品化に向けた最終調整段階に入っているそうだが、「当初は100万円以内でのキット化を目指していたのですが、素材の価格高騰などもあって価格は150万円前後になりそうです。発売は今夏を予定していますよ」とのこと。
無論、簡単に手が届く金額ではない。しかし、この令和にRB26DETTチューニングの最強スペックが誕生し、それが一般販売されるというのは、実に夢のある話だと思う。「いつかはあのシステムを…」と、妄想するだけでも胸が高まるというものだ。
●撮影:金子信敏
●取材協力:エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235
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