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初代クラウンがもたらした「はじめての価値」。「トヨグライド」はやっぱりラクチンだった【16代目クラウン誕生記念特別企画 Vol.01<RS/RSD型>】

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初代クラウンがもたらした「はじめての価値」。「トヨグライド」はやっぱりラクチンだった【16代目クラウン誕生記念特別企画 Vol.01<RS/RSD型>】

16代目クラウンの誕生を機に、各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」をあらためて紐解く特別連載企画。第1回は、1955年に誕生した初代「RS/RSD型」をご紹介しよう。日本初のダブルウイッシュボーン式サスペンションや、自動変速装置トヨグライドを採用した革新的モデルである。トヨタ博物館所蔵の車両による撮りおろし画像も、じっくり楽しんで欲しい。(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より抜粋)

初代クラウンは、日本初の本格的な乗用車として開発された
今や高級セダンの代名詞となったトヨタ・クラウンは、1955年(昭和30年)1月に初代モデル=トヨペット・クラウンとして誕生した。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

随所に新しいメカニズムを採用した日本初の本格的な乗用車として開発されたクラウンは、トヨタ車として初めてプレス技術による大量生産方式を採用したモデルであった。

エクステリアの特徴はアメリカナイズされたデザインの採用と、観音開きのドアを採用したことであろう。前席用ドアは通常のスイング式だが、後席用ドアはリアヒンジで、センターピラー側から開く。

また、前後のウインドスクリーンは、初期モデル登場当時、曲面ガラスの製造が困難だったため、フロント・リアとも分割式ガラスとしていた。その後、技術開発の進化と共に、58年のマイナーチェンジまでに1枚ガラスに変更している。

メカニズム面のハイライトは、フロントサスペンションに進歩的なダブルウイッシュボーン式独立懸架を採り入れたことだ。ブレーキは4輪ドラムだったが、前輪にはツーリーディングシューを採用していた。

エンジンはトヨペット・スーパーから譲り受けた1.5LのR型直列4気筒OHVを積む。デビュー当時のスペックはグロス48ps/10.0kgm。その後のきめ細かい改良によって最終モデルでは62ps/11.2kgmまで引き上げられている。バッテリーも当初の6ボルトから12ボルトに進化している。また、ディーゼルも仲間に加わった。

トランスミッションは2/3速ギアにシンクロメッシュを備えた3段コラムMTをコンビ。また、クラッチに油圧式を採用するなど、時代に先駆けて凝ったメカニズムを採用している。最高速は100km/hだった。

自社開発の自動変速機「トヨグライド」を採用
発売から5年後の60年10月には、新設計の3R型4気筒OHVエンジンを積む1900シリーズを送り込む。排気量は1897ccで、グロス90ps/14.5kgmを発生した。ミッションはオーバードライブ付き3速コラムMTで、最高速140km/hと、かなりの性能向上を果たしている。

さらに当時の金額で7万円のエキストラコストを払えば、日本の乗用車としては初めて採用された自動変速機「トヨグライド」付きモデルを購入することも可能だった。3要素2相型トルクコンバータにロー及びリバース用のプラネタリー式ギアボックスを組み合わせた設計である。

ステアリングコラムにはコントロールレバーがあり、R、L、D、N、Pの5ポジションが示されている。平坦な舗装路ではD(ドライブ)、坂路やフルロード(定員乗車)の場合にはL(ロー)を選択した。

トヨグライドは、トルコン付きの運転の容易さが、ルーミィな6人乗りファミリーサルーンの実用性をさらに高いものにしていた。レバーをセットすると、アクセラレーターを踏まなくてもクルマは僅かに前進する(専門家はクリープという言葉も使う)。混んだ市中でクルマが行列して少しずつ進む場合などは、ブレーキから足を放すだけで前進するので便利である。

Lからのスタートは比較的急速で、50km/hあたりまで踏み込めばたいていの交通の流れを後にすることができたという。Lの絶対的なマキシマムは約65km/hだった。

DからのスタートはLに較べるとはるかに緩慢とのこと。実測値で0から50km/hに達するまでの時間は、Lの6.2秒に対し、Dでは8.8秒を要した。それでも一度、30km/hに達した後のDレンジでのスロットルレスポンスは比較的鋭敏だった。

快適な乗り心地を演出するダブルウイッシュボーン式フロントサス
トヨペット・クラウンのボディは、サイド・フレーム、クロス・メンバーともに閉断面(ボックス型)で、特に捻れに対しては非常に強度をもっており、かつ薄板を用いることにより重量軽減に努めている。メインボディより前方張り出し部サイド・フレームは、板厚を増している。

フロントサスペンションは、本邦最初の独立懸架方式(ニー・アクション)を採用、いわゆるダブルウイッシュボーン・コイルスプリング式である。

いうまでもなく、この方式は、道路の凸凹によるバウンド、路面衝撃を、左右両輪の独立した屈伸運動によって吸収するので、乗り心地は極めて快適であり乗用車には不可欠の機構でもある。最前部には横振れを防ぐトーションバー式のスタビライザーがある。

なお、初期のコイルスプリング式ダブルウイッシュボーン式サスペンションは、いわゆるキングピン式を採用していたが、58年10月に発売されたクラウン・デラックスで上下にボールジョイントを用いたダブルウイッシュボーン式に改良された。

後輪には、新設計の3枚リーフ・スプリング式リジッド・アクスルを採用している。このスプリングは東大生研が開発した理論を製品化したものだ。スプリング長や幅が大きく、鋼板も厚いもので枚数を少なくしてあるので、軽量、柔軟なうえに、バネ間の摩擦が少なく、充分な耐久性がある。

テンション・シャックルの両端はゴム・ブッシュを採用し、メンテナンス・フリーを図る。ショックアブソーバーとしては、横揺れ防止も兼ねて八の字型に、油圧式ダンパーが取り付けられている。

ご当時インプレダイジェスト──58年式デラックス(マイナーチェンジ車)
試乗したトヨペット・クラウン デラックスに搭載される4気筒OHV、1453ccのスクェア・エンジンは、今度圧縮比を8.0対1に上げて、出力も58ps/4000rpmになった。エンジンの機構的ノイズは極めて低く、エキゾーストノートも、今回マフラーが2段に附けられたために、フルスロットルにしても、気になるほど高くはない。

座席に座った第1印象は、1.5Lの車としては、異例に広々していることである。前後席共、3人並んで比較的楽に腰掛けることができるが、やはり長距離の快適なドライブは、大人4人または大人2人、小人3人というところであろう。

後席の居住性にも、前席と同様、あるいはそれ以上の考慮が払われているのがクラウンの特徴で、前席をいっぱいに下げても、後席のレッグ・ルームは十分である。

比較的高い座席からの視野は、前後方共申し分なく、油圧操作のクラッチ、ブレーキペダルは、ハイヒールでも容易に踏めるほど軽い。全てのコントロールは軽く楽で、素人にも親しみ易く考慮が払われている。

ボックスセクションフレームを持ったクラウンは、どんな悪路を強行突破しても、全く不安を与えない。ロードクリアランスは210mmもあるので、先ず、大抵の悪路は心配ない。

ただし加速性能はいささか失望すべきものであった。元来、非常に重い車で(車重1250kg、3人乗ってガソリンがフルに近く、その上、低オクタンガソリンを使ったというハンディキャップはあったにしても、この数字は現代の1.5Lセダンとしては自慢できない。

ブレーキは、クラウンの自慢できる点の一つである。効きはすこぶる強力で、かなり荒く使ったにもかかわらず、最後まで効力にも、ペダルの踏みしろにも、変化は認められなかった。 

一言にしていえば、クラウン・デラックスは、現在の日本の国情に最も即した実用車である。広い6人乗りの客室、快適な乗り心地、扱いやすい操縦装置、堅牢無比なサスペンション、それに他車の追随を許さないデラックスなアクセサリーを備えたこの車は、初心者にも安心して勧められる豪華版中型車だ。(モーターマガジン1958年12月号より抜粋/文:小林彰太郎)

編集部註:掲載本文は1958年~1961年のモーターマガジン誌から抜粋しています。技術的表現などは、当時の表記を優先しています。画像の一部(トヨタ博物館所蔵の2台)は、写真:早川俊昭。

■トヨペット・クラウン DX(デラックス) オーバードライブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4365×1695×1540mm
●ホイールベース:2530mm
●車両重量:1250kg
●エンジン:直4OHV
●総排気量:1453cc
●最高出力:58ps/4400rpm
●最大トルク:11.0kgm/2800rpm
●トランスミッション:3速MT+OD
●駆動方式:FR
●当時の車両価格(税込):110万円

[ アルバム : クラウン1st RS/RSD型 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • 16代目を観るたび虚しく感じる…なあ、カナブン?

         ブ〜ン ブ〜ン、、、、、呼んた?

※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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