代を重ねる毎に進化する名機4G63 最終型MIVEC付きの完成度が光る
三菱『ランサー・エボリューションI』を1993年に新車で購入し、その後、現在の『ランサー・エボリューションVI』に乗り換えたオーナーが、少し早めのオーバーホールを兼ねてボア&ストロークアップキットを使用し、排気量を2リットルから2.3リットルへとアップするチューニングを計画。 施術するのは西の名店「Kansaiサービス」。絶対的な速さだけの追求はせず、ストリートでの扱いやすさを重視した仕様にするという。
1992年の登場以来、毎年のようにモータースポーツシーンで勝つために進化を続けてきた三菱『ランサー・エボリューション』。 その最終モデル「ランサー/エボリューションX」の生産が終了して約1年が経過したが、新たなランサー/エボリューション(以下ランエボ)を開発するというニュースもある。
ランエボの歴史を振り返ると、エボI~IIIが第1世代、エボIV~VIトミ・マキネンエディション(TM)は第2世代、エボVII~IX MRが第3世代、第4世代が最後のランエボであるエボXとなる。
<ランサー・エボリューション第1世代>
エボI
エボII
エボIII
<ランサー・エボリューション第2世代>
エボIV
エボV
エボVI
エボVI TM
<ランサー・エボリューション第3&4世代>
エボVII
エボVIII
エボVIII MR
エボIX
エボIX MR
エボX
WRCにおける勝利のために 進化を続けた4G63エンジン
第1世代から第3世代までのパワーユニットは名機「4G63型」エンジン。エボXでオールアルミブロック4B11型エンジンを搭載する。 「4G63型」エンジンは、E39型ギャランVR-4がWRC(ワールドラリーチャンピオンシップ)に参戦することを目的に開発され、ランサー・エボリューションが引き継ぎWRCのベースマシンもスイッチした。
また、エボI~IIIまではエンジンが助手席側に搭載されていたが、エボIVから運転席側と搭載方向を左右反転させた。オイルキャップの位置からも、反転させたことがわかる(向かってキャップが右側にあるのがエボI~III、左にあるのがエボIV以降)。
「ランエボが搭載する4G63型は、タフなエンジンです。チューニングしても壊れにくいし、タービンがエンジン前方にあり、ボンネットダクトからエンジンルームの熱が逃げるので耐久性は高いですね。チューニングベースなら、ランエボXのアルミブロックエンジンより優れているくらいです」というのは、Kansaiサービスの向井代表。
向井代表によると、4G63型エンジンは、代を重ねるごとに確実に進化を遂げているという。その完成型とも言えるのがエボIXで採用されたMIVEC(可変バルブシステム)だという。 「4G63型エンジンは、もともとがロングストロークタイプでトルクが太いのですが、MIVECが付いてさらにトルクバンドの広い特性になっています」と向井代表。
エボVIだがエンジンはMIVEC
さて、今回取材したのはランエボVI。前述したように、オーナーは、このクルマの前に新車で購入したエボIを所有していた。しかし、エンジンブローをしてしまったため、エボVIに乗り換えることにしたそうだ。 つまり、ランエボの第1世代と第2世代を経験したことになる。 メーター上の走行距離は約10万kmだが、6万4000km時にメーターを交換しているので、実質の走行距離は約16万km。 車内を見るとKansaiサービスのリフレッシュバーを装着。ボディのヘタリを予防する処置が施されている。そして、このクルマのトピックとなるのがエンジンだ。 実は、2006年にランエボIXが搭載するMIVECエンジンに換装していたのである。このときの走行距離は約7万8000km。
当時はタービンやインテークまわりまで付いて58万5000円だったという。 ハッキリ言って、エンジンをオーバーホールする工賃+パーツ代より乗せ換えたほうが安かったわけだ。 しかも、可変バルブタイミングシステムMIVEC付きにできるとなれば、よほど従来のエンジンに固執しない限りオーバーホールという選択肢はないだろう。 実は、完成度の高いエボVIII以降のエンジンに比べると、それ以前のユニットはややトラブルが多いそうだ。そのような理由もあって、このクルマのオーナーも迷わずエンジンを換装したわけだ。
現在は新品の4G63型エンジンが手に入らないので、Kansaiサービスではオーバーホール時にMIVEC化するメニューを用意しており、その価格は30万~40万円(オーバーホール代は別)。
ちなみに、このMIVECエンジンを搭載したエボVIは、さらにカムシャフトをIN側272度、EX側278度に変更。東名パワードのエキマニなどを装着したブーストアップ仕様。 オーバーホール前のパワーチェックでは、365.1ps/6340rpm、49.4kgm/3500rpm。ノーマルのMIVEC付き4G63型エンジンの280ps/41.5kgmを超えるパワー&トルクを発揮していた。
さて、チューニングメニューだが、ベースとなるエンジンの素性が良いため、HKS製の鍛造ピストン&コンロッド、フルカウンタークランクシャフトのキットで排気量を2リットルから2.3リットルにアップする。 エンジンブロックは、ボアをコンマ5mmボーリングで広げ85.5mmに。ストロークは88.0mmから96.0mmへとさらにロングストローク化。タービンは、現在のノーマルを継続使用する。 ノーマルでもトルクフルな4G63型エンジンが、さらに太いトルクを発生する仕様になるそうだ。
次回はMIVECエンジンの内部に迫る!
取材協力:Kansaiサービス TEL0743-84-0126 http://www.kansaisv.co.jp/
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