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初代アウディA5スポーツバックは、ニッチな魅力にあふれたモデルだった【10年ひと昔の新車】

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初代アウディA5スポーツバックは、ニッチな魅力にあふれたモデルだった【10年ひと昔の新車】

2009年9月、欧州でアウディA5スポーツバックが発表された。クーペ、カブリオレに続く「A5シリーズ第3のモデル」は、A5クーペとA4アバントという既存の素材を使って開発された画期的なアイデア商品だった。ここではイタリア・フローレンスで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年10月号より)

A5クーペとA4アバントのいいとこ取り
これまでA3スポーツバックしか知らなかった私は、イタリアのフローレンスでA5スポーツバックと初めて対面して不思議に思った。「これはハッチゲートを持った4ドアクーペではないか!?」と。もっともアウディはスポーツバックを「よりスポーティでダイナミックなアバント」と言っているから、たしかに不思議なことではないが。

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しかしこのスタイルを見れば、やはりA5スポーツバックはメルセデスCLSのような4ドアクーペの潜在顧客まで取り込もうと狙っているような気がする。いずれにせよ、アウディはこのモデルでニッチ市場を目指しているのは間違いがない。

空港から借り出したのは2.0TFSIエンジン搭載のクワトロ仕様だった。A5スポーツバックはそのモデル名とスタイリッシュなデザインからベースはA5クーペと想像してしまうが、全長4711mmとホイールベース2810mmを見れば、むしろA4アバントに近いことがわかる。A4アバントの高さを50mm低くして、幅を30mm広げ、クーペ風のルーフとそれに続くゲートを組み合わせてできあがったのがA5スポーツバックというわけだ。

フレームレスのサイドウインドウとシャープなグリーンハウスは、アバントよりもずっとスタイリッシュでスポーティ、さらにパーソナルユースな雰囲気を漂わせている。また、低く長いのでCd値は0.29とA4アバントやセダンより1小さくなっている。

インテリアはクーペ譲りだが、独自のデザインが与えられている。しかし、一目でわかるほどの大きな違いはない。一時はもてはやされたMMI(マルチメディアインターフェイス)だがコントロールダイヤル周辺にスイッチがこれほど並んでしまうと、やはり目線を落とさねばならない。聞くところによるとニューA8のダイヤルはダッシュボードに移動するという。またナビモニターもそろそろ6.5インチから卒業しないと他に追い越されてしまう。もっとも、人間工学的には十分に熟慮された完成度と美しさが同居するコクピットデザインではある。

ところで、クーペ風のルーフによって低められた後席の空間だが、身長170cmの私が座った感じでは全く狭くはなく、ヘッドルームも十分だ。さらにクーペよりも長いホイールベースのために足元も広い。これならば子供はもちろん、標準的な身長の日本人ならフル4シーターとして十分に使うことができる。

また大きなリアゲートを開けるとリアシートのバックレストを立てた状態で480L、そしてフラットにするとリアの荷物室は980Lにまで拡大する。また開口部も幅1mと広く、トランクの敷居の高さも680mmとA4アバントとは50mmしか違わないので、重い荷物の積み下ろしもそう苦労はしない。

ダイナミックでありながら、フォーマルな面も併せ持つ贅沢さ
2.0TFSIエンジンは最高出力211ps/6000rpm、最大トルク350Nm /1500-4200rpmを発生する。そして7速Sトロニックを介し、クワトロシステムでトルクを4輪に適切に配分する。そのトルク配分は40:60を標準に、65:35から15:80まで可変する。

車両重量は1615kgと同じ仕様のA4アバントよりもわずかに重いが、優れた空力特性によりカタログ上の最高速度は241km/h、0→100km/h加速は6.6秒と速い。

走り出しても、とても軽快なことはアクセルペダルに軽く足を乗せただけ抵抗なく前進することからもわかる。かなりの速度で流れるイタリアのアウトストラーダの本線進入も難なく成功する。そしてそのまま加速すると、アウトストラーダの制限速度130km/hにすぐさま到達し、全くストレスなく巡航する。長いホイールベースから走りは実に安定していて、ピッチングも少ない。ロングツーリングはA5スポーツバックの得意科目になるだろう。

その後、撮影のために一般道路とまるでラリーのスペシャルステージのようなワインディングロードに入ったが、このコースではオプションのアウディドライブセレクトを「ダイナミック」に選択してスポーツ走行を楽しむこともできた。

アウディA5スポーツバックは、セダンではフォーマル過ぎて、またアバントではダイナミックさに欠けるという贅沢なユーザーにぴったりである。しかも価格はA5クーペより700ユーロ(約9万5000円:当時のレート)安く、A4アバントより400ユーロ(約5万5000円)しか高くない。日本への導入時期や価格はまだ決まっていない。(文:木村好宏)

アウディA5 スポーツバック 2.0TFSI クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4711×1854×1391mm
●ホイールベース:2810mm
●車両重量:1615kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:155kW(211ps)/4300-6000rpm
●最大トルク:350Nm/1500-4200rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●EU総合燃費:13.3km/L
●タイヤサイズ:225/50R17
●0→100km/h加速:6.6秒
●最高速:241km/h 
※EU準拠

[ アルバム : アウディA5 スポーツバック はオリジナルサイトでご覧ください ]

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