これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、日常生活を拡張してくれる便利で使える軽自動車、ウェイクを取り上げる。
ダイハツ ウェイクは良好な視界と広大な空間によって軽自動車規格の可能性を拡張したモデル!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】
文/フォッケウルフ、写真/ダイハツ
【画像ギャラリー】ミラクルラゲージという実用的で柔軟な荷室設計を持つスーパーハイトワゴン軽、ウェイクの写真をもっと見る!(9枚)
生活を広げるための道具としての視点を色濃く反映
ライフスタイルの多様化は、軽自動車市場においても同様に影響しており、維持費が安い移動手段という利点だけでなく、ライフツールとしての進化が求められている。
ダイハツが市場へ投入した「ウェイク」は、そうした軽自動車市場の変化を敏感に察知したモデルであり、スーパーハイルーフの軽自動車がウケていた要因である広さと使い勝手、居住性といった価値を再解釈することで新ジャンルを打ち立てた。
タントのミラクルオープンドアは採用されなかったが、より高い室内高と広い荷室を持つスーパーハイトワゴンとして2014年に発売された
ウェイクは、視界性の向上と荷室空間の最大化をコアバリューとして開発され、軽自動車の既成概念の刷新を試みたモデルである。日常使用はもちろん、郊外でのアウトドアやレジャー活動といった多彩なライフシーンに柔軟に対応可能な多用途軽自動車という新たな価値提案を体現している。
ユニークなのは開発初期段階から、想定される45の具体的な使用シーンに基づくパッケージング最適化を実施したことだ。
これにより、運転時の見通しのよさと安全性を高次元で両立した「ファインビジョン」、および軽自動車規格内でトップクラスとなる室内高・荷室容量を誇る「ウルトラスペース」を実現する。単なる広さではなく、車内での作業性や積載効率といった実用機能の拡充に主眼が置かれている点が特徴すべきポイントだ。
さらに注目すべきは、特に利用頻度が高いと見込まれるキャンプ、釣り、登山、サイクリング、サーフィン、スノースポーツという6つのレジャージャンルの“プロフェッショナルユーザーと開発段階から意見交換を行い、現場でのニーズを直接反映させた点にある。これによりラゲッジまわりの実用装備やオプション設定が極めて高い現実適合性を備えることとなった。
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「軽最大」と「多目的性」の融合に注力したパッケージング哲学
ウェイク最大の特長として、全高1835mmという規格上限ギリギリのサイズを活かした空間構造が挙げられる。室内高1455mmという圧倒的な縦空間は、それまでのスーパーハイルーフタイプを凌駕するもので、車内での着替えや直立姿勢での作業、車中泊といった用途への対応を可能にした。
圧倒的な室内空間の広さは「レジャー特化車両」としての使い勝手を飛躍的に向上させる要素にもなった。だからこそ、企画段階から45の使用シーンを想定し、アウトドア分野におけるレジャープロフェッショナルの意見を積極的に盛り込むことができたわけだ。
視界性にも徹底的にこだわっている。「ファインビジョン」と呼ばれる設計思想では、目線高を1387mmという高いポジションで着座できるよう設定した。これはスーパーハイトワゴンのなかでもでもトップレベルで、市街地走行での信号認識から郊外の長距離走行まで、優れた視界確保によってドライバーの負荷を大きく軽減する。
また見通しのよさは、運転の上手さを補完し、女性ドライバーや高齢者にも安心感をもたらすという、心理的効果をもたらした。
後方から見てもかなりスクエア感が押し出されたデザイン。前後のバンパーコーナーに大きな面取り加工を施すことで、重厚な「塊感」を表現している
荷室の構造についても既存の軽自動車とは明らかに異なる特徴を有していた。ボディサイズに制約があるので、4名乗車時のスペースについては他の軽自動車とほぼ同様となるが、ウェイクの荷室フロア下には、約90Lという大容量のアンダートランクが備わっている。
2Lペットボトルが24本収容できる深さを持ち、リアシートを畳まずに長尺物を立てて積載できる。さらに、上下2段調節式のデッキボードを活用することで、荷物の形状や使用シーンに応じたフレキシブルな収納を可能としている。
加えて、撥水加工されたフルファブリックシートやビニール加工されたシート背面など、アウトドアでの使用を前提としたタフな作り込みもなされている。
また、リアゲート開口部にはユーティリティフックや固定ベルトも用意され、キャンプギアやスポーツ用品の積載をしっかりサポート。まさに移動するベースキャンプとしての役割が担えるほど頼もしい使い勝手を実現していた。
スーパーハイルーフの弱点を克服して走りはファン&リラックス
スーパーハイルーフタイプは操縦安定性が不安定になりがち、という走りにおいて全高が高いクルマならでは課題がある。この要件をクリアするためにウェイクは工夫が凝らされている。
直進安定性の強化という点では、車体剛性の向上を図ったうえにアブソーバーロッドのサイズアップやスタビライザーを標準装備するといった策が施された。さらに、ダイハツ車として初めて空力フィンを導入した。
また、全高はタント比でプラス85mmながら、重心高はプラス10mmに抑制するなど、物理的な安定性にも配慮された構造としたことも操縦安定性の確保に効いている。静粛性についても、ダッシュパネルや吸遮音材の配置最適化など車内快適性をトータルで見直しており、実用上の静かさが確保されている。
燃費性能は25.4km/L(JC08モード)を達成し、e:Sテクノロジーを導入したことも功を奏し、実用燃費と加速感のバランスを両立している。
安全装備では「スマートアシスト」を搭載し、低速衝突回避支援や誤発進抑制などの基本機能を標準で装備した。全車にVSC、TRC、サイドエアバッグを装備するなど、当時の軽自動車クラスのなかでは非常に充実した内容となっている。
全高1835mm、室内高1455mmという優れたパッケージングにより、高効率な空間設計を実現。上下方向に余裕があるキャビン構造と最適化されたフロア設計により、大人4名が快適に乗車できる居住性と、車内での着替えなどにも対応可能な実用性を両立している
ウェイクは「軽自動車の新しい使い方」を提示する新たなスーパーハイルーフタイプとして注目された。特に空間効率の最適化とレジャー志向の機能性において、それまでの軽自動車市場では成し得なかった高次元の両立を実現していた。
特定用途に最適化された開発プロセスは、その後の軽自動車のあり方、さらには小型モビリティの発展にも一石を投じるもので、ウェイクが登場したあと、ホンダN-VAN、スズキ・スペーシアベースといった実用特化の軽自動車が相次いで市場へ投入されることになる。
ウェイクはライフスタイルに寄り添い、クルマが日常を拡張するツールになるという思想を体現したモデルと言えるだろう。
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みんなのコメント
ウエイクの記事があると、メカ音痴の人は「直ぐ転びそう」というけど、ヴォルテックスジェネレータ(渦流生成器、トヨタアクアとかにも付いてますよ)がサイドミラーに二つ、リアランプに四つ付いているから走行安定性はいいんですよね。
軽1BOXに比べて縦に多く荷物が積めるし、特にリアのアンダートランク部は高さ1485㎜もあるから使い勝手が良かった。
今年9年車検で買い替えを検討する時期になったけれども、二代目ウエイクは無いのでホント悩んでいます。