■ザ・フェラーリの3台の行方はいかに?
オークションでの落札価格は、市場での評価の指標となり、日本国内で中古車を買う際にも参考になる。そしてその市場評価の基準となるのが、フェラーリの落札価格であったりする。
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2021年1月22日、クラシックカー/コレクターズカーのオークションハウス最大手のRMサザビーズ北米本社が、アメリカ・アリゾナ州スコッチデールにて開催した大規模オークション「ARIZONA」に、新旧数多くのフェラーリを出品したが、どれほどのプライスだったのかをレポートしよう。
●2003 フェラーリ「エンツォ」
フェラーリの公道走行可能モデルの最上位に位置するのが、スペチアーレモデルと呼ばれるものだ。一般に市販されているモデルであるが、新車で購入するには、ほかにもフェラーリをコレクションしていなければならないなど、敷居の高いモデルである。
代表的なスペチアーレとしては、「288GTO」「F40」「ラ フェラーリ」などがあるが、それらすべてコレクションモデルとして、億超えは当たり前となっている。
オークションに登場したイエローカラーの「エンツォ」は、アメリカ・ノースカロライナ州のカスタマーが最初のオーナーであった。このカスタマーは、ほかにも「512S」、「312P」、「333SP」、「250GT SWB」などの貴重なフェラーリをコレクションしていたので、当然のように新車でエンツォを手に入れることができたのである。
5300マイル(約8480km)を走行後、このエンツォはセカンドオーナーの手に渡り。現在1万1400マイル(約1万8240km)走行している。
予想落札価格は225万-250万ドル(邦貨換算約2億3000万円-2億6000万円)であったが、どうやら流札となった模様で、現在235万ドル(邦貨換算約2億4700万円)で継続販売中だ。
●1987 フェラーリ「テスタロッサ・スパイダー by ストラマン」
バブル時代に日本で憧れのフェラーリといえば「F40」と「テスタロッサ」であった。テスタロッサにはカタログモデルとしてスパイダーは存在しないのだが、フェラーリおよびピニンファリーナのオフィシャルとして、1台だけが製作されたとされている。
故ジャンニ・アニエッリが、フィアット会長就任20周年を記念して特注したスパイダーで、手がけたのはピニンファリーナである。
オークションに出品されたのは、この由緒正しきスパイダーではなく、1987年型のスタンダード・テスタロッサをベースに、北米ストラマン社がモディファイしたスパイダーである。
そのため、評価は大きく分かれるところではあるが、エスティメートは12万5000ドル-17万5000ドル(邦貨換算約1300万円-約1815万円)と、やや強気の値付けであった。
注目された落札価格は、16万8000ドル(邦貨換算約1760万円)と、現在市場に出回っているテスタロッサのもっとも高い価格帯であった。もし、これがピニンファリーナ製の由緒正しい1台であったら、いったいどれくらい高額になるのだろうか。
●1984 フェラーリ「512BBi」
1970年代のスーパーカーブームのとき、子ども達の間では、「BB派」か「カウンタック派」かに分かれるほど大人気だったフェラーリ「365GT4/BB」。その後「512BB」となり、そのインジェクションモデルの「512BBi」へとマイナーチェンジを経て、1980年代半ばまで生産された。
ボディ下部がブラックに塗られたツートーンではなく、ボディ同色となっているのも512BBiの外観上の特徴であるだろう。1990年代初頭、渋谷西武百貨店前の駐車スペースに路駐されていたりするなど、テスタロッサとともに、バブリーな象徴として街中でよく目撃されたものだ。
オークションに登場したのは、この最終モデルに近い1984年の512BBiである。最初にカナダの著名なコレクターの元に渡り、16年間大切にされた履歴が残っている。この間に900万円以上かけて整備されている。
その後スイスに渡り、さらに100万円ほどかけてメンテナンスが施され、今回の出品となった。走行距離は約2万4200kmの512BBiに付けられたエスティメートは、25万-30万ドル(邦貨換算約2600万-3100万円)であったが、残念ながらその額を下回る23万ドル(邦貨換算約2400万円)であった。同時期の「カウンタックLP5000S」と比べると、若干安い相場のようである。
■穴場物件が高騰、クラシックは堅調なスタート
●2000 フェラーリ「550マラネロ」/2001 フェラーリ「550バルケッタ・ピニンファリーナ」
RMサザビーズ主催の「ARIZONA」オークションには、2台の興味深い「550」も出品された。1台は当時の定番ともいえるタンレザーのインテリアカラーにロッソ・コルサのエクステリア・カラーの「550マラネロ」だ。トランスミッションは6速MTであり、悪名高きF1マチックでないので不安材料がひとつ回避された1台である。
この定番中の定番である550マラネロに付けられたエスティメートは、15万-20万ドル(邦貨換算約1550万円-2070万円)であったが、それを大きく上回る25万7600ドル(邦貨換算約2700万円)での落札であった。
そしてもう1台の550は、2000年にデビューしたオープン仕様となる「550バルケッタ・ピニンファリーナ」である。448台限定で生産された550バルケッタ・ピニンファリーナというだけでも希少価値があるが、さらにロッド・スチュワートがかつて所有していた個体そのものであったのだ
この550バルケッタ・ピニンファリーナには、30万-35万ドル(同3100万円-3600万円)のエスティメート(予想落札価格)が掲げられていたが、落札価格は32万9500ドル(邦貨換算約3465万円)であった。
いわゆるスタンダードな550マラネロが予想以上の価格であったのに対して、限定モデルでありロッド・スチュワートの元愛車というヒストリーのある550バルケッタ・ピニンファリーナが辛うじてエスティメートを上回るプライスだったのがとても印象的であった。
550マラネロは、比較的安価なプライスで手に入れやすい1台であったが、MT仕様に限っては、底値から徐々に上向きの領域に入ったのかもしれない。512BBiよりも高額であったのにも驚かされたが、今後のオークション・マーケットでの動向に注目される。
●1954 フェラーリ「375アメリカ クーペ by ヴィニャーレ」/1956 フェラーリ「250GT アロイ クーペ by ボアーノ」
1950年代から1960年代のクラシック・フェラーリは、オークション・マーケットでも常に注目を集めるクルマたちだ。オークションでもっとも高値で落札されたとされる「250GTO」に至っては、50億円近い落札価格であり、これらクラシック・フェラーリの落札価格の動向が、クラシックカー全般の価格の指標ともなっているのである。
今回の「ARIZONA」には、こうした1950年代のレアなクラシック・フェラーリが2台出品されている。
1台は、フェラーリ「375アメリカ」にヴィニャーレが架装した2台のうちの1台、シャシNo「0327 AL」である。もう1台の「0337 AL」とは、ファストバックのプロポーションこそ共通するものの、ノーズとヘッドライトの処理などのディテールが大きく異なるため、事実上ワンオフモデルといっていい。
エスティメートは240万ドル-340万ドル(邦貨換算約2億5000万-3億5500万円)であったが、255万7000ドル、日本円に換算すれば約2億6700万円で落札される結果となった。実はこの個体は、2011年の「MONTLEY」でも出品されており、その時の落札価格は198万ドル(邦貨換算約2億800万円)であった。コロナ禍という状況ではあったが、ワンオフ物のクラシック・フェラーリが、確実に値が上がっている一例である。
もう1台のクラシック・フェラーリは、カロッツェリア「ボアーノ」が、フェラーリ「250GT」用シャシに軽合金製ボディを架装した豪奢なGTクーペ「250GT アロイ クーペ by ボアーノ」である。
この250GTボアーノは、フェラーリ・クラシケの認証も取得済みで、内装なども新車のような状態にレストア済みの1台である。120万-140万ドルのエスティメートに対して、135万2500ドル、日本円に換算すれば約1億4200万円で無事に落札された。
* * *
世界規模のコロナ禍の状況のなか、オークションも対面式からオンライン方式とシフトしており、オークション主催者だけでなく入札者側もだいぶ新たなオークションスタイルに慣れてきたようだ。フェラーリに関しては大きく落札価格を下回ることなく、堅調であることが示された「ARIZONA」オークションであった。
社会情勢が大きく変化する際には、貴重なクルマがオークション・マーケットに姿を現すことも珍しくない。2021年のオークションに、どんなクルマが出品されるか非常に期待の持てる結果だったといえるだろう。
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みんなのコメント
単に、近年まれに見るほど、新車状態に近くきれいな状態のマラネロであったことが評価されたに過ぎない。
コロナで世界的に金融緩和が再度進んでいるので、 エキゾチックカーのマーケットもここらで底打ちして、再度高値トライになると思います。