■トヨタ・ホンダ・日産の異なる高級ブランド戦略
トヨタが展開している高級ブランド「レクサス」は、2005年に国内展開を開始してから2020年で15年目を迎えます。
一方で、ホンダは「アキュラ」、日産は「インフィニティ」を海外で展開していますが、なぜレクサスのように日本で展開しないのでしょうか。
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1989年から海外で展開しているレクサスは、2020年2月3日に「2019年の世界新車販売実績」として、総販売台数が過去最高の76万5330台(前年比10%増)と発表しています。
もっとも多い地域は、北米市場の約32万5000台となり、日本市場は約6万2000台(前年比13%増)と大きな差はあるものの、2005年から15年で培ってきたブランド戦略が一定の成果を上げているようです。
また、近年では2018年に「ES」や「UX」、2019年に「RC F」と「RX」、2020年は「LC Convertible」を発売するなど新型モデルやフルモデルチェンジ、ビッグマイナーチェンジなどラインナップの拡充を実施したことも、販売台数が増加した要因だといえます。
また、2020年秋には「IS」、冬には「LS」の発売が予定されるなどラインナップ刷新がコンスタントにおこなわれています。
このような国内販売が好調なレクサスに対して、ホンダのアキュラと日産のインフィニティは、2020年8月現在において日本市場で展開されていません。
アキュラはレクサス、インフィニティより3年早い1986年に北米で展開開始。当初は上級セダンのアキュラ「レジェンド」、コンパクトなスポーティーカーのアキュラ「インテグラ」をラインナップ。
最近のアキュラもインフィニティ同様に北米で展開されるミドルセダン「TLX」をマイナーチェンジし、約7年ぶりにスポーティグレード「タイプS」を復活させるなど精力的な動きを見せています。
一方のインフィニティは、レクサスと同じ1989年に北米で展開開始。この年には最上級セダンのインフィニティ「Q45」が発売され、初代レクサス「LS」(日本名:セルシオ)のライバル車として人気を博し、日本国内でも日産「インフィニティ Q45」として販売されました。
最近のインフィニティは、2020年秋に新型SUVクーペ「QX55」をお披露目することを明らかにしています。
このように、レクサス、アキュラ、インフィニティはそれぞれ海外市場で新型モデル投入やフルモデルチェンジなどをおこないブランド展開を継続していますが、なぜ日本市場にはレクサスだけが展開されているのでしょうか。
かつてホンダは、日本にアキュラを導入する計画立てていました。
2005年12月に、ホンダは当時の国内販売チャネル「プリモ」「クリオ」「ベルノ」を2006年3月に「ホンダ」チャネルへ統合することに合わせて、アキュラを2008年秋に国内へ導入すると発表していました。
当時の導入背景としてホンダは「アキュラブランド商品を通じた新たな喜びの創造、提供による、国内四輪の更なる発展と飛躍を目指した販売網の再構築、強化するため」と話しています。
しかし、2008年の12月には「2010年を目処に導入を予定していたアキュラについては、昨今の環境変化を鑑み、計画を白紙に戻す」と説明。
これは、当時の国内販売において、軽自動車や小型車へのシフトが進んでいた市場状況が大きな要因とされています。
また、2008年に北米を中心に起こったリーマンショックにより、世界各国のさまざま企業が大きな打撃を受けたこともアキュラブランドの導入が白紙になった要素だと考えられます。
一方のインフィニティブランドについて、日産関係者は次のように話します。
「新しいブランドを導入するには、販売網の構築やそれに伴うスタッフの育成など時間とコストが掛かります。
また、過去に何度かインフィニティモデルを日本で発売した実績や日本市場の動向を踏まえた結果としてブランドの導入には至らなかったのだと思います」
※ ※ ※
クルマに限らず海外で成功している物が日本で成功するとは限りません。
また、最近ではユーザーのニーズが細分化され、国や地域によって異なるモデルを生産するほど同じブランドでもラインナップに差が生じています。
そのため、かつてのリーマンショック、そして現在のコロナ禍において、はますます新しいブランドを展開するということは難しいのかもしれません。
■ブランド展開していないけど、日本でも買えた?
日本でブランド展開されていないアキュラとインフィニティですが、北米でアキュラブランドとして販売される「NSX」を日本ではホンダ車として扱っています。
また、日産は「スカイライン」、「フーガ」にインフィニティのエンブレムを装着して発売していました。
これらはユーザーにどのような印象を与えたのでしょうか。日産販売店スタッフは、スカイラインのインフィニティエンブレムへの反応について以下のように話しています。
「エンブレムについて、お客さまからの反応は決して悪いものではありませんでした。
しかし、それを目当てにお問い合わせをいただくといったことはありません。
日産のものに戻した理由としては、お客さまから不評だったというわけではなく、ブランド価値を大切にしようということで、再び当ブランドのエンブレムを採用したと聞いています」
アキュラについてホンダが問い合わせを受けることはあるのでしょうか。ホンダの販売店スタッフは以下のように話しています。
「アキュラについてのお問い合わせは過去に多数いただいており、とくに弊社でも取り扱っているNSXの購入を検討されているお客さまが多かったです。
しかし、アキュラのモデルに対応した特別な技術を持った整備士がいる店舗でしか販売をおこなっていないので、当店では取り扱いがありません。
そのため、当店にNSXのお問い合わせをしていただいたお客さまには、その整備士がいる店舗をご紹介しています」
また、別のホンダ販売店によれば、「北米でTLXが新しくなり『タイプS』が復活するというニュースがあった際には、一部のお客さまから『アキュラは日本に来ないのか』という問い合わせをいくつか頂きました。
やはりホンダ車をお乗りの人では気になるお客さまもいるようです」
※ ※ ※
かつての日本市場では、ほとんどの国産メーカーが販売チャネルを複数展開しており、チャネル専用モデルも用意されていました。
現在では、トヨタが2020年5月から全販売店で全車種を取り扱うことにより、チャネル別モデルは廃止されています。
今後の日本市場は各社でラインナップの「選択と集中」が余儀なくされるといい、その流れからするとアキュラとインフィニティの正式導入は幻となるかもしれません。
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