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スバル「フォレスター」初のHV採用でも新型で「ハイブリッド」と言わない理由とは

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スバル「フォレスター」初のHV採用でも新型で「ハイブリッド」と言わない理由とは

■システムはハイブリッド、『e-BOXER』という独自名称で認知度を高める!

 突然ですが、SUBARUでもっとも売れている車種は何だかご存知でしょうか? 実はSUVの「フォレスター」なのです。そんなフォレスターがフルモデルチェンジして5代目に進化。注目はやはりフォレスター初となるハイブリッドモデルが用意されたことではないでしょうか。しかし、興味深いのはスバルとしては基本的に「ハイブリッド」という表記を使っていません。

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 グレード名に「ハイブリッド」と入らないのはもちろん、カタログを見てもスペック表の「主要燃費向上対策」の欄にしか「ハイブリッド」という表記がありません。これは基本的に同様のシステムを使っていて、ハイブリッドを全面的に押し出していた「XVハイブリッド」や「インプレッサスポーツ ハイブリッド」と対照的です。どうしてでしょうか?

 この件についてSUBARU広報部は「理由は広告・宣伝などのイメージ戦略における表現的なものです」と言います。

「もちろんシステムとしてはハイブリッドですが、『e-BOXER』という独自名称で認知度を高めていこうと考えています」(広報部)。

 また、新型フォレスターのエンジニアは「ハイブリッドといえば多くの人はモーター走行領域の広いトヨタのハイブリッドの運転感覚をイメージすると思いますが、それとは走行感覚が違うことを理解してもらうため(ハイブリッドと表現しない)」ともいいます。

 そんな新型フォレスターにさっそくテストコースで試乗してきたので、その印象をお伝えしましょう。

■マウンテンバイク用のオフロードコースで新型の悪路走破性をチェック

 最初の試乗ステージは、マウンテンバイク用のコースを利用したオフロード。悪路性能を気にしていない名ばかりのSUVなら入るのもはばかられるような起伏に富んだ、しかも難易度を高めるために水をまいてわざわざぬかるんだ状態にした路面でしたが、新型フォレスターは難なくクリアしました。

 これは最低地上高220mmを確保したロードクリアランスなど巧みな車体設計やスバル自慢のシンメトリカルAWD(新型は全車アクティブトルクスプリット式で最大50%のトルクを後輪へ送る)を土台とし、電子制御のモードを切り替えて悪路走行時のトラクション能力を高める「X-MODE」の搭載で完成させたもの。先代ではオン/オフしかなかった「X-MODE」ですが、新型になって雪道や砂利道など滑りやすい路面を走行する「SNOW・DIRT」と深雪やぬかるみなどタイヤが埋まってしまうようなより険しい路面に対応する「DEEP SNOW・MAD」の2モード選択型に進化し、路面に応じてモードを選べるのがポイントです。

 実際に激しい悪路を走ると、タイヤが滑ったり浮いた状態となって空転をはじめた際に、車両がそれを感知してスリップしないタイヤへトルクを送り、グググっと前に進んでいくのがよくわかりました。「自分ひとりならスタックが怖くて入れない」と思うような険しいコースを簡単にクリアできたのだから驚きです。

■先代と比較しながら新型をオンロードでもチェック

 いっぽうで舗装路は、最高速度が100km/hほどに到達する峠道風のコースでハンドリング性能と動力性能をチェックしました。今回は先代と比較しながら新型を試したのですが、まず気が付いたのは乗員の耳に入る騒音。新型は全体に静かになっているのですが、特に耳障りな音が消えて雑味のない音質に変化したのを感じました。

 そして素晴らしいのは、SUVとは思えない安定感。速度を高めて走っても、まるで背の低いクルマのようにスイスイ走れるのだから驚きです。もちろん先代フォレスターも高いオンロード性能を持っていましたが、進化を実感したのは旋回中。思ったよりも曲がりこんでいてハンドルを切り足すような状況でも、新型はより素直に反応してくれるのです。

 そんなハンドリング性能の向上には、インプレッサやXVに続いて採用された「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」と呼ぶ次世代プラットフォームが貢献。路面をしっかりとらえるので、直進時も旋回時もハンドルの微修正が少ないことも実感できました。

 パワートレインは、新型ではターボがなくなり2リッター自然吸気エンジン+モーターのハイブリッド(スバルは「e-BOXER」と呼ぶ)、もしくは2.5リッター自然吸気エンジンとなります。

 前者は絶対的なピークパワーこそ2.5リッターに届かないものの、発進加速や低速コーナー脱出時の立ち上がりなどにおいてモーターがトルクを加えてサポートすることによるダイレクト感のある速度上昇が好感触です。

 ただしモーターはあまり巨力なタイプではないのでトヨタ式ハイブリッドなどに比べると電気で走っている感はありません。あくまでトルクが増したエンジンという印象でした。

 ちなみにこの「e-BOXER」に使われているモーターやシステムの基本的な構成はかつて「VXハイブリッド」などに搭載していたものと同じですが、バッテリーはニッケル水素からリチウムイオン化されて電気の出し入れの速さと電圧がアップしています。

 カタログに記載されているモーター出力は以前のXVハイブリッドと同じ10kWですが、担当エンジニアによると「実際には2割高まった電圧により最高で12kWくらいまで発生する」とのこと。そのぶんパワーアシスト感が増しています。またアシスト領域やモーター走行領域も増えました。

■絶対的なパワー感の2.5リッターと軽快なフィーリングのHV

 対して2.5リッターエンジンは、高回転での絶対的な力があります。だからアクセルを踏み込んだ状態で頼りがいがあり、車速が高まっても動力性能がしっかり盛り上がります。なので幹線道路や高速道路の巡行、そして山道をハイペースで走る人にはハイブリッドよりも向いていると感じました。

 いっぽうで停止や発進、中間加速を多用するような走行シーンではモーターアシストを加えたエンジンの回転上昇の軽快なフィーリングが良いハイブリッドのほうが魅力だと筆者(工藤貴宏)は感じました。またハイブリッドは減速時に回生ブレーキでエネルギーを回収したりエンジンを止めてモーターで走るなど燃費向上効果があるのもポイントです。

 ガソリン車の最上級グレード「Premium」とハイブリッドの「Advance」は免税措置などを考えると実際の購入総額はほぼ同じ。どんなシーンで走ることが多いかを考えて選べばいいでしょう。

 いずれにせよ、新型フォレスターはガソリン車もハイブリッド車でも、シーンを問わず気持ちよく走るクルマです。先代に比べて後席も荷室も広くなったので実用性も高まり、ますます“使えるクルマ”になったことが実車に触れてよくわかりました。

 ちなみに「e-BOXER」は、アクセルを踏み込まなければ平たん路では約40km/hまで、下り坂は80km/h程度までエンジンを止めてモーターだけで走ることができます。グレード名やカタログにはそう表記がなくても、立派なハイブリッドモデルなのです。

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