現在、マツダが有するガソリンエンジンの中でもっともパワフルな2.5L直4ターボエンジン。日本では人気SUVのCX-5とCX-8に先行して搭載されていたが、新たにマツダ6にも採用された。より軽量かつ低重心であるモデルに搭載されれば、その走りへの期待が高まるのも当然だろう。(Motor Magazine 2019年12月号より)
マイナーチェンジを機にアテンザ改めマツダ6に
マツダは今、国内で販売している各車種のモデルネームを順次、海外で使っている数字名称に切り替えている。第一弾が2019年5月登場の「マツダ3」で、その先代モデル名はアクセラだ。
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そして第二弾が、8月から販売が始まった「マツダ6」だ。それまでアテンザと呼ばれていたセダンとワゴンが、マイナーチェンジを機に、この名に改まった。
マツダ6でニュースと言えるのが「スカイアクティブG2.5T」と呼ぶガソリンターボエンジン車の新設定である。そのマツダ6ワゴンTSパッケージを、ワゴン作りに定評あるボルボV60 T5インスクリプションと一緒に走らせてみた。
V60 T5の2Lエンジンはシングルターボで254ps/350Nmという仕様。マツダ6搭載のスカイアクティブG2.5Tは排気量を2.5Lに設定、マツダ開発陣によれば4気筒ガソリンエンジンはこのあたりにバランスの良いポイントがあるという。
パワースペックは230ps/420Nm。かなり強力な最大トルクで、その発生回転数も2000rpmと低い。マツダでは、この特性を「4L級のV8自然吸気エンジン並み」と表現している。
走らせた印象も、まさにそのとおり。V60 T5もターボエンジンの中ではレスポンスは良い方だが、マツダの2.5Tは輪をかけて低速域からトルクフル。ターボラグなど、まるっきり感じられない。力強く、滑らかに押し出されるかのような走行感覚は、大排気量の自然吸気エンジン車に近い。
しかもこのエンジン、アクセルペ ダルを踏み込むと刺激的な加速感も楽しめる。ガソリンエンジンらしく回転の上昇は極めて軽やかで、リミットの6000rpmあたりまでストレスなく回る。また、その時に聞こえてくるエンジンサウンドもなかなかの快音だ。
100km/h巡航時のエンジン回転数は2100rpmとやや高めだが、燃費はWLTCモードで12.4km/Lを確保。何より走りの力強さ、滑らかさを考えれば、経済性も含めて、かなり総合力の高い新グレードだと言える。
しなやかな乗り心地も特徴。内外装の質感向上を実感
フットワークも上々だ。アテンザ時代の2018年5月に受けた改良で、ボディ剛性の向上やステアリングギアマウントの見直し、前後サスペンション設定の刷新などによって、動的な質感がかなり高められた。さらに、乗り心地が劇的にしなやかになったことも印象的であった。そうした優れた持ち味は、最新のマツダ6でも健在だったというわけである。
加えて、今回のマイナーチェンジではエンジンのトルク制御やブレーキの個別制御によって4輪の接地荷重を最適化してスムーズな車両挙動を実現する「Gベクタリングコントロールプラス」を全車に標準装備としている。市街地での取りまわしから、ワインディングロードでのコーナリングまで、クルマの挙動が素直かつ正確で極めて安心して走ることができた。この点ではV60をわずかにリードしていると感じたほどだ。
そしてワゴン車としての魅力だが、今回同行したボルボV60は、北欧生まれを強調した独特の内外装により、プレミアムブランドに相応しい高い質感が表現されていた。マツダ6ゴンも抑揚の効いたダイナミックなフォルムは依然として魅力的で、25T Sパッケージではウルトラスエード地によるブラックインテリアも採用、かなり健闘していると感じた。
ワゴン車で重視されるラゲッジルーム容量は、カタログ値でマツダ6ワゴンが506/1648L、V60は529/1441L。標準状態ではV60が、後席を畳んだ場合はマツダ6が上回る。
ただし、いずれも堂々たる体躯のDセグメントワゴンゆえ、キャビンの居住性も含めてその実力は甲乙つけにくいレベルにある。(文:石川芳雄)
■マツダ6ワゴン25T Sパッケージ 主要諸元
●全長×全幅×全高=4805×1840×1480mm
●ホイールベース=27500mm
●車両重量=1590kg
●エンジン= 直4DOHCターボ
●排気量=2488cc
●最高出力=230ps/4200rpm
●最大トルク=420Nm/2000rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=6速AT
●車両価格(税込)=431万7500円
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