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【レクサスLC詳細解説】新サスペンションがもたらした走りとデザインの両立

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【レクサスLC詳細解説】新サスペンションがもたらした走りとデザインの両立

 低フードかつ大径タイヤでもストロークを確保するべく開発

 LCの開発当初は、低いフード高と21インチの大径タイヤの組み合わせというデザインはスタイリッシュでも、サスペンションが収まらない! と危惧されるほどだったという。そこで、新たに開発されたのがフロントのハイマウントマルチリンクサスペンションだ。

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 LCの低フードでタイヤハウスの上下寸法に制限があるところに、大径タイヤを入れると、これまでのAアームアッパー式のダブルウイッシュボーンでは、サスペンションストロークがなくなってしまう。それは、タイヤの上側にアッパー側のボールジョイントがあり、ただでさえタイヤ上側の空間がないところにアームの可動域を設けるとストローク範囲が極端に狭くなってしまうからだ。

 だからといって、レーシングカーに使われるようなインホイール式のダブルウイッシュボーンは、軽量でバウンドストロークが小さくてもよいスポーツカーならともかく、車重のあるラグジュアリーカーには使えない。それは、インホイール型では上下のリンク取り付け部の間隔が短いため、タイヤの横力を受け止めるには固いブッシュが必要となり、乗り心地が悪化してしまうからである。

 サスペンションの上下アームはボディに対してできるだけ間隔を空けて取り付けたほうが、同じ横力を受けた際にはブッシュのたわみが少なくなる。つまりブッシュを柔らかくしてもタイヤの位置決めが確実にでき、路面からの衝撃吸収性も高くできるのだ。このため、いわゆる一般的なハイマウント型のダブルウィッシュボーンやマルチリンク式の採用は必然となってくる。

 レクサスではダブルジョイント式マルチリンクやハイマウント型のダブルウィッシュボーンを今まで採用してきているが、LCではそれぞれの特徴を活かして進化させたものとなっている。まず、GSのようなタイヤの上にアッパーアームのボールジョイントがあるタイプでは、キングピン軸というステアリングの回転軸は理想的な位置にセットしやすいが、LCの低フードではバウンドストローク自体が確保できない。

 LSは上下のナックル部それぞれにふたつのボールジョイントと、それにつながるアームを配置したミッドマウントマルチリンクだが、アッパーのボールジョイントはタイヤの横になる。これだとワイドタイヤにした場合、タイヤ位置を外に出すしかなく、そのうえキングピン軸とタイヤの中心も離れてしまい、操縦性が悪くなる(キングピンオフセットの増加となる)。

 低いフード高でもサスペンションストロークを確保し、かつ大径ワイドタイヤに対応するために、LCではどうしているのか。アッパーアームはタイヤの直上でも真横でもなく、タイヤ内側の斜め上のショルダー付近にセット。それがミッドマウントに対してハイマウントと呼んでいる理由である。

 さらに、ロワ側も新設計としてダブルジョイントの取り付け部に上下の段差を設けることで、ふたつのボールジョイントの間隔を狭くしている。こうすることで、舵を切ったときのキングピン軸の角度変化が少なくなり、自然なステアフィールを得ることができるようになる。キングピン軸位置が変わると直進位置からステアリングを切ったときに、初めはタイヤの切れ角に対して操舵力が重くなっていくが、あるところから操舵力が一定になって切り足しても手応えに変化がなくなるなど、フィーリング的にはよくない。

 LCでは、ロワ側ボールジョイントの段差構造でボールジョイントの間隔が小さく、リニアなステアフィールを得ることに成功している。この理想的なジオメトリーが実現できたのは、ナックル部の段差加工という特殊な切削が可能となったから。開発の担当者によると、LCのフロントサスペンション開発当初より生産技術のブレークスルーに取り組んだため、量産化に成功できたのだそうだ。

 乗り心地面では、フロント、リヤともに、ストローク量だけでなく、フリクション(摩擦抵抗)低減も実施されている。ボールジョイントは関節部の動き出しにある程度の力が必要だが、ダブルジョイント式マルチリンクとなると、ナックル側で5つのボールジョイントがあるため、動きの渋さが出てしまい、乗り心地が悪化しやすくなる。

 これを解決するためボールジョイント内部のグリースの改良やブッシュ化などで低フリクション化を実施。現在主流のサイドウォール強化型のランフラットタイヤは縦バネが固く、乗り心地が悪化する懸念があるが、最新のランフラットタイヤ技術により、欧州の競車と比べても優れた乗り心地とハンドリング性能の高さを得ている。

 コーナリングでのロールを抑えるためのフロントスタビライザーはロワアームと弓形のリンクを介して取り付けられていて、力点をリンクの中心で作用させるようになっている。この形状により、スタビライザーの作用でアームが捩られることを防いで素直に上下動させるのが狙いだ。なお、LCのスタビライザーバーは新プラットフォームで想定している車種中で最大径がセットされている。

 リヤサスペンションもマルチリンク式で、ジオメトリーの最適配置により高いスタビリティを実現している。アームのアルミ化、低フリクションボールジョイントの採用で、フロントサスペンションと相まって上質な乗り味を実現している。

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