前オーナーは20年以上にわたって所有
2024年7月12日、ボナムズ社がイギリスで開催した「グッドウッド フェスティバル オブ スピード オークション」においてランボルギーニ「カウンタック 25thアニバーサリー」が出品されました。カウンタックの中でも希少な67台しか存在しない右ハンドルのヨーロッパ仕様で、走行距離は1万7601kmと少ない魅力的な1台でした。
「ウルフ・カウンタック」を応用した「LP400S」が9000万円弱で落札! ランボルギーニ本社のポロストリコでレストアされた由緒正しい個体でした
ディアブロが出るまでのつなぎだった……?
1971年にプロトタイプの「LP500」が発表され、1974年に最初のプロダクションモデルである「LP400」が誕生したランボルギーニ「カウンタック」。その後カウンタックは「LP400S」、「LP500S」、「5000クアトロバルボーレ」を経て1988年、ランボルギーニの創立25周年という記念すべき年に、最終的にここで紹介する「25thアニバーサリー」へと進化を遂げる。
ちなみに当時ランボルギーニの経営権を握っていたのは、イタリア移民2世のリー・アイアコッカ率いるクライスラーであり、彼がランボルギーニで求めたのは、じつはカウンタックのさらなる進化型ではなく、完全なブランニューモデルのデビューにあった。
カウンタック 25thアニバーサリーは、後に「ディアブロ」の名を得て誕生する新型車が完成するまでの時間を得るためのモデルであったというのが実際のところだったのだ。
そもそものカウンタックが、パオロ・スタンツァーニのエンジニアリングと、マルチェロ・ガンディーニのスタイリングによって誕生したものであることは良く知られているが、その関係をこのアニバーサリーに置き換えるのならば、それはルイジ・マルミローリとオラチオ・パガーニという組み合わせになる。
パガーニと共同作業でエアロダイナミクスを改善
前作の5000クアトロバルボーレから基本的なメカニズムを流用しているかのように思われる25thアニバーサリーだが、細かくその設計を確認してみると、じつはマルミローリによって新たに変更、改良されたパートは数百にも及ぶことが分かる。
ハンドリングをさらに向上させるためにトレッドはフロントで15mm、リアで25mm拡大され、同時に15インチのOZ製マルチピースホイールを採用。新タイプのギアボックスマウントや触媒の改良。さらにはパガーニとの共同作業によってエアロダイナミクスも大幅に改善された。
キャビンに衝撃吸収材が採用されたほか、パワーシートやパワーウインドウなどを装備することで、実用性を大幅に高めているのも特長だ。エアコンはさらに効率性の高いものに改められている。シート形状もより快適でホールド性に優れたものに変化した。
ミッドに搭載されるエンジンは、5167ccのV型12気筒DOHC 48バルブで、これは5000クアトロバルボーレのそれと変わらない。最高出力の455ps、そして北米市場向けにKジェトロニック仕様を設定したのも同一だ。ちなみに後者では若干のパワー低下は避けられなかった。
現在までのオーナーはわずか4人
パガーニの手によるエクステリアデザインは、最初から欧州仕様、北米仕様のいずれにも適合させることを意識して進められた。結局アメリカの一部の州ではフロントの安全基準を満たすために5マイルバンパーの装着が必要とされたが、リアのバンパースポイラーは安全面でも空力面でも必要にして十分な機能を持ち合わせる。
25thアニバーサリーにはオプションでもリアスポイラーが設定されていないのは、デザイン初期には採用を考えたものの、パガーニ自身がカウンタックのファーストモデルであるLP400への回帰を意識した結果であったとされる。
このような経緯で誕生したカウンタック 25thアニバーサリーは、1988年9月から1990年7月までの間に657台が生産され、一連のカウンタックシリーズの中でも最大のヒット作となった。今回ボナムズ社がグッドウッド フェスティバル オブ スピードに併せて開催したオークションに出品されたモデルは、1989年7月31日にロンドン、メリルボーンのポートマン・ランボルギーニから最初のカスタマーに納車された個体。67台しか存在しない右ハンドルのヨーロッパ仕様である。現在までに4人のオーナーのもとで使用されてきた記録が残るが、前オーナーは20年以上にわたって25thアニバーサリーを所有。現在の走行距離はトータルでも1万7601kmを刻むのみだ。
もちろんメンテナンスもしっかりと受けており、そのコンディションはメカニカルな部分は当然のこと、標準装着されていたアルパイン製のオーディオに至るまで完全な状態を保つ。また最近実施されたメンテナンスには、クラッチ交換などのメニューが含まれているので、落札後はすぐに乗り出せる1台といっても間違いではないだろう。
注目のオークションでは、もちろん落札者は現れたものの、ボナムズ社ではその落札価格は明らかにしていない。最後のカウンタック、そしてこれほどのコンディションを考えれば、その数字はかなり大きなものと想像できるのだが。参考までにそのエスティメート(予想落札価格)は、35万ポンド~45万ポンド(邦貨換算約6897万円~8868万円)に設定されていた。
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