EV購入のカギは充電ステーションの普及
近年大きな注目を浴びている電気自動車(EV)。購入を検討するユーザーが年々増加する一方、航続距離や充電スポットの設置場所によっては、「通勤や行楽地へは行けないのでは?」といった不安も多い。だが、最近のEVは一充電で約400km前後の走行距離を実現。会社や出先に充電設備が増えれば「遠出も十分に可能」となるのだ。
「EQC」というメルセデス・ベンツ初の市販電気自動車【試乗レポート】
ガソリン車以外の購入を検討した人が58%
EVの選択に、いまなお躊躇する人がいるのは致し方ないことだ。タイムズ24のコインパーキングを運営するパーク24は、折に触れタイムズクラブの会員(2019年4月現在で約760万人)にアンケート調査を行い、今年6月にはEVに関する調査結果を公表した。
それによると、ガソリンエンジン車以外の購入の検討をしたことがある人は58%に及び、そのうちハイブリッド車(HV)を検討した人が42%となる最上位で、次いでEVが29%で2位、3位には27%でディーゼル車という順番になった。
*パーク24プレスリリースより
また、「どのようになったらEVを買うか」との問いに、70%が「手ごろな価格になったら」と答え、次いで47%は「充電ステーションが増えたら」、3位には「航続距離に不安がなくなったら」が39%で入っている。
*パーク24プレスリリースより
これらにより、充電場所と後続距離が、相変わらず心配の種であることが見えてくる。
充電設備の軒数はガソリンスタンドとほぼ同数
ところが急速充電器は7700基、普通充電器では2万2500基と整備が進み、充電設備は日本全国で合計3万200基も設置されている(2019年2月末現在 ゼンリン調べ)。これはガソリンスタンドの軒数3万747(2018年3月31日現在 経済産業省発表)にかなり近い数に達しているのだ。
「そうは言っても、見かけたことがない」と不安に思う人は多い。なぜなら、充電設備はSSほど大掛かりでないためだ。意識していれば、高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、市街地では日産や三菱などの販売ディーラー、道の駅、大手スーパーマーケット、あるいはファミリーマートなどのコンビニエンスストアなどに、充電器は設置され、そこには青地に白の線画でEVを描いた看板が出されているのに気づくはずだ。
航続距離は400km前後まで進化
また、EVの航続距離も急速に増加。日産が今年発売したリーフの大容量バッテリー仕様リーフe+(イープラス)は、WLTCモードで458kmを実現している。
また、BMWのi3は360kmであり、現在EVの航続距離は概ね400km前後がひとつの指標となっていると言える。事実、メルセデス・ベンツ初の電気自動車であるEQCでは、同じくWLTCモードで400km(欧州仕様車)とされているのだ。
今日、ディーゼルエンジン車やHVでは、1回の給油で1000kmも走れるクルマがあるが、ひと昔前の国産車がガソリン満タンで走れる距離はやはり400km前後であった。燃費の飛躍的向上や、HV技術の浸透などで給油回数は減っているが、エンジン車に乗っている人であれば、現実的には400km前後を目安に給油している人もいまだに多いと思う。
つまり、EVの走行距離や、充電設備の普及は想像しているよりEVを不便なく使える環境へと近づいているのだ。したがって、「EVが遠出に向かない」と言うことは、すでになくなってきているのではないだろうか。
普通充電器の普及が悩みを解消する
それでも、充電設備の充実はもっと必要だと、私も考えている。ただし、充電時間が短く済むぶん、特殊な機器が必要で導入コストも数百万円台と高い「急速充電器」の増加ではない。
出先にある駐車場などに、200Vの「普通充電器」が当たり前のように設置されることだ。普通充電器なら、一般的な住宅やマンション、商業ビルなどへの設置が可能で、急速充電器に比べ導入コストも安く、設置のハードルはより低くなる。
例えば、勤め先。会社に普通充電器が設置され、自宅と会社で充電できれば日常的な不安は一気に解消される。会社で充電する際の電気料金は、会社が持てばいい。ガソリン代や、通勤の電車・バス代を従業員に支払うより、充電の電気料金の方がずっと安いはずだ。企業にとっても経費で利点になるし、従業員にしてみれば、会社だけで充電で済めば、実質自分で払う燃料代がゼロになる。
次に、スーパーマーケットはもちろん、ファミリーレストランや商業施設、ホテル、公共の体育館や図書館、ゴルフ場など、人が集まる場所の駐車場への普通充電器の設置。用事を済ませている間に充電ができるし、数時間滞在すれば200V(30A)の設備で試算すると、2時間の充電でリーフe+では2割ほどの充電が可能となる。
これは、単純計算で約90km走行できる電気を貯められるということ。ゴルフ場やテーマパークに5時間滞在したとすれば、同じ試算で約225km分の充電が済んでしまう。これなら帰宅するのに十分だろう。
事業者は顧客サービスの一環で導入すべき
サービス事業所側にしてみても、普通充電なら1時間で電力料金は100円ほど。あえて電気代を徴収しなくても、EVで来る顧客へのサービスとしてそれほど高額ではないのではないか。またEVで行きやすい場所という意味で、環境に優しい企業や店であるとの印象を与えることができる。
このように、用事を済ませたり遊んだり買い物をするためEVを止めている間に普通充電ができれば、あえて数が少ない急速充電場所に立ち寄って余計な30分の時間を潰さなくても済む。
少しずつ充電を足せば遠出も可能
エンジン車の給油のように充電を考えると、急速充電器がもっと必要になるかもしれない。だが、クルマで立ち寄る先に普通充電器を設置しておけば、生活や余暇の中から給油のような充電のための時間が消える。
これこそEVでなければ不可能なことであり、遠出の旅であっても、特産の食べ物屋や、土産物屋、そして宿泊先に普通充電器があれば、停車するたびに少しずつ充電を継ぎ足していくことで、旅行の行程に充電時間を予定する必要が無くなるのである。
すでに都市部では、集合住宅や商業ビルの不動産価値を高めるため充電設備をあらかじめ設置する動きがある。同様の意識が、商業施設やレストラン、テーマパーク、旅行業にも広まれば、快適なEVライフを送ることができると思うのだ。
充電設備のさらなる整備は求められる。だが、ガソリンスタンドに替わる急速充電器だけではなく、駐車場に当たり前に整備される普通充電器の普及が待たれるところである。
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