先日、新型クラウンクロスオーバーの2.5Lハイブリッドに試乗した際、思いのほかマイルドな乗り味に、懐かしさを感じつつも、ややがっかりもした。これはこれでクラウンらしいといえばそうなのだが、あまりに普通の出来で、クラウンがこれでいいのか!?? と感じたのだ。
しかし、最上級グレードである、2.4Lターボハイブリッドの「RS」の試乗を終え、新型クラウンクロスオーバーに対する印象はがらりと変わった。この「RS」こそが新型クラウンの真骨頂、筆者ごときでは想像すらできなかった、新生クラウンとしての新たな走りをみせてくれたのだ。筆者が試乗で感じた、新型クラウンクロスオーバー「RS」の実力をご紹介しよう。
「本命はこれだったかー!!」新型クラウンの強いグレード「RS」試乗 2.4LターボHVの実力がすごい
文:吉川賢一
写真:ベストカーWEB編集部/撮影:奥隅圭之
最大の特徴は「デュアルブーストハイブリッドシステム」
まず「RS」の最大の特徴である、デュアルブーストハイブリッドシステムについて、簡単にご紹介しよう。デュアルブーストハイブリッドシステムは、横置きした2.4Lの直4ターボエンジンとフロントモーターの間と、フロントモーターと6速ATの間、という2箇所にクラッチを配置した、いわゆる「パラレルハイブリッド」だ。加速時には、2つのクラッチをつなぎ、エンジン出力に、レスポンスのよいモーター出力が加わることで、「力強くてダイレクトな加速」が可能となる(後述するが、このユニットが凄い!!)。
「いつもの山坂道」(コアなクルマ好きならどこだか一発で分かるフレーズ)を走ってみたところ、その実力がただものでないことがハッキリ判明。このユニットがトヨタの次世代の高性能高級車のスタンダードとなるのか…
フロントモーターはエンジンのパワーアシストに加えて発電機能も備えており、電力をバイポーラ型ニッケル水素バッテリーへといったん充電し、エンジンとのクラッチを切り離して、電動走行も可能。後輪を駆動する新開発のe-Axle(アイシン製のギアトレインとモーター、デンソー製のインバーターが一体になった構造)は、大出力に対応するため水冷式となっており、これまでのE-Four(発熱するため常時作動はできなかった)よりも、作動領域が拡大しているそうだ。
かつて日産フーガハイブリッドが採用していた「1モーター2クラッチ式」ハイブリッドにも似ているが、フーガはプロペラシャフトでの後輪駆動伝達であったので、システム的にはクラウンクロスオーバーRSのほうがはるかに進んでいる。
新型クラウンの未来的で都会的なエクステリアに、ターボエンジンという組み合わせがマッチするのか、と懸念していたが、そんなものは邪推であったと後悔したほど、新型クラウンクロスオーバーRSは、衝撃を受ける走り心地をみせてくれた。
「デュアルブーストハイブリッドシステム」の特徴は、フロントの駆動用モーターとターボエンジンをつなぎ、リアは(従来の空冷式から)水冷式にして大容量モーターを搭載。これで得た力強い前後輪のトルクを100:0から20:80まで状況に応じて配分する。加速がものすごくリニア
アクセルを踏み込むと豹変!!
試乗車として割り振られたのは、2.4Lデュアルブーストハイブリッドの「RS アドバンスド」(税込640万円)。メーカーオプションで、ドライバーサポートパッケージ2、リアサポートパッケージ、電動ムーンルーフ、ブラックプレシャスメタルの特別塗装色など、約90万円が追加された、ゴージャスな仕様だ。
RS専用デザインの切削光輝+ブラック塗装21インチホイールにミシュランeプライマシー(225/45R21)を装着、後輪操舵システムは標準装備、電制ショックアブソーバーも標準装備される。また固定式パドルシフトと、ドライブモードも4+1段階(エコ、ノーマル、スポーツS、スポーツプラス、カスタム)用意されている。
エンジンをかけても唸り音が鳴る、ということもなく、電動走行で静かに走りだす。突起ショックやロードノイズには不利な21インチの大径タイヤを履いているのに、それをいっさい感じさせない、無音に近い発進走行は、「伝統的なクラウンらしさに溢れている」といえる。これらは、2.5Lハイブリッドも同様だ。
「RS」というからには、もうちょっとの迫力あるサウンドや、硬めの乗り心地を期待していたので、少々面食らってしまった。しかしその印象も、アクセルを踏み込むまでだった。
クラウンクロスオーバーRSのインテリア。タンのカラーリングが入ったことで、一気に華やかな印象に変わった。またステリングホイール裏にはダッシュボード固定式のパドルシフトも備わる
いよいよ試乗スタート。ワインディング走行を開始すると、この新型ユニットの特徴が見えてきた。アクセル開度が30パーセント以下であれば、通常の2.5Lハイブリッドと同じような特性だ。50~60km/hで流すワインディングでは、登坂も下りも何のストレスもなく走り、(その後に移動した高速道路での)120km/hでの高速巡行も粛々とこなす。
ただ、それ以上にアクセルを踏み込むと、パワートレインは豹変し、若干荒々しいエンジンサウンドを聞かせてくれる。さらにアクセルを踏み込めば、シフトアップを繰り返しながら、怒涛の加速をする。2.5Lハイブリッドの滑らかさもよいが、このユニットの刺激の強さには、魂を揺さぶられてしまった。
あくまでターボエンジンが駆動を主導し、モーターはエンジンを活かす脇役、といった印象。パドルシフトでのシフトダウン、シフトアップにも即座に反応し、吹けあがるエンジンサウンドを堪能することもできる。走ることが好きな諸氏は笑顔になること間違いない加速フィールが得られる。新型クラウンクロスオーバーの真骨頂は、確実にこの「RS」だ。
コーナリングの超絶気持ちよく、乗り心地も2.5HVより上質
またRSは、2.5Lハイブリッドよりもサスの動きが滑らかで、ダンピングがよく効いている。RSに標準装備される(2.5Lハイブリッドである「X」と「G」は、コンベンショナルなショックアブソーバー)電制ショックアブソーバーの効果であろう。2.5Lハイブリッドでは路面凹凸で跳ね上げられる挙動が出ることがあったが、RSでは上下のボディモーションが小さく抑えられるため(サスが伸びる側、フワつきが抑制される)、路面に張り付いたような印象だ。
試乗の際、新型クラウンクロスオーバーRSで少し跳ね上げられた、荒れた路面があったのだが、試乗会の帰り、乗っていったエアサス付のメルセデスCクラスワゴン(S205)で、同じ路面を通過した際はもっと揺れた。新型クラウンクロスオーバーRSの足のしなやかさを如実に感じた。
また、4輪のトラクションがすこぶる高い。コーナリング中に加速するシーンでも、安心してアクセルペダルを踏み込むことができる。心地よいヨーの変化を感じながら、前へと出るコーナリングは、まるでダウンフォースの効いた(地面に張り付く)後輪駆動のターボ車のようだ。
乗り心地に関しても、突起ショック(縮み側)、フワつき(伸び側)共に、2.5Lハイブリッドよりも優れている。シャシー開発者に確認すると、電制ショックによる恩恵は大きいが、DRS(後輪操舵)によってヨー方向の軽快感と安定感を生み出すことができたので、電制ショック特性はさらにソフトにでき、乗り心地はさらに上質なセッティングができたという。なお、コイルスプリングの硬さはRSと2.5Lハイブリッドで同等(軸重に対してバネ上共振合わせ)にセッティングしているそうだ。
つまり、新型クラウンクロスオーバーのRSは、それまでの「ロイヤル志向の2.5Lハイブリッド、アスリート志向のRS」という括りではなく、どちらの特徴も高いレベルで実現した「オールインワンモデル」といえる。
「ジャーマン3」に勝る出来栄え!!
新型クラウンクロスオーバーの2.5Lハイブリッドである「X」と「G」は税込435~570万円、2.4Lターボハイブリッドである「RS」は605万~640万円と、その価格差は約70万円(上級グレードで比較)にもなるが、乗り味の違いを知ってしまうと、RSしか選べなくなる。それくらいRSの出来が良い。
ショーファードリブンとして使うならば、さらにオプションを装着しないとならないが、後席重視の方にもRSがお薦めだ(電動リクライニングパワーシートやシートヒーター、電動リアサンシェード、各種コンソールスイッチ付のリアセンターアームレストなどは、最上級モデルの「RS Advanced」のみにオプション設定されるリアサポートパッケージが必要、税込279,400円)。
新型クラウンクロスオーバーRSは、ジャーマン3(メルセデスベンツ、BMW、アウディ)などの世界のラグジュアリーメーカーに勝る出来栄えだ。しかもコスパは圧倒的によい。新型クラウンクロスオーバーは、海外でも高く評価されることになるだろう。
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みんなのコメント
乗ってみればわかる?
素人には乗ってもわからない?わかる素人もいる?
わからない素人は
見た目だけ良い某社の車に乗れば良いと言うことか