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マツダはなぜ世界で好評を得たCX-5ではなく、「マツダ3」を新世代モデルのトップバッターに選んだのか

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マツダはなぜ世界で好評を得たCX-5ではなく、「マツダ3」を新世代モデルのトップバッターに選んだのか

■マツダはなぜ人気のSUVではなく「マツダ3」を新世代の先陣に?

 マツダはロサンゼルス・オートショー2018にて、新型モデル『マツダ3』を発表しました。日本では、これまで『アクセラ』として販売されていたモデル。その最新モデルが登場したのです。この新型『マツダ3』は、新しい『アクセラ』いうだけでなく、マツダにとってもっと大きな存在となります。それは、マツダ車全体のプラットフォームとデザインを新しくする、まったくの新世代モデルのトップバッターとなるからです。

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 振り返れば、2012年に登場した『CX-5』から始まった現行モデルたち、いわゆるマツダの言う「第6世代商品群」は、世界中で非常に高い評価を得ました。しかし、いつまでも同じところに立ち止まれないのが自動車メーカーの辛いところ。新しく魅力的な新型モデルをリリースしなければならない。そこで登場するのが次世代モデルであり、その最初のモデルが『マツダ3』なのです。

 今回、ロサンゼルスで「マツダ3」を担当した開発主査である別府耕太氏に話を聞くことができたので、その内容を紹介しましょう。

■マツダの新世代トップバッターが「マツダ3」である理由

 新しい世代の最初のモデルとなる『マツダ3』の開発は、さぞや胃の痛い任務だったのでは? と尋ねると、「確かに、前の世代の評判が良かったのでプレッシャーはありました。でも、一方でマツダ全体として“このクルマを成功させなければならない!”という大きなサポートもありました」と別府氏は答えます。

「『マツダ3』はハッチバックとセダンです。今の世の中のトレンドであるSUVではありません。また電動化という意味でもトレンドとは逆。下手をすると、お客様からの信頼を失いかねません。逆境からのスタートだと考えていました」と驚くことをいいます。

 なるほど。そういう意味では、第6世代商品群のときのようにSUVから始めるという選択もあったでしょう。なぜ、「マツダ3」からスタートするのでしょうか? それには2つの理由があると別府氏は説明します。

「ひとつは、我々のエンジニアリング的なチャレンジです。『マツダ3』はマツダそのものだと考えているからです。『マツダ3』は『ファミリア』から長く続くクルマで、先代の主査の猿渡が、このクルマを『ザ・マツダ』と評したんです。それが本当に的を得ていて、我々自身だと思っています。

 そのため、新しい世代、しかも大きくステップアップする世代を始めるにあたって、“逃げも隠れもしない。真剣勝負をしているんだ!”というメッセージを出したい。そこで、我々のクルマ作りの哲学や姿勢を体現した、すっぴんの、素うどんのようなクルマをぶつけた! そうした心意気があったからです」と別府氏は話します。

 逃げも隠れもしない真剣さを表明するために、マツダそのものを体現した「マツダ3」で勝負しようというわけです。

「もうひとつ。私たちは、ラインナップ全体でお客様の人生をサポートしたいという目標があります。そのときに『マツダ3』は、マツダというブランドの入口という位置付けです。なので、これから新しいお客様にマツダ・ブランドに入ってきていただきたいという思いからすると、入口となるクルマを最初に新しい世代に切り替えようということです」(マツダ別府氏)

 ちなみに日本でいうマツダのエントリーは「デミオ」になりますが、世界市場的には「マツダ3」の方が入口になります。だからこそ、新世代の最初のクルマが「マツダ3」になったのだといいます。

■デザイン/走り/快適性の3つの価値で勝負する

 トレンドに逆行しながらも、新型「マツダ3」は、先代の高評価を上回らなければなりません。そのための戦略とは?

「お客様にとって何が価値あるものなのかを考えぬきました。競合やマーケットがどうのこうのではありません。突き詰めたナンバー1になる。“心が揺れる”がテーマです。理屈ではなく、心から欲しいと思うクルマにならなければなりません」と別府氏。

 そこで三つの価値が新型『マツダ3』に与えられたといいます。

 ひとつめが「人の中にある不変の憧れを形にしています」と別府氏が説明するエクステリアデザイン。進化した魂動デザインのフェーズ2と呼べるものです。今回は、セダンとハッチバックでテイストが大きく異なっています。実際にドアもフェンダーもセダンとハッチバックは別物で、同じなのはボンネットくらいです。「セダンはON/OFFで言えばONの世界。フォーマル。社会で成功した人のイメージです。ハッチバックは、世間の常識に縛られない。感性のままに動く人をイメージしています」と別府氏。

 ふたつめの価値は、「運転する人の感性を高める人馬一体の走り」とのこと。人間中心の開発によって、クルマに乗れば乗るほど感性が磨かれるというのです。たとえば、人のパフォーマンスを高めるには骨盤を寝かすのではなく、垂直に立てたほうが良いといいます。ドライバーズシートに座ったときに骨盤が立っていた方が集中力は高まる。そうした着座姿勢を『マツダ3』では実現しているのだといいます。

 そして最後の三つ目の価値が、「圧倒的に快適な室内空間」。静粛性が向上しているだけでなく、音の伝わる方向や時間などにもこだわり、その上でオーディオを刷新したとのこと。ドアパネルの中に大きなスピーカーがあるのは、音響的に実はあまりよくないのだそう。そこで新型「マツダ3」ではドアパネルに、中音域と高音域のスピーカーだけを残し、低音用のスピーカーはドアの前のフェンダー部分に移動しています。

「すべてを見直すというスタンスで、サウンドのところも新しくできました。クルマ作りから言うとプラットフォームを作って、アッパーボディを作って最後にスピーカーを置こうとなりますが、今回は、最初の段階からスピーカーレイアウトをどうするのか? と作り込んできました。

 また、今回のエクステリアデザインは、新しい『マツダ3』の入り口だと思っていただけたらいいなと。もし興味があれば、そのドアを開けていただけたら、次にはこれまでにないドライビングフィールと快適性が体験できるというわけです。実は、今回の静粛性とオーディオをあわせて、我々は “走るオーディオルーム”と呼んでいます。自分のプライベートルームと思っていただいてもいいくらい徹底的に質を高めています。乗っていただければ、『おお!』と声が出るほど感動いただけると思います」と別府氏は自信をのぞかせます。

 ここまで話を聞いて不思議に思ったのが、話題の新エンジンである『スカイアクティブX』が出てこないことです。

「『スカイアクティブX』は目玉ですけれど、すべてのお客様向けのものではありません。ガソリンエンジンの『スカイアクティブG』もあれば、ディーゼルエンジンの『スカイアクティブD』もあります」と別府氏。

 つまりは、話題の「スカイアクティブX」は、あくまでもオプションという扱いなのです。夢の新エンジンという飛び道具なしでも勝負できる。それが新型「マツダ3」というわけなのでしょう。

 ちなみに、旧世代でなにかと不満の声が上がった「マツダコネクト」は、新型「マツダ3」からまったく新世代のものになっています。基本性能を高め、表示や操作系も新しいものになったといいます。

 現在のところ、新型「マツダ3」は、ひとつめの価値である“デザイン”が披露されただけ。残る“走り”と“快適性”というふたつの価値はこれからなのです。しかし、最初の“デザイン”の出来の良さからすれば、残るふたつに対する期待も高まるばかり。ハンドルを握る日がくるのが楽しみになりました。

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