最新型のM4クーペコンペティションと並ぶのは、2003年5月に日本で予約受注が開始されて同年9月以降からデリバリーがスタートしたE46のスペシャルモデル「M3 CSL」だ。1970年代に欧米のツーリングカーレースで大活躍した3.0CSLなど一連のライトウエイトモデルの「M」スピリットが息付く同モデルに改めていま乗ってみた。(Motor Magazine2021年6月号より)
ホモロゲーションモデルがからスタートした「M3」
2003年暮れに日本で初度登録されたE46のM3 CSL。そのハンドルを久しぶりに握った。M3 CSLはE30、E36に続く3世代目のM3がベースになっている。すでに18年前のモデルだがCSL(クーペスポーツライトウエイト)の名のとおり、軽量化されたクーペのスポーツカーとして、いまなお十分に通用するパフォーマンスを確認することができた。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
この個体は、筆者の薦めもあって長野県のM氏が新車で購入したものだが、現在でも飽きることなく保有し続け、乗っている。他にもM3 CSLを保有する知り合いは少なからずいるが、みな口を揃えて「まったく売る気はない」と言う。その方々は、最新モデルも乗っているにもかかわらず、昔のM3 CSLも同時に保有しているのだ。その魅力とはいったい何なのか、じっくりと検証してみたい。
1986年から発売されたE30の初代M3、その歴史は2.3L直列4気筒DOHCバルブエンジンとともにスタートした。そもそもはレースに出場するためのホモロゲーションモデルであり、太いタイヤを履くために最初からブリスタータイプのオーバーフェンダーを備え、トランクリッドには大きなウイングが備えられていた。そしてDTM(ドイツツーリングカーマイスターシャフト=選手権)で大活躍したことを鮮明に憶えている方も多いだろう。
そして1993年にE36のM3クーペへと進化。この2世代目M3は、エンジンコード「S50B30」と呼ぶ3L直列6気筒DOHCバルブエンジンを搭載し、4ドアモデルのM3セダンもラインナップに加わる。1995年からエンジン排気量が3.2Lになり、最高出力は286psから321psへとパワーアップ。この3.2Lモデルには、6速MTの他に2ペダルのSMG(シーケンシャル エム ゲトリーベ)というシングルクラッチ式AMT仕様も設定された。
最高出力は360psにアップ。カーボンルーフなどで軽量化
3世代目となるE46のM3は、2000年から発売された。新開発の「S54B32」と呼ぶ3.2L直列6気筒DOHCバルブエンジンを搭載し、6速MTと改良されたSMG IIの2種類のトランスミッションを用意。そして2003年に発売されたのがM3CSLである。
エンジンは標準M3の343ps仕様に対して、360ps仕様にパワーアップされた「S54B32HP」に替わった。トランスミッションはSMG IIのみで、2世代目M3に採用された最初のSMGは電気的なトラブルに見舞われたが、このSMG IIでは大きな問題は発生しなかったようだ。
M3 CSLのボンネットを開けると、直列6気筒エンジンの左側(向かって右側)に配置されたCFRP(カーボンファイバー強化樹脂)製の巨大なインダクションボックスに目がいく。そのインテークダクト部には大きなフラップがあり、高回転領域など必要に応じて開くようになっている。
ボディエクステリアはさほど派手ではないが、随所からただ者ではない雰囲気を醸し出している。Mモデル特有のボンネット上のパワーバルジ、フロントフェンダー後部のエア抜きスリット、フロントバンパー左側にあく丸い穴(オルタネーター冷却用)など、標準型M3との識別点は多い。
また軽量化モデルを標榜するだけに、CFRP製パーツも多く採用されている。もっとも特徴的なのは、量産車として初採用されたCFRP製ルーフパネルだ。またフロントバンパーも、丸ごとCFRP製である。実はM氏が凍結した湖上の特設コースに降りようとした時、オウトツにバンパー下部のスポイラー部が引っかかってパリンと割れたことがあるそうなのだが、部品代と交換工賃・塗装代込みで70万円!だったという。
ちなみに室内にも、CFRP製パーツは多用されている。これは軽量化とともに、雰囲気作りの目的もあるだろう。いちおう後席にも座れる4人乗り仕様だが、リアシートのクッションは薄い座布団程度である。前席も本格的なフルバケット型で、シート全体の角度調整はできるがシートバックのリクライニングはできない構造だ。また車体の軽量化で効果的なのはガラス部分だそうで、リアウインドウには厚みの薄いガラスが採用されている。
高性能自然吸気エンジンに特徴的な回転フィールと音
さて、そんなM3 CSLの良さは、何より走らせてみなくてはわからない。右足でブレーキペダルを踏んでエンジンスタート。MTモデルと同じ小さなブレーキペダルが位置も同様に配置されているので、これを左足で踏むのは難しい。この小さなペダルになっている理由だが、シングルクラッチ式AMTであるSMG IIの反応がとてもダイレクトなので、運転中にMTモデルだと勘違いしたドライバーが左足でクラッチペダルを踏む操作をしてしまった際に、AT用の大きなブレーキペダルだと突然の急ブレーキになってしまうことを防ぐためではないか、と思う。
久しぶりの高性能自然吸気エンジンモデルは、まるでバイクに乗っているかのような加速フィールだった。エンジンが高回転まで伸びるし、その間のエキゾーストノートの盛り上がりが、ドライバーのハートに火を点けるかのようにエキサイティングなのだ。
3500~4500rpmくらいで少しビビリ音のような共振音が混じるが、それを超えると大きなパワーの山を超えるような感じで、レッドゾーンまで伸びていく。このとき同じギア、同じスピードでもアクセル開度によって吸気音が変わるから、助手席に乗っていてもドライバーがどれくらいアクセルペダルを踏み込んでいるのかが想像できる。そしてドライバーは、自分の踏み込み量が音となってフィードバックされるから、クルマとの一体感が生まれる。
現在はエンジンがダウンサイジング化され、多くがターボチャージャーなどの過給器付きになってしまっている。しかし、このような自然吸気エンジンを楽しむと、もう一度そんな時代が来ないだろうかと思ってしまうが、実際には燃費/排出ガス規制/騒音などの難問をクリアする手段としてターボなどの過給器を採用しているから、それは現実的には叶わない夢だ。ということは、オーナーは一度手にしたM3 CSLを手放さない、という結論になることも理解することができる。
軽量で高剛性なボディが実現する味わい深き走り
その根本にあるM3CSLの魅力は、軽量コンパクトなボディだ。360ps/7900rpm、370Nm/4900rpmを発生する3.2L直列6気筒エンジンで1430kgのボディを押し出すわけだが、日本の道で愉しむには十分に速い。確かにターボを使ってもっと速く走れるクルマはあるが、この味を出せるクルマはない。
最新型M4は、最初からコンペティションというネーミングのモデルも登場したところが新しい。従来はノーマルモデルがデビューしてから順番のようにコンペティション、CS、GTSなどのネーミングで、まるでマーケティング戦術のようなバリエーション展開が行われていた。
しかしそれが、最初から標準モデルのM4(6速MT仕様)とM4コンペティション(8速AT仕様)が用意されて、同時に選べるのだ。また本国では4WDのxDrive仕様もすでに発表済みで、さらにCSLモデルのスクープ記事まで出ている。
G82の最新型M4クーペコンペティションとE46のM3 CSLの共通点を見つけるとすると、ひとつはコンパクトに感じるボディサイズだ。ボディ剛性が上げられたことで身のこなしが素早くなり、実際のサイズよりもコンパクトなモデルとして感じられる。そしてもうひとつは、高回転型のエンジンだろう。
新型M4クーペコンペティションのエンジン仕様は510ps/6250rpm、650Nm/2750-5500rpmで先代M4エンジンのピークパワー発生回転数が5500-7300rpmであったのと比べると、頭打ち感のない加速が味わえる。
それでも、最新のM4 CSLが出れば間違いなくその方が良くなっているのだろう。ただそうなると、いつまでも買えないというジレンマに陥ってしまうのだが。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)
BMW E46 M3 CSL(2003) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4490×1780×1370mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1430kg
●エンジン:直6 DOHC
●総排気量:3245cc
●最高出力:265kW(360ps)/7900rpm
●最大トルク:370Nm/4900rpm
●トランスミッション:6速AMT(SMG II)
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●タイヤサイズ:前225/40R19、後255/35R19
●車両価格(税込):1150万円<2003年5月当時>
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みんなのコメント
いまや、代名詞のNA直6を捨て去り、ターボですら直6は一部のクラスかつ上級グレードに残すのみ。
スペック上は過去の直6より近年の直4ターボの方が高くても、官能性では大きく劣る。これはBMWが犠牲にしてはいけない部分じゃないのか。
挙げ句に1シリをFF化するという暴挙…。
そして中国偏重主義を推し進め、中国人好みにデザインは下品になっていく一方。
いまでは駆け抜ける喜びはどこへやらで、中国人に好かれるためにグリルをデカくしていくことしか考えてない…。
F10の5シリ辺りまではBMWらしさを貫いてましたが、以降はもうメルセデスやAudiと何が違うのかわからん。
デカすぎずなくオーラ感もあり、乗り換えずに頑張ります。