前回、e:HEV=ハイブリッドモデルの試乗記をお届けした、販売絶好調の新型ホンダ・ヴェゼルのGグレード、ガソリン車に試乗する機会を得た。販売の主力はe:HEVモデルとは言え、PLaYの329.89万円、Zの289.85万円、Xの265.87万円のe:HEVモデルに対して、G、ガソリン車は227.92万円の価格となり、e:HEV Xより約38万円安い価格設定だ(いずれもFF)。そんなGグレードの実力をロングドライブで検証した。
ちなみにWLTCモード総合燃費はe:HEVモデルのベストバイグレードのZの25.8km/L(お薦めの4WDは22.0km/L)に対して、ガソリン車のGは17.0km/L(4WDは15.6km/L)となる。
ベースに5シリーズ初のM Sportを採用したBMW ALPINAの新型「B5 Limousine」
e:HEVとガソリンモデルの違いはまずパワートレーンの出力。e:HEVモデルは1.5Lエンジンが106ps、13.0kg-m+モーター131ps、25.8kg-m。対するガソリンモデルは1.5Lエンジンの118ps、14.5kg-mのみの出力となる。ただし、車重はe:HEV Xの1350kgに対してガソリン車のGは1250kg(FF比)となり、100kgも軽量だ。メイングレードのe:HEV Zとなら130kgも軽いのである。
そしてタイヤサイズ。e:HEV Z以上では大径18インチタイヤを履くところ、ガソリン車のGは16インチとなる(e:HEV Xも16インチ)。
もちろん、先進運転支援機能のホンダセンシングは全グレードに標準装備。前席頭上にあるSOSコール、トラブルサポートボタン、スマホでドアのロック、アンロック、エアコンのリモート操作などが行えるホンダコネクトの用意も、ガソリン車だからと言って省かれているわけではない。
さらに、ガソリン車のGグレードでも電車パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機能などがしっかり付いているから、一般道の信号待ち、渋滞時、スーパーマーケットなどの料金所での一時停止時も、ブレーキを踏み続けなくていいメリットがある。
さて、新型ヴェゼルのGグレード(今回は4WDモデル)を走らせれば、動力性能的には、2人分の宿泊を伴う荷物を積み込んだとしても、日常的な走りのシーン、高速走行で、加速力に歯がゆさを感じさせるシーンはまずなかった。e:HEVモデルとの動力性能の差が感じられるとしたら、フル加速時、登坂路、そしてGのエコモードであるECONを使った時に限られるという印象だ。
乗り心地に関しては、e:HEVモデルの場合、FFより4WDのほうがしっとり重厚でしなやか。より上質感を味わえる乗り味が自慢なのだが、FFになると18インチタイヤ装着車では、先代よりは遥かに快適なものの、路面によって硬さがある乗り心地になってしまう。
一方、16インチタイヤを履くGグレードは、FF、4WDを問わず、ヴェゼルとしてはフラットで、カーブや山道などで前後左右の姿勢変化最小限かつ、乗員に優しいマイルドな乗り心地を示してくれるのだ。
車内の静かさについても、ハイブリッドモデルのほうが上、という定説はあるものの、高級感、上級感を増した新型ヴェゼルの場合、ガソリン車でも遮音、吸音がしっかり行われているため、エンジンが静かにスムーズに回るだけでなく、風切り音やロードノイズなどを含む全体的な印象としては、想定外に静かに走ってくれたのである。
新型ヴェゼルをファミリーカー、あるいはペットを同乗させるクルマとして見たとすれば、パワー的にe:HEVモデルに譲るぶん、走りそのものが穏やかで、むしろ好ましいと感じるジェントルドライバー(や乗員)もいるはずだ。
ただし、ハイブリッドのe:HEVに対して、渋滞追従&停止保持機能付きの先進的なACC(アダプティブクルーズコントロール)の動作は、よりスムーズでリニアなモータートルクのあるe:HEVモデルに比べ、やや強めの再加速、減速感となる。
今回、真夏のドライブ試乗で嬉しかったのが、ホンダコネクトによる、スマホアプリの操作。ドアのロック、アンロック、エアコンの遠隔操作などが可能で、炎天下に止めた新型ヴェゼルの室内を、あらかじめエアコンで冷やしておくことができ、乗り込んだ瞬間から快適なドライブができたのである。こうした先進機能を、ベースグレードだからといって省かなかったことは、賞賛に値する。
帰路、大雨に降られたのだが、新型ヴェゼルのドアは、本格SUV同様、サイドシルを覆うタイプで、雨や雪(あるいは悪路走行での泥)でサイドシルが汚れにくく、乗降時に衣服がサイドシルに触れ、汚れてしまうこともない。
ガソリン車のGグレードでは、エアコン用のフル電動コンプレッサー、後席エアコン吹き出し口を含む3ゾーンフルオートエアコンが未装備(e:HEV Xも)。よって後席エアコン吹き出し口がなく、前席左右独立の温度調整もできないのだが、もし、ドライバーが暑がり、助手席の乗員が寒がり・・・といったケースでも心配無用。新型ヴェゼルにはそよ風アウトレットなるエアコンの機能があり、助手席だけそよ風アウトレットを用いれば、直接的に顔や体に冷風が当たらず、例えエアコンの温度設定をドライバーに合わせて低めにセットしても寒がりの助手席乗員が「寒すぎる」とクレームを出さずに済みそうなのである。
そして試乗車では、意外な発見があった。新型ヴェゼルには、工場オプション、またはe:HEV PLaYに標準装備されるホンダコネクトディスプレー&ナビと、ディーラーオプションとなるホンダ純正アクセサリーのギャザズのナビが用意されているのだが、試乗車に付いていたのは後者。ホンダコネクトディスプレー&ナビがApple CarPlayやAndroid Auto に対応するものの、CDに対応していないのに対して、ギャザズのナビは、Apple CarPlayやAndroid Autoには未対応ながら、CDスロットがあり、CDを再生できるのである。今だにCD派の筆者としては、嬉しい限りであった。
そうそう、愛犬家にもニュースがある。それは、新型ヴェゼルの後席に装着できるホンダ純正アクセサリー、ホンダドッグシリーズの「ペットシートサークル」(小中型犬用/体重25kgまで)が、後席左右、どちらにも取り付けられること。実は、e:HEVモデルの場合、後席右側端にハイブリッドバッテリーの冷却口があり、それを「ペットシートサークル」が塞いでしまう可能性(バッテリートラブルや劣化の原因になる)があるため、「ペットシートサークル」に限っては、後席右側の装着は適応外なのである。当然、ガソリン車のGはハイブリッドバッテリーを積んでおらず、その冷却口もないため、後席左右どちらにも取り付けられるメリットがあるというわけだ。
新型ヴェゼルのe:HEVモデルとガソリン車の価格差は最低でも約38万円(e:HEV Xの場合。E:HEV Z、PLaYではさらに広がる)。あえて、e:HEVモデルとスタイリッシュなエクステリア&インテリアデザイン面ではほとんど変わらないガソリン車のGグレードを選び、その差額の約38万円の使い道(ナビやドライブ旅行費用など)を考えるのも楽しいではないか!! なお、東京~南房総九十九里を往復(高速道路60%、一般道40%走行)したときの実燃費は、4WDのSUVにして12km/L前後と優秀だった。
ホンダ・ヴェゼル
ホンダドッグシリーズ
撮影協力/Asovillage in 九十九里
写真/青山尚暉・雪岡直樹
文/青山尚暉
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みんなのコメント
またグリルレスの同色フロントは特に違和感も無く、この車の特徴として良いのでは?
それにしてもコンパクトSUVなのに大きく立派に見えるのは不思議、車格が上がった様に見える。
高速道以外はEVでエンジンは充電に徹するって上質で良いですね。
比べられるヤリスクロスよりも圧倒的に優れた加速をするのは速いホンダとして面目躍如、後席の広さも圧倒的。