ドレスアップではなく「ドレスダウン」を楽しみたい
全国のコンビニや書店で9月20日に発売となり、現在も売られている情報誌 カーセンサー11月号の特集は「しようぜ! いきなり“個性車”デビュー」というタイトルであった。
何をもって「個性的」とするかは人それぞれ、媒体それぞれであろうが、特集の導入文を読む限りでは、カーセンサー編集部は「個性的な車」というものを(今回の特集においては)下記のようなモノと定義しているらしい。
●空力性能やパワーなどの向上を主眼とする、いわゆるチューニングを施した車ではなく●かといって超高額な希少クラシックカーでもなく●普通に日常使いできる大衆実用車を「おしゃれ」に仕立てたモノ
それこそが個性的な車なのだと、特集の導入文は言っている。
……ここでまた「おしゃれ」という、いかようにも解釈およびイメージできるワードが登場したわけだが、導入文に続いて特集の本編を読み進めてみれば、「なるほど!」と得心できる。
要するに「今、車趣味においては“ドレスダウン”がおしゃれなんじゃないですか?」ということをカーセンサーは提案しているのだ(と、筆者は理解した)。
「高級っぽい車を買って、それをさらにキラキラと飾り立てるのも悪くはありません。でも割と普通めな中古車を買い、それをさらに着崩すというか、あえてギアっぽい(道具っぽい)感じに仕立てると、今の時代はかなりカッコよく見えるんじゃないでしょうか?」というプロポーザルである。
なるほど。確かに、そのとおりかもしれない。
実用大衆車をカッコよく見せるための「法則」を発見セリ!
で、さらに特集を読み進めていくと、そこでは数々の「個性的なカッコいい車」、つまり良好なセンスで上手にドレスダウンされた実用大衆車の実例が紹介されている。
それらはどれもお世辞や忖度抜きで「うむ、なかなかカッコいい!」と筆者には感じられたのだが、「ところで、なぜこれらはカッコよく見えるのだろうか?」と考えてみたところ、「法則」は比較的容易に発見できた。
(商用車成分+軍用車成分)×カーキ色=カッコよく見える
この計算式が、おそらくは必勝のカギである。
説明しよう。まず「商用車成分」とは、要するに「黒い樹脂製バンパー」のことだ。大昔と違い、最近の乗用車の前後バンパーはボディと同色に塗装されている場合がほとんど。そこを商用車と同様の「黒い樹脂製バンパー」にするか、あるいは黒い樹脂に見えるような塗装を施すだけで、車の「ギア感」はグッと上昇する。
ただしその場合、足元(タイヤ&ホイール)まで商用車風にしてしまうと途端にダサくなるというか、貧弱に見えてしまう。またこの場合の足元は「普通なまま」でもダメだ。それもまた貧弱に見える。
そこでプラスするのが「軍用車成分」である。
軍用車成分とは「黒いホイールとゴツいタイヤ」のこと。黒いホイールは、わざわざ高価なアルミホイールを買う必要はなく(もちろん買ってもいいが)、「安手の黒いスチールホイール」に替えるだけでも十分。また「ゴツいタイヤ」は装着できるとベターだが、マストではない。
で、そのうえでボディ全体を「カーキ色」でまとめる。……これで、とりあえずは「ステキに道具っぽい1台」の完成だ。もちろんこの他にも押さえるべき細かなポイントはあるのだが、最低限のベースとしてはこれで十分だろう。
ちなみにカーキ色といってもいろいろな種類があるわけだが、まあ具体的には何でもいい。黄土色っぽいやつでもオリーブ色っぽいものでも、とにかく貴殿がお好きなカーキ色(スモーキーカラーとかアースカラーと呼ばれている色でもいい)を選択すれば、それで万事OKである。
例えばこんな初代エクストレイルなんてどうでしょう?
そのような感じで筆者が看破(?)した「(商用車成分+軍用車成分)×カーキ色=カッコよく見える」という基本法則を、図らずも見事に具現化しているのが、アウトドア専門のPR会社を経営する牛田浩一さんが乗る2004年式日産 エクストレイルだ。
牛田さん号の場合は、商用車成分というよりは軍用車成分が多量に配合された「ミリタリー感あふれる1台」なわけだが、まあ商用車も軍用車も「タフで実用的であることが第一」という基本理念はほぼ同じなので、そこはある程度混然一体と考えてもいい。
で、足元は「黒の鉄ちんホイール」でも十分カッコいいとは思うが、牛田さん号の場合は極めてヘビーデューティな造形および構造の黒いアルミホイール+マッドテレーンタイヤ(不整地用タイヤ)を組み合わせた。それにより、かなりステキな「プロスペック感」がにじみ出ているように思える。
極めつけはボディカラーだろう。「ん? 初代エクストレイルにこの色ってなかったと思うけど、でも、そういえばあったような気も……」という微妙な色味なのだが、答えを言えば、これは日産の純正色。ただしエクストレイル用ではなく日産 キューブ用の純正色で、その名も「クラフトダンボール」。まさに段ボールのような、道具感満点のカラーである。
ちなみにこの色は牛田さんが塗ったものではなく、中古車として購入する段階ですでにこの色に全塗装されていたとのこと。さらにちなみに、牛田さんがこの初代エクストレイルを買う際に「競合」として悩んだのが、同じ販売店に展示されていた「デザートカーキ」という純正色の旧型スバル XVだったそうだ。
そのほか「ギアっぽい車」を作るためのもうひとつの重要アイテムである「載せモノ」つまりルーフキャリアも、牛田さん号の場合はかなり効いている。こちらはアメリカの「YAKIMA」という有名ブランドの物であるとのこと。
牛田さんのように日常的に様々な荷物を載せている人はもちろんのこと、載せるモノが特にない人も、まるで往年の「陸サーファー」が使いもしないサーフボードを持ち歩いていたように、道具グルマの屋根にはこういったキャリアを載せたいものである(まあ重量と空気抵抗を考えるとどうなのよ? という話はあるでしょうが)。
いずれにせよ、この種のナイスな「個性車」の実例が多数紹介されているカーセンサー11月号は今の時代、必見であるように思う。
まるで「回し者」のような言い草で恐縮だが、本当にそのように思うのだ。 文/伊達軍曹、写真/稲葉真、Photo AC
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