■86やZなど新型が出るのにNSXはなぜ終了?
昨今はスポーツカーやクーペが売りにくい時代とされ、トヨタ「セリカ」や日産「シルビア」、ホンダ「プレリュード」などは、すべて過去のクルマになりました。
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そのため、今はスポーツカーの車種数が減少していますが、最近は明るい兆しも見えています。2019年にトヨタ「スープラ」が復活して、直近ではトヨタ「GR86」およびスバル「BRZ」がフルモデルチェンジしました。日産新型「フェアレディZ」の登場も控えています。
しかしすべてのスポーツカーが進化するわけではありません。ホンダ「NSX」は2022年12月に生産を終えます。
同じスポーツカーなのに、スープラやGR86・BRZ、フェアレディZのように進化する車種と、NSXのように廃止される車種があるのはなぜなのでしょうか。
GR86とBRZの背景にはトヨタとスバルの業務提携があります。誰もが楽しめる純粋なスポーツカーとしての需要は根強く、2代目に進化させます。
その一方でNSXの廃止について、開発者に尋ねると以下のように返答されました。
「今後はカーボンニュートラルの時代を迎えることもあり、NSXは今の時代における役割を終えました。そのために生産も終了します。今後は新しい時代に相応しいスポーツカーを模索していきます」
このコメントには疑問があります。NSXは高性能スポーツカーであると同時に、ハイブリッド車でもあり、WLTCモード燃費が10.6km/Lに達します。
日産の高性能スポーツカーである「GT-R」の7.8km/Lに比べると優れており、NSXは新しい時代に相応しいスーパースポーツカーともいえるでしょう。
しかもNSXが納車を開始したのは2016年(日本市場は2017年)ですから、4、5年しか経過していません。2007年登場のGT-Rに比べると基本設計は大幅に新しいのです。
「各種の規制に対応するのが困難になったのですか?」と開発者に尋ねると「将来の北米における燃費規制は関係しますが、差し迫って対応の困難な法規はありません」と返答されました。
開発者と話をしていると「いまの時点で生産を終える必要はないのでは?」と思えてきます。
そこでさらに尋ねると、生産台数とのバランスもあり、オハイオ工場の生産ラインを維持する上でも課題が生じていたようです。要はNSXの売れ行きが想定していたほど伸びていないということです。
NSXを発売した時点では「オハイオ工場における生産台数は1年間に1500台で、この内の100台を日本市場に供給する」というものでした。
いまは北米における納車の開始から5年を経過しているので、計画通りなら、現行NSXの生産累計は7500台に達しているはずです。
ところが実際の生産累計は、2021年7月時点で2558台に留まります。計画台数の34%程度です。
生産台数が少ない理由を開発者に尋ねると「北米市場を中心に、高性能なスポーツカーとしての認知度やブランド力が、海外の強豪車種に及ばなかった」と返答されました。
ここで注目したいのが日本国内の登録台数で、464台とされています。
日本国内は2017年の納車開始なので、4年間の計画台数は400台。実際は464台なので計画を上まわっているのです。
つまり海外市場におけるNSXの人気は低く、生産累計も計画台数の34%ですが、日本では好調に売れていたことになります。
■NSXを購入したい人はたくさんいたのに年間100台は少なすぎた
NSXを扱うNSXパフォーマンスディーラーに販売状況について尋ねると、以下のように返答されました。
「NSXは価格が2000万円を超えるスーパースポーツカーですが、購入を希望されるお客さまは少なくなかったです。先代型も高く売却できるので、乗り替えを希望するお客さまからは問い合わせも多く受けました。
また先代型を買えなかったお客さまが、いまは所得が増えて購入されるケースもあります。それなのに割り当て台数が限られ、販売計画は不明瞭です。
常に購入できるクルマではなかったので、タイミングを逃して諦めるお客さまもおられました」
NSXはいつ買えるか分からないクルマだったので、メーカーのホームページには掲載されても、販売会社では自社のホームページに載せないことも多かったといいます。
海外と日本では、NSXに対するニーズが大幅に違いました。海外では開発者が述べた通り、「高性能なスポーツカーとしての認知度やブランド力が海外の強豪に及ばなかった」わけですが、日本には買いたい人も多かったのです。
それならどうして、国内の販売計画を1年間に100台と設定したのでしょうか。
この点も開発者に尋ねると、「新車価格が2000万円以上の高価格車は、日本では1年間に400台から500台が販売されています。この販売実績から、NSXの国内販売台数は100台と考えました」とのことでした。
ここにホンダの誤算がありました。日本のユーザーにとってNSXはスポーティなホンダ車の象徴で、初代モデルを知っている中高年齢層には憧れの存在でもあります。
日本で1年間に400台から500台が販売されるのは、いわば価格が2000万円を超える普通の輸入車ですが、NSXは別格なのです。
ちなみに、GT-Rは約1000万円から約1600万円という高価格なスポーツカーですが、1年間に700台から800台を販売しています。この販売実績を考えれば、NSXが1年間に100台では少なすぎました。
NSXを求めるすべての日本のユーザーに販売できていたとすれば、NSXは終了しないで済んだかも知れません。
現時点で現行NSXを見かける機会はほとんどありませんが、供給体制が整っていれば、街中でその姿を見る機会も増えたでしょう。そうなれば欲しいと感じる新たなユーザーも生まれたはずです。
新型GR86・BRZや新型フェアレディZが登場するなかでNSXが生産を終える最大の理由は、ホンダが日本のユーザーに向き合わず、市場も正しく分析できず、十分な台数のNSXを国内市場に供給できないことにありました。
NSXの最終モデルとされる「タイプS」は、海外と国内の販売格差が明らかになった後の2021年8月に発表されましたが、販売総数が350台。日本の割り当ては相変わらず10%以下の30台限定です。
NSXパフォーマンスディーラーでは「すべての店舗に行き届かず、メーカーが販売できる店舗を選定しています。そのためにお客さまから問い合わせを受けながら、販売できずにお断わりするNSXパフォーマンスディーラーも多いです」といいます。
ホンダは狭山工場の閉鎖に伴い、基幹車種の「オデッセイ」を廃止する方針を打ち出しました。
車種の終了に伴って工場を閉鎖するなら理解できますが、オデッセイの場合は逆で、場当たり的な対応です。
NSXの生産終了を含めて、根底では繋がっているホンダの本質的な課題なのでしょう。
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みんなのコメント
商売のセンスがないと言われても仕方ない。
車も魅力で他車に負け、消費者の動向、趣向も読めず、売り方も下手じゃあ、そりゃ成功する要素はほぼゼロと言ってよいでしょう。
こんな使われ方してしまったNSXの車名が勿体ない。
これを失敗とホンダ自身がちゃんと認めて分析しないとEVでもロクなスポーツカーは作れないよ。
2000〜3000万クラスは
マクラーレンフェラーリランボルギーニポルシェと
激戦区です
この中ではパフォーマンスが低くデザインも目を引くものはなかった
他のブランド以上のものを見せられなかったのが要因でしょうね
ハイブリッドは新しい部分もあるけど重さがネックでスポーツカーとしては遅くなってしまいます