現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > インディカー初優勝を果たしたルンガー。次戦アイオワで課題のオーバルレース克服となるか?

ここから本文です

インディカー初優勝を果たしたルンガー。次戦アイオワで課題のオーバルレース克服となるか?

掲載
インディカー初優勝を果たしたルンガー。次戦アイオワで課題のオーバルレース克服となるか?

 7月16日にカナダ・トロントの市街地で開催された2023年NTTインディカー・シリーズ第10戦、ホンダ・インディ・トロントは、ポールポジションからスタートしたクリスチャン・ルンガー(レイホール・レターマン・ラニガン)がキャリア初優勝を飾った。

 ラリードライバーの父親を持つルンガーは、少年期にレーシングカートを始めレースの世界へ。母国デンマークでカートシリーズのチャンピオンになり、欧州のメジャータイトルも獲得して2017年からフォーミュラカーでのキャリアをスタートさせる。

インディカー第10戦トロント/ルンガーが至難の週末を制し悲願の初優勝。パロウは15番手から13台抜きの2位表彰台

 初年度に北欧とスペインの2シリーズでF4チャンピオンを獲得。ルノースポールアカデミー入りを果たし、新たに参戦したフォーミュラルノーではランキング2位となった。

 2019年はヨーロッパF3を戦い、1勝してシリーズ6位になる。そして、2020年はF2へとステップアップ。F1への登竜門カテゴリーでは、シーズン2勝を挙げたもののランキングは7位。それでも、F1初テストのチャンスをルノーから与えられ着実にキャリアを進めてきた。

 アルピーヌアカデミーに改名されてもルンガーへのサポートは続けられたが、F1でのレギュラーシートは掴めず、F2での2シーズン目を戦う合間にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLLR)でインディカーの初テストを行った。

 さらには、2021年の第12戦のインディアナポリスのロードコースでインディカー・デビューを果たし、いきなりの予選4番手でRLLR加入をほぼ確定づける走りを見せている。

 2022年以降はRLLRからのフルシーズンエントリーを開始し、現在はインディカーを足がかりにF1に戻るシナリオも模索中ということだろう。

 デビューの地となったインディアナポリスのロードコースとの相性は非常に良く、キャリア初の表彰台登壇を2022年夏のレースでの2位フィニッシュで実現。2023年5月のイベントではキャリア初のポールポジションを獲得した。

 2022年のルンガーは17戦全戦に出場し、7回のトップ10フィニッシュを記録。323ポイントを稼ぎ、シリーズランキング14位につけてルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

 しかし、オーバルコースのレースではRLLRのマシンに戦闘力が不足しており、かなりの苦戦を強いられた。そして今シーズンも、これまでの高速オーバル2戦を見る限りその状況は改善されていない。

 一方、ロード/ストリートコースでのパフォーマンスは昨年よりも向上している。ここまでのロードコースとストリートコース合計8戦では、予選、決勝ともに6回もチーム内トップの成績を残して来ており、ルンガーが若さとスピードでRLLRを引っ張っている感さえある。

 それゆえに、次戦アイオワ・スピードウェイでのオーバル2連戦がルンガーの成長にとって正念場となる。さらにこの2レースは、RLLRの大口スポンサーであるスーパーマーケットチェーンの『ハイビー』のイベントだ。

「ハイビーのダブルヘッダーへと臨む前に初優勝ができた。この勢いをアイオワに持ち込みたい」とルンガーはトロントで語っている。

■難題となるオーバルレースでの活路とは

 ここまでデンマーク出身のルンガーにとってオーバルレースが大きな課題となっている。その理由は、チームのオーバル用セッティイングに戦闘力がないということが大きいだろう。

 ここまでルンガーが参戦したオーバルレース7戦での成績は、予選20番手以下が5戦、決勝も6戦で18位以下という結果だ。救いは、予選の自己ベスト=17番手、決勝の自己ベスト=10位がどちらも次戦の舞台アイオワで記録されている点だ。

 オーバルレースを習得する近道は、オーバルに特化したセッティングが施された良いマシンで走ることなのだが、RLLRはそういった環境にない。この状況を打破するためには、これからルンガー自身が経験を積み、良いマシンへの理解を深めて少しずつ進歩していくことしか道は残されていないのかもしれない。

 ルンガー自身はと言えば、レース中にミスをすることが非常に少なく、苦しい展開でもゴールまでマシンを運ぶ率が非常に高い印象がある。ライバル勢の間でも“フェアに戦うドライバー”としての評価は高い。走りで無理をしてライバルを妨害をしたり、マシンを壊してしまうということが自分自身やチームに与える悪影響を深く理解し、その考えの通りにレースすることができているのだ。

 さらに、コメントの仕方や、その言葉自体にも21歳とは思えない落ち着きぶりが現れている。

 初優勝を果たしたトロントでも、チームのクルーたちに迎えられてマシンを降りたところでは少し興奮した姿を見せたが、テレビのインタビューには、「エネルギーを使い果たした。レース前に、“自分たちのマシンには勝てるスピードが備わっている”と言っていたが、その通りの走りを実現し、10秒ちょっとの差をつけて優勝できるとは……。これはチームの奮闘によるもの」

「昨年の今頃の自分たちを振り返れば、今とは程遠いレベルにあった。チームのみんなのために勝つことができ、すごく嬉しいよ」と冷静に答えていた。

 走りやコメントにもベテラン手前の落ち着きを見せるルンガーは、意外な趣味を持ち合わせている。彼の趣味その1は“ピックルボール”。

 バドミントンサイズのコートで、卓球用のものを少し大きくしたようなラケットを使うミニチュアテニス的スポーツは、誰にでも親しみやすいものとしして普及して行っているようだ。ピックルボール自体はどちらかというと高齢者用向け……なのかもしれないが、彼のインタビューでの冷静な答えぶりを思うと、彼の好む趣味として腑に落ちるところもある。

 趣味その2はネットフリックス鑑賞=ジャンル問わず。そして、趣味その3は“コール・オブ・デューティ”というプレイステーションの戦闘ゲーム。このラインアップにも21歳らしいところと、そうでないところが混在しているようだ。

 今シーズンの開幕前に“優勝するまで口髭を剃らない”という願掛けをした彼は、シーズンが後半戦に入ったところで初勝利に到達。ビクトリーレーンで髭を剃り落とした。残り7戦で彼がどんなレースを戦うか、おおいに楽しみだ。アイオワとゲートウェイというふたつのショートーバルでどれだけの進化を見せているのかに注目したい。

 そして、得意のインディアナポリスのロードコースで行われる第14戦では、キャリア2勝目が挙げられる可能性も大いにあるだろう。続く最終2戦のポートランドとラグナセカでも、優勝争いに絡んで来る可能性を秘めている。

こんな記事も読まれています

トップENEOSが痛恨のピットミス。Deloitte笹原&アレジが待望の初優勝でGRスープラ1-2/第3戦GT500決勝レポート
トップENEOSが痛恨のピットミス。Deloitte笹原&アレジが待望の初優勝でGRスープラ1-2/第3戦GT500決勝レポート
AUTOSPORT web
シビック タイプRで24時間レースに挑戦!【石井昌道】
シビック タイプRで24時間レースに挑戦!【石井昌道】
グーネット
巨大グループ期待の星! 新型プジョーE-3008へ試乗 ダッシュ力競争から1歩引いた214ps
巨大グループ期待の星! 新型プジョーE-3008へ試乗 ダッシュ力競争から1歩引いた214ps
AUTOCAR JAPAN
フェチれるアウディ「RS 6 アバント パフォーマンス」の22インチホイール! リアル「運び屋」がチョイスする本物っぷりとは【クルマdeフェティシズム】
フェチれるアウディ「RS 6 アバント パフォーマンス」の22インチホイール! リアル「運び屋」がチョイスする本物っぷりとは【クルマdeフェティシズム】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 決勝
【正式結果】2024年スーパーGT第3戦鈴鹿 決勝
AUTOSPORT web
2024年版 「本格派」の高性能オフロード車 10選 道を選ばない欧州 "最強" SUV
2024年版 「本格派」の高性能オフロード車 10選 道を選ばない欧州 "最強" SUV
AUTOCAR JAPAN
BYDが東京工科自動車大学校で初の「EV特別講座」を開催。未来のメカニックたちに伝えたいことと狙いとは
BYDが東京工科自動車大学校で初の「EV特別講座」を開催。未来のメカニックたちに伝えたいことと狙いとは
Auto Messe Web
夢のように走った「RR」 3台のワークス・シュコダ 130/フェイバリット/120 ラピッド(2) クラス優勝の常連
夢のように走った「RR」 3台のワークス・シュコダ 130/フェイバリット/120 ラピッド(2) クラス優勝の常連
AUTOCAR JAPAN
東欧の「ポルシェ」 刺激的だった廉価ブランドのRR シュコダ130/フェイバリット/120 ラピッド(1)
東欧の「ポルシェ」 刺激的だった廉価ブランドのRR シュコダ130/フェイバリット/120 ラピッド(1)
AUTOCAR JAPAN
【取引先からの不満は事実】日産、下請法違反勧告後の取り組みを説明
【取引先からの不満は事実】日産、下請法違反勧告後の取り組みを説明
driver@web
あまり重いと走行不可能! 重い積み荷の巨大トラックは「何トン」まで公道を普通に走ってOK?
あまり重いと走行不可能! 重い積み荷の巨大トラックは「何トン」まで公道を普通に走ってOK?
WEB CARTOP
“カツカレー”のようなクルマの進化──新型BMW X6 xDrive 35d M Sport試乗記
“カツカレー”のようなクルマの進化──新型BMW X6 xDrive 35d M Sport試乗記
GQ JAPAN
ホンダが認証不正で会見 対象車種の累計販売は325万台 「遵法性の意識に大きな問題」
ホンダが認証不正で会見 対象車種の累計販売は325万台 「遵法性の意識に大きな問題」
日刊自動車新聞
新デザインになった「ゆるキャン△ピングカー」イベント展示とオフィシャルグッズ販売が決定!
新デザインになった「ゆるキャン△ピングカー」イベント展示とオフィシャルグッズ販売が決定!
乗りものニュース
エステバン・オコン、今季限りでアルピーヌを離脱「次の計画はすぐに発表する」
エステバン・オコン、今季限りでアルピーヌを離脱「次の計画はすぐに発表する」
motorsport.com 日本版
ルノー「カングー」でこだわりの趣味を満喫!最長1年間貸与のモニターキャンペーン第3弾
ルノー「カングー」でこだわりの趣味を満喫!最長1年間貸与のモニターキャンペーン第3弾
グーネット
シボレー「コルベット E-RAY」発表 史上初の電動化&AWD車 加速性能は歴代最速に
シボレー「コルベット E-RAY」発表 史上初の電動化&AWD車 加速性能は歴代最速に
グーネット
ホンダ、新エアロにより最高速は向上も残る課題。新エンジン投入はサマーブレイク後の見込み/第7戦イタリアGP
ホンダ、新エアロにより最高速は向上も残る課題。新エンジン投入はサマーブレイク後の見込み/第7戦イタリアGP
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村