マクラーレンは、新品ソフトタイヤを使い果たしながらもF1アゼルバイジャンGPのスプリントシュートアウトSQ3に進出したランド・ノリスに、インターミディエイトタイヤを履かせることを検討していたことを明かした。
アゼルバイジャンGPから新たなスプリント・フォーマットが導入され、スプリントレースのスターティンググリッドを決めるための予選となる”スプリントシュートアウト”が実施された。
■F1分析|スプリントで丸裸に! 大きすぎるフェラーリのデグラデーション……これでは決勝戦えない??
スプリントシュートアウトでは、SQ1~SQ2は新品のミディアムタイヤ、SQ3は新品のソフトタイヤでの走行が義務付けられている。
しかしノリスは、金曜日の予選でのポジションアップを目指し、Q3までに割り当てられている全6セットのソフトタイヤを使用。これにより、SQ3で使える新品ソフトがない状態となっていた。
そして実際に行なわれたシュートアウトで、ノリスはSQ3に進出。走行しないままセッションを終え、10番手からスプリントレースに臨んだ。
だがマクラーレンは規則の抜け穴を活用し、SQ3でノリスにインターミディエイトタイヤを履かせることを視野に入れていたという。
レギュレーション上、フリー走行ではウエットトラック宣言がなされない限り、インターミディエイトやウエットタイヤを使用することはできない。一方で、予選ではそうした制限は存在しない。スプリントシュートアウトが雨に見舞われ、新品のスリックタイヤで走行できないケースも出てくるだろう。
当然ながら、ドライコンディションの予選で雨用のタイヤを履いても何のメリットもないため、これまでそれが問題視されることはなかった。だがスプリントシュートアウトでの使用タイヤに厳しい制限が設けられたことで、メリットが生まれることになったのだ。
前述のように、ノリスは走らずにSQ3を終えたが、もしトラブルで走れなかったり、タイムを出す前にクラッシュした車両があった場合、ノリスがインターミディエイトタイヤを履いてタイムを出せば、そうした車両を上回ることができた可能性がある。
仮に、ノリスと同様にソフトタイヤを使い切っていた角田裕毅(アルファタウリ)がSQ3まで進出していれば、インターミディエイトタイヤでふたりがアタックし合う展開になった可能性もある。
ウエットタイヤの使用に関するこのグレーゾーンは、今回の変更を決定したスポーツ・アドバイザリー・コミッティの議論でも話題に挙がったというが、すべてを網羅するには時間が足りなかったようだ。しかし、オーストリアで開催される次のスプリントまでには、この問題は解決される見込みである。
SQ3に進出したにも関わらず、走れなかったことについて尋ねると、ノリスはフラストレーションを感じたとmotorsport.comに語った。
「当然だ。予選は楽しい。おそらく週末の他の部分よりもね」
「レースも大好きだけど、予選は全開で走れる。それができるのは一度きりだ。そうだね、ちょっと嫌な感じはした。ただ良いラップを刻んで、自分が何ができるかを確認する機会を得たいだけなんだ」
「滅多にないとは思うけど、(金曜予選の)Q3でタイヤを使い切ったから、SQ3には誰も出ないという状態も起こりうる。そうなると、TV的にあまり良い印象は受けないかもしれない」
「そしてルールが変わっていくんだ。でも1台か2台がそうだからといって、ルールが変わることはおそらくないだろう」
なおノリスは、スプリントレースをソフトタイヤでスタートした。この選択は少数派で、同様の戦略を採ったのはバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)のみだった。
結果的にノリスは早い段階でタイヤのデグラデーション(性能低下)に苦しみ、17位でレースを終えた。本人は、正しい判断ではなかったと結論付けている。
「ソフトを履いた人たちは同じような間違いを犯したと思うし、みんなデグラデーションでかなり苦労していた」
「僕らが思っていたよりも(デグラデーションが)ずっと多かったんだ。ソフトで長い距離を走ることができないのは、この週末における課題のひとつだと思う」
「それで3周以上走っていないんだから厳しいね。純粋なギャンブルというわけではないんだ。ただ僕らがベストだと思ったことが、明らかにそうでなかった。だから、おそらく決勝でこのタイヤは使わないだろう」
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