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【試乗】4輪操舵もいい! コンフォート性も高い! 「さすがクラウン」と思わせる新型の走りを徹底リポート

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【試乗】4輪操舵もいい! コンフォート性も高い! 「さすがクラウン」と思わせる新型の走りを徹底リポート

 この記事をまとめると

■新型クラウン・クロスオーバーGアドバンスドに中谷明彦さんが試乗した

クロスオーバーって「SUV感のあるクルマ」のことじゃないの? 新型クラウン発表で噴出した疑問に回答!

■スタイリングや駆動方式こそ新しいが使い勝手に優れたインテリアとクラウンらしい装備が印象的

■ジェントルに走らせることが乗り心地にも燃費にもよく、この新型クラウンには似合う

 スタイリッシュなボディフォルムでひと目みて気に入った

 新型クラウン・クロスオーバーGアドバンスドグレードに試乗することができた。

 クラウンといえば「いつかはクラウン」というキャッチコピーで長く日本人の憧れのクルマとして、またトヨタのフラッグシップセダンモデルとして君臨してきたことで知られる。 1955年に初代クラウンが国産初の量産乗用車として登場し、以来ずっとフロントエンジンで後輪を駆動するFRレイアウトであり続けてきたことも特徴といえるだろう。

 しかし、新型クラウンはその発表時に明らかとなったスペックで、多くのクラウンファンや自動車業界関係者を驚かせることとなった。それは伝統的だったフロントエンジン、後輪駆動のFRパッケージを廃止し、フロントエンジン横置き、FFベースのハイブリット(HV)システムにトヨタ独自のE-Four、すなわち電制4輪駆動モデルの設定のみとなることが明らかになったからだ。

 さらに、クロスオーバーと呼ばれるSUVテイストなデザインも大きなインパクトを与えることとなった。トヨタのアナウンスによれば、今後セダンやハッチバック、さらにエステートモデルに近いSUVも順次投入されるということで、世界マーケットへの投入を見据えたバリエーション展開にも注目が集まっているところだ。

 今回試乗したクロスオーバーGアドバンスドは、そのうち最初に投入されるモデルである。パワートレインは2.5リッターのダイナミックフォースエンジンにHVを組み合わせたHEVモデルで、リヤアクスルにも駆動モーターを搭載する4輪駆動モデルである。このHVユニットはすでにカムリなどにも搭載され、その燃費性能の良さやドライバビリティ、耐久性などあらゆる面で高い実績を証明されているものだ。

 今回、このパワートレインを採用するにあたっては、GA-Kプラットフォーム(カムリやハリアーに採用されている)を流用することで可能となり、またキャビンフロアから後半部分は新型クラウン専用のプラットフォームを新しく起こして一体とすることで完成させている。

 試乗会場で実際に新型クラウンを目の前にしてみると、スタイリッシュなボディフォルムがじつに印象的だ。20代の若手デザイナーがデザインしたといわれ、現代の時流に即したスタイリッシュなフォルムとなっている。フロントノーズからなだらかなルーフライン、そしてテールエンドに至るまで曲線を基調としてスムースな造形で形づけられ、またヘッドライトやフロントバンパーカウル、サイドガーニッシュにホイールアーチなど細かなディティールに関してもクロスオーバーモデルとして格好良くバランスの良いフォルムに仕上がっている。僕自身もひと目見て気に入ったデザインである。

 また、外観的にキーポイントとなっているのは21インチもの大径ホイール/タイヤを装着したことで、これがホイールハウス内に非常にきれいに収まり、またその表面もフェンダーと高さ、幅が面一で維持されている。大径ホイールであることを最初に念頭に置いてデザインしたというだけあり、タイヤ/ホイールの収まりが抜群に良い。

 コクピットに乗り込むと、インテリアは近代的でモダンな装備と使い勝手が融合されていることがわかる。 大きなセンターモニターやメーターの液晶パネルはほかのモデルでもすでに常識化されたアイテムだが、エアコンやシートヒーター、シートクーラーなどのスイッチは物理スイッチが採用されていて使い勝手が良さそうだ。

 FFベースになったことでフロアトンネルが低くなり、そこにはしっかりとしたセンターコンソールが設置される。また、シフトレバーは短いレバー方式でセンターコンソールの右寄りに配置され、左側にはドリンクホルダーなどが備わる。このグレードモデルにおいては特筆するような装備は見当たらないが、ドライブビューをワンスイッチで起動できるスイッチやドライブモードスイッチなど、使い勝手は極めて良さそうである。

 ペダルまわりはクラウンの伝統ともいえるオルガン式のアクセルペダルにフットレストとブレーキペダルが整然と配置され、電動アジャストのステアリングチルトやテレスコクピット調整機能、またシートも左右とも電動でアジャストできる。

 運転席から助手席のシートスライドやリクライニング角度を調節できるスイッチなど、クラウンとしての伝統的な装備も引き継がれているのが嬉しいところだ。

 直進安定性が高く4輪操舵システムによりよく曲がる

 走り始めると、タイヤが数回転ころがったときに、まず乗り心地の良さが際立っていることがわかる。21インチタイヤを採用したことで、足まわりの硬さを気にして試乗に臨んだが、とくに大きな段差等を通過しない限りにおいては、しなやかな乗り味が確認できた。路面の継ぎ目やパッチなどにおいても多少のハーシュはあるものの、21インチタイヤの常識的な印象からすれば、はるかに快適さが高く保たれているといえる。

 これには標準装着されるミシュランのeプライマシータイヤの完成度が大きく貢献しているはずだ。ころがり抵抗を極力抑え、燃費向上に貢献するというeプライマシータイヤだが、こうした乗り心地面を犠牲にしていないことも重要な評価ポイントといえるだろう。

 走り始めは電動モーターによるEVモードであり、発進時には後輪モーターもアシストしてスムースな発進加速を実現している。速度が上がると後輪モーターはアシストを停止し前輪駆動としての走行に切り替わる。ただ前輪が雨や雪などでスリップしたり、あるいはコーナリングGが感知されると後輪モーターもすぐに駆動力アシストを再開する。車両姿勢安定やトラクションの確保に役立っているのだ。

 高速道路に乗り出すと、ステアリングの直進安定感がものすごく高く、クルマのシャシー剛性の高さやサスペンションのアライメント、ジオメトリー等の正確さなども際立っていることがわかる。直進性の高さは特に高速走行の多い欧州や北米などでも重要視されるポイントで、今回この新型クラウンが北米や中国など欧州も含めて世界中に展開される初めてのクラウンとして、こうした部分に特に神経が注がれているといえそうだ。

 加速シーンではエンジンが始動しダイナミックフォースエンジンがシャープに吹き上がる。その音量は決して大きくなく、ただ回転数が高めに維持される部分は従来のトヨタのハイブリッドシステムの常といえるが、その際のノイジーなサウンドが唯一気になる部分といえなくもない。

 全般的に遮音や室内の静粛性においては、クラウンの利点として引き継がれており、新型においても外界のノイズを遮断しエンジン音が始動したときの音のみが聞こえるといった静かなキャビンが実現されている。

 HVシステムの作動マナーはプリウスなどほかのトヨタ系HVシステムと同じで、モーターの力強さと効率の良いエンジンの始動バランス、さらに回生時の効率の良い制御がドライバビリティを損なうことなく実現されていて運転しやすく扱いやすい。

 最大加速など動力性能的には1.7トンの車重であることを考えても、それほど物足らなさを感じないが、かといって決してパワフルさを売りとしているものでもないことがわかる。非常にジェントルにマナーよく走らせることがこの新型クラウンにとってもっとも燃費にも優れ、乗り心地や快適性を引き出せるドライビングとして受け入れられることだろう。

 さらに、今回走らせて特筆すべき点として挙げられるのは後輪の操舵システムである。これは時速60キロを堺点に低速では逆相に最大4度、高速では同相に後輪を最適角に操舵することで車庫入れやUターン時などの大舵角での取りまわし性の良さを発揮しつつ、高速走行時の旋回安定性なども両立している重要な部分である。アイシン製の4輪操舵システムを採用したことにより、従来のFRクラウンの最小回転半径5.5mに対し、この新型クラウンはFFベースであり、かつ21インチの大径タイヤを装着しつつも最小回転半径を5.4mとより小さくなっている。それは交差点を曲がるとき、あるいはUターン、車庫入れする時などにも扱いやすさを際立たせていて、新型クラウンを特徴付ける重要なアイテムとして、すでに大きな役割を果たしているといえるだろう。

 クロスオーバーといえども最低地上高は145mmと従来のセダンモデルの135mmから10mmほどしか高くなっていない。したがって、悪路を踏破するようなイメージは持たないほうが無難だが、四輪駆動システム制御の完成度が非常に優れていて「雪道など低ミュー路での走行をものすごく得意としている」というエンジニアからの話があった。まもなく冬の時期を迎えるので、雪道シーズンになればぜひその雪道性能を試してみたいと思う。

 また、11月にはよりパワーアップされた2.4リッターのターボチャージャー付エンジンと、トヨタとしてははじめてのシングルモーターに6速トランスミッションを組み合わせたまったく新しいパワートレインを装備するRSが追加発売されるという。 こちらはその動力性能と4輪駆動E-Fourシステムのバランスの良さ、完成度がさらに高いということで、その登場が楽しみだ。

 最後に後席にも試乗してみたが、FFベースとなったことで後席足もとがフラットとなり非常に広い。ホイールベースはFRモデルの先代よりも短くなっているにもかかわらず、足もとスペースが広く感じられるのはFFベースとなっていることが大きく貢献しているといえるだろう。

 Gアドバンスドでは、リヤのシートヒーターやシートリクライニングが備わっていないが、RSではそうした部分の装備も追加されるという。その辺も楽しみにして確認していきたいと思う。

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