Mercedes-Benz GLS 350 d 4MATIC Sports × TOYOTA LAND CRUISER ZX
メルセデス・ベンツ GLS 350 d 4マティックスポーツ × トヨタ ランドクルーザー ZX
メルセデスとトヨタが雪上で激突! GLSとランクル、本格オフローダーの日独代表を徹底比較 【Playback GENROQ 2017】
日独、王道決戦!
もはやラダーフレームでなくてもSUVとしての性能は十分。そんな時代に未だ世界的人気SUVのランドクルーザー。対するはメルセデスSUVのトップレンジを受け持つGLS。高い走行性能と7人が乗れる居住性を両立する日独代表的SUVを雪道に連れ出し、徹底的に評価した。
「GLSはスノーモードを選択しておくだけで誰でも簡単に雪道を走れる」
雪が降り積もってから少なくとも1週間は経過した圧雪路をまずはGLS 350 dで走り出す。スタッドレスタイヤを履いているので多少の上り坂でも発進はフールプルーフ。ダイナミックセレクトでスノーモードを選択しておくだけで誰でも簡単に雪道を走れる。除雪が行き届いた日本のスキー場であれば、GLS+スタッドレスタイヤで行き着けないケースはまずないだろう。
試乗コースの途中に急な下り坂があった。落差は5mほどだが、公道では決してお目に掛かれない、ちょっとしたガケのような急勾配だ。しかも表面はうっすら凍っている。ここをソロソロとGLSで進むと、あるところでタイヤがすっと流れた。念のためブレーキをかけたが、ABSがギリギリと作動音を立てるばかりでタイヤが路面を捉えている感触はまるでない。2mほど滑ったところでグリップが回復して止まったが、クルマをまったくコントロールできないもどかしさは残った。
「GLSはオンロード重視のセッティング」
もうひとつ、このとき不安に感じたのがステアリングインフォメーションのデッドな点。このため路面コンディションを事前に掴むことができず、これがある種の恐怖心につながったことは否めない。もっとも、オンロードではステアリングのキックバックなどないほうが洗練されていて快適に感じられるから、インフォメーションの多寡はオンロードとオフロードでトレードオフの関係にあるともいえる。言い換えればGLSはオンロード重視のセッティングなのだ。
続いて同じセクションをランドクルーザー ZXで走る。果たして件の急勾配でどんな挙動を示したかといえば、GLSと同じでなす術もなくずるりと坂を滑り降りるのみ。もっとも、こちらはGLSと違ってステアリングインフォメーションが豊富なため、タイヤが小さな雪のコブに乗り上げたことも滑りやすい氷に足を踏み入れたことも逐一把握できる。だから、結果的にはGLSと同じで氷を捉えきれなかったけれど、手のひらの感触で氷に乗ったことが掴めたランドクルーザーのほうが事前に心の準備ができて安心感は強かった(タイヤはどちらもブリヂストン・ブリザックDM-V2を装着)。
「快適そのものといえる合理性か、心構えから違うオフロード装備か──」
GLSとランドクルーザーで印象に大きく差がついた理由はどこにあるのか。ハードウェアの構成を見ると、2台がまったく異なる目的で造られたことがわかる。ランドクルーザーは頑丈なラダーフレームに足まわりやドライブトレインを固定し、その上にボディを載せるSUVとしては伝統的な成り立ち。独立したフレームを持つボディ構造は耐久性が高いものの軽量化は難しい。また、後輪に採用されたリジッドサスペンションはストローク時のキャンバー変化が少なく、これがオフロード走行時にはメリットとなる一方で、巨大な車軸全体が上下にストロークするためバネ下荷重は重くなり、乗り心地や高速走行時のロードホールディングの面では弱点となる。つまりランドクルーザーはオフロード走行のために造られたクルマなのだ。対するGLSのボディはモノコック構造でリヤサスペンションはマルチリンク式。従ってオンロードでの快適性やロードホールディングといった面で多くのメリットを備えていることになる。
駆動系の操作方法にも2台の違いは明確に表れている。ダイヤルを回すだけでエンジン、駆動系、ギヤボックス、サスペンション、ステアリングを一括して設定できるGLSに対して、ランドクルーザーはトランスファーならトランスファーの切り替えだけ、センターデフのロックにはそれ単独のスイッチが用意されるといった具合。もっとも、それらを個別に設定しなければいけない状況は決して多くないからGLSのほうが合理的なのは確か。ただし、GLSではオプション設定となるトランスファー切り替えやセンターデフのロックをランドクルーザーは標準装備するなど、2台の“心構え”はここでも大きな開きがあった。
「一般的なユーザーがランクルのオフロード性能をフルに引き出せる機会は滅多にない」
では、2台のオフロード性能に決定的な差はあるのか? 凍った下り坂で両車が路面をグリップできなかったことは前述の通り。一方、人が立っても沈み込まない程度に圧雪となった深い雪道にランドクルーザーで進入しようとしたところ、1mほど進んだところで4輪が空転し進めなくなってしまった。センターデフをロックしてもトランスファーをローに切り替えてもこれを乗り越えられず、ここで退却を余儀なくされるという事態に遭遇した。
ひょっとするとスキルの高いドライバーであれば、あの難局を突破できたかもしれない。また、より強力なスノーグリップを有するタイヤを装着していれば、ランドクルーザー本来の走破性を発揮して立ち往生せずに済んだ可能性も考えられる。もっとも、私の腕前とブリザックの組み合わせは、日本における平均的な使い方とそう大きく変わらないはず。だとすれば、一般的なユーザーがランドクルーザーのオフロード性能をフルに引き出せる機会は滅多にないといっても過言ではないだろう。
そうなると「オフロードのため」と思ってガマンしてきたランドクルーザーの荒れた乗り心地やキックバックの多いステアリングから急速に心は離れていく。しかもGLSにはメルセデスの先進的な運転支援装置が漏れなく付いてくる。燃費だって、高速道路や山道を織り交ぜた総合でディーゼルのGLSが10.1km/L、プレミアムガソリンを要求するランドクルーザーが5.9km/Lと大きな開きがあった。GLSがお勧めとなるのは当然の結論だ。
「耐久性、整備性、パーツの入手しやすさなどはライバルを圧倒しているランクル」
しかし、今回のテストだけでランドクルーザーの真の実力を測るのは不可能である。なにしろ世界中の辺境の地でもっとも愛用されているオフローダーこそ“ランクル”なのだ。その耐久性、整備性、パーツの入手しやすさなどはライバルを圧倒しているほか、トヨタのエンジン技術者からは「社内にはランクルだけの特別な基準があって、通常のエンジンが20~30万kmを目標としているのに対し、ランクルだけは50~60万kmの耐久性が求められる」との話を聞いたことがある。実際に手に入る性能だけがクルマ本来の価値ではない。その背景にあるストーリーを含めて自分にあった1台を選ぶのも、エンスージアストにとっては楽しみ方のひとつであるはずだ。
REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
【SPECIFICATIONS】
メルセデス・ベンツ GLS 350 d 4MATIC Sports
ボディサイズ:全長5140 全幅1980 全高1850mm
ホイールベース:3075mm
車両重量:2580kg
エンジン:V型6気筒DOHCターボ
総排気量:2986cc
圧縮比:15.5
最高出力:190kW(258ps)/3400rpm
最大トルク:620Nm(63.2kgm)/1600-2400rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後295/40R21
環境性能(JC08モード)
燃料消費率:12.4km/L
車両本体価格:1190万円
トヨタ ランドクルーザー ZX
ボディサイズ:全長4950 全幅1980 全高1870mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2690kg
エンジン:V型8気筒DOHC
総排気量:4608cc
圧縮比:10.2
最高出力:234kW(318ps)/5600rpm
最大トルク:460Nm(46.9kgm)/3400rpm
トランスミッション:6速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後トレーリングリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後285/50R20(8.5J)
環境性能(JC08モード)
燃料消費率:6.7km/L
車両本体価格:682万5600円
※GENROQ 2017年 3月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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みんなのコメント
始めから明らかにメルセデス寄りの記事。
ランクルが良いにもかかわらず、「快適性」や「オーバースペック」などとケチをつけている。
本格オフローダーの対決と言っているんだから、その点で比較するべき。
例えば20万円と10万円のPCの性能差を比較して、性能が高いので20万円のPCをオススメする、とドヤ顔で言われても???ですよね。