当時の姿を確認することができる貴重な1台
三重県明和町に本拠を置き、車両の販売からメンテナンス、カスタム、チューニングまでを手がけ、クルマ好きをトータルバックアップしているCREWCH(クルウチ)。同社が東京オートサロン2023で168番目に生産された日産スカイライン2000GT-R(ケンメリGT-R)を披露した。
いま「ケンメリGT-R」を試乗して感じたS20型直6エンジンの熟成度とは? レース参戦していたらもっと先鋭的になっていた!?
CREWCHでは、往年の名車を複数所蔵したクルウチ博物館を展開しており、この白いケンメリGT-Rも同社のコレクションとして大切にされている個体のひとつだ。外装をペイントしたぐらいで、そのほかの部分はフルノーマル状態を維持しており、新車としてデリバリーされた1973年当時のディテールを確認することができる。
ケンメリという車名を見たり聞いたりしたときに「あー、ケンとメリーのスカイラインというキャッチコピーで登場した4代目スカイラインのことだね」と即答できる人は相当な日産好きだ。若い世代のクルマ好きは知らないかもしれないので、あらためて説明すると、ケンメリの由来は、CMに登場していた若い男女のカップルの名が「ケンとメリー」だったからである。
当時の世相と見事にマッチしていたケンメリ
レースで常勝を誇った先代モデルの硬派なイメージとは異なるソフト路線のCMだったが、CMソングの「ケンとメリー ~愛と風のように~」がオリコンのランキングで19位になるなど、当時の世相と見事にマッチしていた。広告ビジュアルの第15作目のロケ地となった北海道美瑛町にはCMに登場した“ケンメリの木”が現存しており、いまも人気の観光スポットとなっている(筆者も2017年に行ってきた)。
古くからの日産車フリークにとって、直列6気筒DOHC24バルブのS20型エンジン(最高出力:160ps/7000rpm)を搭載しているケンメリ時代のスカイライン2000GT-R(KPGC110型/1973年登場)と、先代にあたるハコスカ時代のスカイライン2000GT-R(4ドアセダンのPGC10型/1969年登場、2ドアハードトップのKPGC10型/1970年発売)は特別な存在だ。
ハコスカとは1968年に発売された3代目スカイライン(C10型)のことで、ケンメリはその後継モデルとして1972年に登場した4代目スカイライン(C110型)のことである。ケンメリの4ドアセダン仕様は、自動車趣味人の間で“ヨンメリ”とも呼ばれている。
C10型時代に展開された「愛のスカイライン」というキャッチコピーがC110型にバトンタッチしてからも引き続き使用され、既述したように4代目スカイラインはCMこそソフト路線だったものの、先代モデルと同じようにスポーティグレードの2000GT-Rが設定されたのだ。
今後もリペアなどせずにオリジナルを保つ
前後オーバーフェンダー、専用ラジエターグリル、リアスポイラーなどを装備していたケンメリGT-Rは、自動車趣味人の間で“幻のGT-R”と呼ばれているが、それはKPGC110型スカイライン2000GT-Rがわずか197台しか生産されなかったからだ。発売当初に期待されていたレーシングバージョンは、結局コンセプトカーが発表されたのみで登場しなかったことでも有名である。
幻のGT-Rとなってしまった理由は、一般的にフロントに搭載していたS20型エンジンが昭和48年排出ガス規制に適合しなくなったためだといわれているが、S20型エンジンの在庫数が197台分だったから少量生産になったという噂も……。
S20型エンジン用のソレックスキャブレターが197台分だけ残っていたからその生産台数になったという説もある。自動車の歴史を辿ると、厳しい排出ガス規制により、名機を積んでいる国産スポーツカーが次々生産終了となってきたが、ケンメリGT-Rも登場したタイミングが悪かった不運のモデルだといえるだろう。
CREWCHのケンメリGT-Rは、鉄製グリルが錆び、エンブレムの塗装が剥がれてきているが、リペアすることなく、あえてそのままにしている。エキゾーストマニホールドやエアクリーナーボックスも交換しがちだが、それらも変更することなく往時のパーツを遺し、各部をオリジナル状態のままにしているのだ。
来年の東京オートサロンにおいても、国産スポーツカーの国内保存を目的としたコレクションを形成しているCREWCHが貴重なクルマを披露してくれるだろう。
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