■モーターサイクルでは珍しいものの定評あるBMWのシルキーシックスを搭載
BMWといえば、言わずもがな欧州ドイツのメーカーですが、「Grand America(グランド・アメリカ)」を名乗ります。広大なアメリカ大陸を快適にクルージングできる装備と性能を持ち合わせているのです。
BMWで一番ちいさなバイク 普通二輪免許で乗れる「G 310 R」の存在感
ベースモデルは2017年秋に発売されたバガースタイルのクルーザー『K1600B』で、160馬力を発揮する並列6気筒エンジンを心臓部に持ちます。6気筒というのはオートバイでは珍しく、大排気量モデルを得意とするBMWモトラッドでも他にはない、K1600シリーズならではの専用パワーユニットです。
四輪自動車でも“シルキーシックス”と称えられたBMWの6気筒エンジンは、極低回転域から潤沢なトルクを発揮し、クラッチを繋ぐだけでスルスルッと巨体を前進させ、アクセルを開ければフワっと軽やかで強烈な加速が味わえます。
1649ccもの排気量があり、最大トルクも175Nm/5250rpmと強力なエンジンですが、扱いにくいと感じないのはどこからでもアクセルを捻れば加速してくれるからで、エンジンを引っ張り上げることなく早めにギアを6速に上げても粘り強くトルクを発揮し、100km/h巡航は2800回転ほどでこなしてくれます。
エンジンを高回転まで回せば、シューンっと滑らかにストレスなく回り、振動の少ないジェントルな一面と唸りながら猛ダッシュする凶暴ともいえる側面、2つの顔を持ち合わせていて飽きません。パワフルなのにマイルド。上質感のあるパワーフィールが魅力的です。
■快適な走りをもたらす先進装備満載のラグジュアリー・グランドツアラー
迫力ある大柄なボディは見るからに重そうですが、走り出すと身のこなしが軽く、大きさを忘れてしまいます。ハンドリングも軽快でコーナリング性能も高いのが、K1600シリーズに共通するところ。ダイナミックにワインディングを駆け抜けることができるのです。
クラッチ操作なしでシフトアップとダウンができるオートシフターのおかげで、オートマチック感覚で走れます。たとえばコーナー進入時にシフトダウンしたいときも、シフトペダルを踏み込むだけで自動でエンジン回転数を一瞬高めてくれるし、ギヤを上げていくときもペダルをかき上げていくだけ。ライディングに余裕をもたらします。
雨が降ってきたり、スロットルレスポンスが鋭すぎると感じたら、ライディングモードを「レイン」に設定するだけで穏やかなパワーフィールとなり、トラクションコントロールの介入も強まります。
また、リバウンドダンピング(伸び側)とバネレートを電子制御するダイナミックESAは、「クルーズ」モードを選ぶと前後サスペンションが滑らかに動き、その名のとおりクルージング時に最適な乗り心地重視の設定です。
取り回しはなんといってもバックさせるのが一苦労ですが、セルモーターを利用したリバース・アシストを搭載するので後進も楽々です。シート高は750mmと低く両足がしっかり地面に届くので、後退時にバランスを崩すということもありません。
坂道ではヒル・スタート・コントロールが発進を助けてくれます。ブレーキレバーを強めに握ると機能がスタートし、ブレーキペダルを踏まなくともリアには制動力が発生。ライダーはスロットルグリップとクラッチレバーの操作だけに集中して、坂道発進ができるのです。
機能作動中はメーター内のインジケーターで知らせ、車速に応じて解除。右回りのUターン、タンデムや滑りやすい路面のとき、ブレーキペダルに足をかけず両足を地面に下ろせます。
■ハイウェイに上がったらもう王様気分 ジェントルなライディングがよく似合う
高速クルージングでの快適性は圧倒的で、路面追従性に優れる前後サスペンション、前のめりを抑制するデュオレバー、長いホイールベースによって素晴らしい乗り心地を発揮します。
ステップが従来の位置にあるほか、前方にフットボードも備わって足もとの自由度が高く、ライディングポジションもゆったりとしたもの。電動調整式のスクリーンを高い位置に上げ、クルーズコントロールをセットすれば、どこまでも、いつまでも走り続けたくなります。
トップケースはバックレスト付きで、タンデムで長距離を走っても前後どちらのライダーも疲れ知らずでしょう。実際、リアシートに人を乗せて走りましたが、ハンドリングへの影響はほとんどなく、高速クルージングではソロと変わらない抜群の安定性です。
キーロックできるパニアケースは37リットルの容量が確保され、トップケースと合わせ2人分の荷物を楽々収納できます。ソロもいいですが、2人乗りで泊まりがけのツーリングに出掛けたくなる、そんなオートバイだと思います。
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