欧州の自動車文化が生み出したWRC(世界ラリー選手権)は長い歴史を誇るが、それだけに観客の親近感は強く、かつては度を越したような行動がみられることも。
現在よりも規制が緩かったこともあり、観客がコースに飛び出してしまうようなこともあった。今回は佐久間健氏が目撃した決定的な瞬間をご紹介しよう!
競技中のラリーマシンは常に危険と隣り合わせ!! WRCの最前線でカメラがとらえたクラッシュの決定的瞬間!!
文・写真/佐久間健
■撮影に夢中なあまりコースに飛び出す観客
元チャンピオン、ミキ・ビアシオンのフォードエスコートRSの前に飛び出しカメラを構える観客!!
今回は長年のWRC取材の現場の中で出会った、「危ない!」と思わず叫びそうになった危険なシーンをご紹介しよう!
最初は1993年のアクロポリスでのミキ・ビアシオンのフォードエスコートRS。ランチアデルタでチャンピオンを獲得するなど人気の高いイタリア人ドライバーのファンなのか、コーナーのイン側で無防備に写真を撮るギャラリーの姿だ。
このあとマシンは何事もなく通過していったが、ドライバーにしてみればたまったものではない。アクロポリスのグラベル(未舗装路)でのスピンは、イン側に巻き込む可能性をはらんでいるからだ。
安全基準が厳格になった現在のWRCでは、メディアでさえも撮影はおろか立ち入ることもできない場所となっている。
■高速のターマック(舗装路)でのハイスピードクラッシュの恐怖
ラリー・カタルーニャのハイスピードなターマックコースで、シトロエンC2は岩にタイヤをひっかけて大きなダメージを負った
次は、スペインで2005年に開催されたラリー・カタルーニャでのクラッシュ。このシトロエンC2は、手前のコースを写真の右の方から走ってきて、イン側にあった岩に右フロントタイヤを引っかけてクラッシュ。
WRCのターマック(舗装路)ラリーは、高速になる区間も多く、タイヤをちょっと引っかけただけでも大ダメージにつながりやすい。C2はタイヤが取れただけでなく、ホイールのスポークが折れ、リムも欠けてしまっている。
現場近くに落ちていたショックアブソーバーにはドライブシャフトやブレーキディスク、破損したホイールのハブが付いたままだった。
特にすごいのはボディのダメージで、タイヤを引っかけただけなのにボンネットが大きく変形し、ドアもずれてマシン全体が歪んでいることだ。
こういう高速が連続する場所で観戦するときは、いつクラッシュによってタイヤやその他のパーツが高速で飛んでくるか判らないという恐ろしさがある。マシンの動きに注意して、観戦することが大事なのだ。
■コースを横断する観客
ラリー・アルゼンチンでジャンプするランエボの前で、平然とコースを横断する観客
これは2004年のラリー・アルゼンチンでのことだが、問題点は一目瞭然! ジャンプするラリーカーの前を横断するなんてありえない事態だ。これまで多くのWRCイベントを取材してきたが、ここ以外では見たことのないシーンだ。ランサーエボリューションのドライバーもたまげたことだろう。
最後にコリン・マクレーのフォードフォーカスを紹介しよう。マクレーは1999年に長く活躍したスバルをはなれてフォードに移籍。タイトルに使用した写真はその初戦となったラリー・モンテカルロの最初のSS(競技区間)での瞬間をとらえている。
SS1をスタートして100mほど走った最初の右コーナーでハーフスピンとなり、その後の立ちあがりで右側の観客の中へ飛び込んでしまった。スピードはかなり落ちていたものの、結果的に数人を跳ね飛ばす事態となった。
「これは大変なことになった!」と思ったが、ギャラリーの中に大きなけがをした人はいなかったようで、マシンが去った後も平然と観戦を続けていた。直後に現場で倒れている人はいなかったし、救急車が来ることもなかった。
今回ご紹介した写真では大きな負傷者は出なかったが、この当時のラリーは観戦者にとってもメディアにとってもは常に危険と隣り合わせだったのだ。
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みんなのコメント
当時三菱におったマキネンが、丘陵地のSSで道を横断してた牛に当たって、丘陵地をゴロゴロ転がり落ちてリタイアということがあった。
※マキネンもナビのハルヤンネ?も無事