今年7月8日、歴代で16代目となる新型へのフルモデルチェンジを受け、歴代で初めてFF方式に生まれ変わったクラウン。クロスオーバーを皮切りにスポーツ、セダン、エステートの計4モデルが順繰りに設定されるのだが、歴代モデルのなかでも特にエポックメイキングだったクラウンは果たしてどのモデルだったのか?
初代セルシオと同じ4LV8エンジンを積んだ8代目130系、「いつかはクラウン」という俳優、石坂浩二氏のナレーションによるCFキャッチが秀逸だった7代目120系、ヤマハ製のスポーツユニットである280psの1JZ-GTEエンジンを積んだアスリートが復活した11代目の170系などなど。トピックス性のあるクラウンについて歴代モデルのなかから国沢光宏氏が3台を選んだ。その理由とは?
新型クラウン登場で考える「歴代クラウンのなかでもエポックメイキングだったモデル3選」
文/国沢光宏、写真/奥隅圭之、トヨタ、ベストカー編集部
■歴代で最もクラウンらしさを失ったのが先代15代目だった?
結果的にFRサルーンとしては最後のモデルとなった15代目クラウンは2018年に登場。このモデルのマイチェンは行われぬまま、16代目に切り替わることになった
新型クラウンはトヨタも予想していなかったほどの話題を集めている。新型車の人気のバロメーターって、今やネット記事の本数。ヒットするや即座に新しい切り口で紹介記事出てきます。
グーグル先生にクラウンの記事を探してもらうと、もはや読み切れないくらいの本数。ユーチューブも10日間かけたってすべて見るのは難しいほど。というワケで、これもクラウンの関連記事です(笑)。そして切り口を変える(笑)。
クラウンは新型で16代目になるということを、どの記事でも紹介している。読者諸兄にとって一番印象に残るモデル、何代目だろうか? おそらく「失敗ですね」だけは皆さん同じモデルを選ぶと思う。
それは15代目でしょう。一番クラウンらしくないかもしれない。さまざまな都合でオーソドックスなセダンじゃなく6ライトセダンになってしまった。全体の雰囲気もトヨタのフラッグシップとして考えたら弱い。だから売れなかった。正しく徳川幕府15代将軍、徳川慶喜のようなクルマです。
■ふつうの自動車評論家だと8代目をエポックだと選ぶだろう
1987年に登場した8代目クラウン。初代セルシオにも搭載された4LV8DOHCエンジン搭載車も設定された。バブル期のクラウンにふさわしく、まさに売れに売れたモデルだった
逆に「最もエポックなクラウンは何代目か?」と聞かれたら、ふつうの自動車評論家なら「最も販売台数が多かった8代目」を挙げると思う。バブル景気ド真ん中の1987年にデビュー。
絶好調となる1991年まで販売していたモデルで、売れに売れた! 1990年なんか月販平均で2万台! 年間23万9858台も売れたほど! カローラを凌ぐ月すらあったというのだから驚く。
なぜ売れたのか? 前述のとおり、デビュー当時はバブル景気も始まったばかり。人気モデルを見ると2L6気筒スーパーチャージャー付きの4ドアハードトップだった。そして200万円台のグレードが主流。
1980年代前半から始まっていた「ハイソカー」の究極のような存在といってよかろう。景気上昇に合わせ、イケイケドンドン! 1989年にはセルシオ用に開発した4LV8をいち早くこのクラウンに搭載している。
今や面影もないが、この時まで「新しい技術はクラウンから」という鉄のようなオキテが存在していた。セルシオですら新開発の4LV8を最初に搭載できなかったんだから凄い!
ちなみにABSやトラクションコントロール、横滑り防止装置VSCなどすべて8代目クラウンでキックオフとなっている。そのほか、ステーションワゴンをラインアップするなどバリエーション豊富だった。
■国沢氏がエポックに選んだのは3代目白いクラウンと4代目クジラクラウン
3代目クラウンは1967年デビュー。「白いクラウン」のキャッチで、これまでの法人や公用車ユーザー向けから個人ユーザー向けに舵を切ったモデルだった
個人的には地味ながら3代目クラウンをエポックとしたい。1955年デビューの初代クラウンは98万円スタートとなり、当時の大卒初任給の1万2900円やラーメン一杯40円を考えたら、2000万円近い感覚だった。
ふつうの人からすれば手が届く存在じゃなかった。2代目クラウンになり、開業医や裕福な商店主などもユーザーとして出てくるものの、やはり1000万円超というイメメージ。
その流れを大きく変えてきたのが1967年発売の3代目だった。折しも我が国は「いざなみ景気」と呼ばれる長期間続く景気上昇にあって給料急上昇。初任給も3万円を超える。そんななか、登場した3代目はユーザーターゲットを大幅に拡大!
88万円というお買い得プライスの『オーナーデラックス』を設定。2代目までの公用車中心のマーケットから個人に切り換えた。
4代目クラウン(通称クジラクラウン)は1971年に発売。国沢氏が最も好みのデザインだったクラウンがこのクルマだという
余談になるけれど、この路線を引き継ぎ一段と調子に乗って作った4代目(通称クジラクラウン)はフリートユーザーから「威厳がない」と不人気。失敗作のレッテルを押されてしまうことになる。
ナニを隠そう私はクジラクラウンが歴代モデルのなかで最も好みのデザインだったりする。今見ても新しい。2ドアハードドトップなんかオシャレだ。2.6Lエンジン車はパワフルでしたね。
■最後の3台目はゼロクラウンの次となる13代目
2008年に登場した13代目クラウン。基本的にシャシーは先代型となる12代目のゼロクラウンのものをキャリーオーバーしている
ベストカーWeb編集部からベスト3を選ぶように言われている。ということで最後は13代目クラウンを挙げておく。ゼロクラウンと呼ばれた12代目の次となるが、ここまで読んで「12代目のゼロクラウンじゃないのか?」と思うだろうけれど、圧倒的に13代目です。
ゼロクラウン、乗り心地が硬くてクラウンらしくなかった。日本のユーザーって安っぽい乗り心地を案外容認する傾向。ゼロクラウンに乗った途端「こら、ないな」と思った次第。
13代目は地味な外観だったこともあり、話題性という点でイマイチながら、クルマの仕上がり具合は15代続いたクラウンのベストだと思う。しっとりとした乗り心地で、サスペンションのストローク感もある。ただ、このあたりからセダン人気に大きな陰りが出ており、ゼロクラウンほど販売台数が伸びなかったため埋もれてしまっていた。
さあ、果たして新型16代目の評価やいかに?
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みんなのコメント
別の書き方をすれば、ライバルがいなくなってから売れたクラウンは、良い車と言う印象が薄い
買えない自分が、憧れもつ車ではなくなってしまったなぁ。