これはバイク? 老舗ブランド「ロイヤルエンフィールド」で不思議な車両を発見!
現在もバイク生産を継続しているメーカーとして、世界で最も古いオートバイブランドである「ロイヤルエンフィールド」が、東京モーターサイクルショー2024(TMCS2024)に出展した。
ロイヤルエンフィールドはイギリス発祥で、現在はインドが拠点となっているが、“ピュア・モーターサイクリング”を伝統として掲げる姿勢は今でも変わらず、最新モデルも英国のクラシカルなスタイリングを貫き続けている。ここ最近、日本ではクラシックな外観に最新パーツを使用した“ネオクラシックモデル”が一大トレンドとなっており、同社のモデルも注目を集めている。
そんなロイヤルエンフィールドブースのメインステージ横に、異彩を放っているエンジン付き自転車のような車両が展示され、「PROJECT ORIGIN」という案内を発見したので、こちらを紹介したい。
若者とオッサンのハートを鷲掴み! “ネオクラ旋風”が 日本のバイクを盛り上げる! 【東京MCS2024】
写真をヒントに製作!「プロジェクト・オリジン」って何?
ロイヤルエンフィールドのはじまりは1901年にまで遡る。創立120周年を迎えた今年、その記念事業として、1901年ころに製作した自社初のモーターサイクルを忠実に再現する、という計画が立ち上がった。それが「プロジェクト・オリジン」だ。実はロイヤルエンフィールドは、伝統や歴史を重視した純粋なバイクづくりを信条としながらも、自社の最古のモデルを保有しておらず、当時の技術や知識を把握できていないことを嘆いていた。
そんな中、同社の歴史を知り尽くした社史研究家(ストーリーテラー)のゴードン・メイ氏らが世界中を巡り、実車を探す旅に出掛けた。しかし、残念なことに一台も見つけることはできなかったそうだ。そこでゴードン氏は、社内の有志と共にオリジナルモデルを再現したレプリカ製作を決意し、プロジェクトをスタート。
しかし、肝心の設計図も存在せず、残っていたのは1901年に撮影された数枚の写真、宣伝用の広告、図解入りのニュース記事のみだったという。それでも彼らは諦めず、サイズが26インチと判明していたタイヤと、写真に映ったパーツの縮尺を計算し、各パーツの再現に成功。そして見事、実際に走行が可能なレプリカを完成させた。
エンジンの始動も停止も一苦労、それでも先人の知恵には感動!
ゴードン氏によれば、プロトモデルのレプリカを完成させた過程で、当時の貴重な技術や、モーターサイクルへの考え方について、次々と発見があったそうだ。まず、目を惹くのはエンジンの搭載位置だ。
エンジンは前輪上部のステアリング・ヘッドに固定され、そこから革のベルトを介して後輪を駆動させる仕組みとなっている。エンジンの始動方法もユニークで、エンジン上部にあるシリンダーの中に、直接スポイトでガソリンを垂らし、小さな爆発を起こしてエンジンを温める。その後、ペダルを漕ぐことでエンジンが始動する。冷えた状態ではエンジンがかかりにくいため、その場合は配気管の熱でキャブレターをあたため、始動しやすくするそうだ。ちなみに、エンジンを始動させずに人力のみで走ろうとしても、車体が重すぎるため、モペットのような乗り方はできない。
エンジン始動後はガソリンタンク右脇のハンドレバー操作でキャブレターを開ける。すると、車両は勝手に最高速まで加速する。スロットルは存在せず、右ハンドルレバーでバルブリフターを調節することでシリンダー内の負圧をなくし、“加速させない”操作ができる。スロットルで加速させるのではなく、全開状態から出力を抑え込みながら走る、という乗り方が何ともユニークだ。
停止はどうするのかというと、まず、タンク脇のレバーでキャブレターを閉じ、右ハンドルレバーで排気バルブを開く。さらに左ハンドルレバーで前輪ブレーキと、ペダルを逆に漕いで後輪ブレーキをかけることで、ようやく停止できる。これだけの操作が必要だと、ピタッと停まるのは大変では? とゴードン氏に質問すると、「この時代は道路も整備されていないし、信号機もないから急ブレーキは必要ないよ」と、ごもっともな指摘を受けてしまった。たしかに、120年前はガソリンスタンドも存在しない時代なのだ。ちなみに、燃料はどのように確保していたかというと、薬局で「ベンジン(原油から分留精製した揮発性の高い可燃性の液体)」を調達していたそうだ。
120年の時を超えて現代に甦った、ロイヤルエンフィールド初のモーターサイクルは、先人の知恵と技術が詰め込まれた素晴らしい一台だった。この他にも、一枚の真鍮板から作ったという折りたたみ式の真鍮タンクや、ジッポライターのように使うライトなど、各パーツの解説もギャラリーページに用意したので、そちらもぜひ楽しんでいただきたい。
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