ますます重視する個室感
ウィラーが高速バス「ウィラーエクスプレス」で夜行向けの新シート「ドーム」を搭載した便を10月6日(金)から運行します。この新シート、3列シート全26席すべてが、固い“シェル”で覆われており、リクライニングしても後ろに座席が倒れることがなく、他の人に気兼ねすることがないのが特徴です。
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さらに、座席にはベビーカーの幌のような“カノピー”が設けられており、これを下ろせば胸のあたりまで完全に遮蔽されます。この装置をして、「圧倒的な個室感」「隠れ家のようなプライベート空間」などとうたわれています。
カノピーは、ウィラーの4列シートとしては最もスタンダードだった「リラックス」以来のもの。当初は、プライベート空間もさることながら、「寝顔を隠せる」などとうたわれていました。その改良版として2023年に登場した「プライム」はカノピーを大型化し、内部にスマートフォンホルダーを設置。暗い車内でも周りの人に気兼ねせず、スマホを使いやすくしたもので、これが今回の新シート「ドーム」にも採用されました。
こうしたカノピーを搭載したシートの車両では、もうひとつの特徴があります。それは車内の「完全消灯」を行わないことです。
深夜帯を走る夜行バスは基本的に“寝る場所”であるため、車内を完全に消灯するのが一般的。もちろん、光が漏れるスマホの利用には配慮が求められます。しかしウィラーのカノピーつき車両では、完全消灯ではなく青色の間接照明を用います。これはスマホの光が目立たず、なおかつ寝たい人にも邪魔にならないという理由です。
「完全消灯でスマホの利用にご配慮をといっても、乗務員は注意しきれません。もはやスマホを使うなというのは、生存権を奪われることに近いといっても過言ではないと思います。であれば、気兼ねなくお使いいただける環境を作る方が差別化につながるはず」。ウィラーエクスプレスの統括運行管理センター長、三浦文久さんはこう話します。
完全消灯=怖い 寝る以外にすることない?
「プライム」や今回の「ドーム」は、価格的にも若者向けです。コロナを経て、車内でのスマホの利用はさらに増えているといいます。加えて、女性客の多いウィラーでは、そもそも完全に消灯された車内が「怖い」という意見も根強いそう。
一方、「ドーム」と同じくシェル付きの3列シートを採用し、より座席数が少ない高級ラインに位置付けられている「リボーン」にはカノピーがありません。当初、完全消灯を行わなかったところ、やはり「寝られない」という意見から、完全消灯に切り替えたのだとか。いまは座席のタイプに応じて完全消灯を行う車両と行わない車両があるそうです。
2017年にリボーンが登場した当時は、“眠り”を追求したシートとして紹介されていましたが、プライムやドームでは“スマホを気兼ねなく使える”ことが強く押し出されています。座席がパーティションで仕切られた個室タイプのバスであれば最もそのニーズに応えられそうですが、それは、ほんの一握りの高速バスにしかありません。
夜行の移動手段は寝ながらにして目的地へ早朝に到着でき、現地で時間を有効に使えることが最大のメリットといわれます。ただ、その移動中に“寝るしかない”というのは、もしかすると時代に合わなくなってきているのかもしれません。
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