日本を代表するビジネスカーとして知られるトヨタのプロボックス/サクシード。
シンプルで機能性を追求したインテリアと5ナンバーサイズのボディによって、日本はもちろん、アジアやアフリカといった新興国でも大人気となっているクルマだ。カスタムの素材としても面白いし、かつてはサーキットでワンメイクレースも行われていたという意外な一面も持つ。
カスタムの素材としてもステキ! 日本が誇る営業車「プロボックス/サクシード」の中古車が人気上昇中!
そんな「素材感」に惹かれて、最近プロボックス/サクシードの中古車が人気だという。そこでプロボックス/サクシードとはどんなクルマなのか、中古車事情がどうなっているか紹介しよう。
文/萩原文博、写真/トヨタ、ベストカーWeb編集部
■日産 ADバンのライバルとして2002年に登場
2002年7月に登場したトヨタ プロボックス。プロボックスとサクシードは兄弟車で、写真のプロボックスはカローラ店&ネッツ店、サクシードはトヨタ店&トヨペット店で扱っていた
コンパクトクラスの新型コマーシャルバンとしてプロボックス/サクシードは、2002年7月に登場したロングセラーモデルだ。
プロボックスとサクシードは兄弟車で、プロボックスはカローラ店&ネッツ店、サクシードはトヨタ店&トヨペット店で扱っていた(サクシードはワゴンが2013年、バンが2020年にプロボックスに統合)。
ボディサイズだが、プロボックスの全長は4,125mm×全幅1,690mm×全高1,525mm。サクシードは全長が微妙に長く4300mmになるが、これはバックドアとリアバンパー形状の違いだ。両車とも、取り回しの良い5ナンバーサイズであることに変わりはない。
プロボックス/サクシードが高い走行性能を発揮させる秘訣は、サスペンションにある。フロントには、ステアリングギヤをサブフレーム付けとしたマクファーソンストラット式を採用。リアには、非線形型スプリングを用いたラテラルコントロールアーム付4リンクサスペンションを採用している。
これにより、乗車人数や積載量にかかわらず、優れた操縦性・走行安定性を確保するとともに、乗用車ライクな乗り心地を実現。さらに非線形たる型スプリングは、フロアのフラット化にも寄与している。
プロボックス/サクシードは、コンパクトサイズのコマーシャルバントップの荷室容量を実現し、プロボックスが2.40立方メートル、サクシードは2.43立方メートルを確保している。
シートバックを前倒しするだけで荷室スペースを拡大できるワンモーションタイプと、シートクッションを引き起こし、シートバックを前へ倒すツーモーションタイプの2種類を設定するリアシートを倒せば、プロボックスでは最長1,810mm、サクシードでは最長1,830mmの長尺物の積載が可能となっている。
■プロの仕事場としてデザインされたインテリア
初代トヨタ プロボックスのインテリア。シンプルでありながら、各所に備えられた収納など、機能性を重視したインテリアは現行型にも受け継がれている
外観デザインは、機能美にまで昇華されたプロの道具をイメージし、コンパクトなボディに機能を凝縮。コーナー部や各種断面を面取りさせた多面体形状とすることで、立体としての剛性感やタフさを強調している。
インテリアは、プロの仕事場として合理的で使い勝手の良い便利・収納機能を備え、くつろぎと楽しさを感じさせる室内空間に仕立てている。
インストルメントパネルおよびドアトリムアッパー部では、豊かな断面や触れたくなる質感・造形を追求し、ハードなビジネスの合間にも一息つける、ゆとりと安心感を提供している。
ダッシュボードロア部では小型パソコンの操作を可能としたほか、食卓としても利用できるインパネテーブルなどの便利・収納機能の充実させているのが特長だ。
デビュー時に搭載されていたエンジンは、最高出力109(4WDは105ps)を発生する1.5L直列4気筒ガソリンエンジンをはじめ、最高出力87psを発生する1.3L直列4気筒ガソリン、そして最高出力72psを発生する1.4L直列4気筒ディーゼルターボの3種類。
組み合わされるトランスミッションは5速MTを中心に、ガソリンエンジン車にはCVTを設定。駆動方式は2WD(FF)を中心に1.5Lエンジンにのみ4WDを用意している。
また、1.5Lエンジン車にはビジネスユースに加えて、パーソナルユースとしても幅広く使える5ナンバーワゴンを設定。専用ボディカラーのブラックを設定するとともに、サイドプロテクションモールを採用したほか、リアシートを座り心地を重視した厚めのタイプを採用した。
■2014年に劇的マイナーチェンジ、2018年にはハイブリッドも追加
2014年8月にマイナーチェンジ。プラットフォームを刷新し、自動車の型式が変更されたことから、実質的にはフルモデルチェンジとなる。写真はマイナーチェンジ後のプロボックス
プロボックス/サクシードは2014年8月にマイナーチェンジを実施。公式の発表はマイナーチェンジとなっているが、クルマの骨格に当たるプラットフォームを刷新し、自動車の型式が変更されたことから、実質的にはフルモデルチェンジと言える。
変更のポイントは、プラットフォームのフロント部を刷新し、サスペンションの構造を最適化。さらに、車速感応型電動パワーステアリングを全車に採用することで、空車時から積載時まで扱いやすく、高い操縦安定性と乗り心地の良さを実現したこと。
そして、搭載するエンジンは1NR-FE型へと変更された1.3L直列4気筒ガソリンエンジンと1.5L直列4気筒ガソリンの2種類となった。組み合わされるトランスミッションも全車CVTとなっている。
外観では、フロントバンパー&グリル、ヘッドランプ、リアコンビネーションランプなどの意匠変更によってタフさを強調。さらにVSC&TRCやヒルスタートアシストコントロールを全車標準装備するなど安全性を向上させている。そして、このマイナーチェンジによって5速MT車とワゴンモデルが廃止された。
そして2018年にはプロボックス/サクシードに、1.5L直列4気筒エンジン+モーターのハイブリッド車を追加。また全グレードに、昼間の歩行者も検知対象に加えた「プリクラッシュセーフティ」を採用した衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense」を標準装備した。
さらに、盗難防止用のイモビライザーを新たに標準装備するなど、優れた安全・防犯機能を確保している。
■絶版になったサクシードの中古車相場が上昇中!
中古車市場ではプロボックスに統合され絶版となったサクシードが人気。中古車相場も上昇中だ
それでは、プロボックス/サクシードの中古車事情を見てみよう。
2022年10月現在、プロボックスワゴンの中古車は約41台流通していて、平均価格は約101.8万円。中古車の価格帯は約24.8万~約199万円となっている。
ビジネスモデルのプロボックスは約1,085台の中古車が流通していて、平均価格は約90.5万円。中古車の価格帯は約10万~約299.8万円だ。
続いてサクシードワゴンは、約66台の中古車が流通していて、平均価格は約78万円。中古車の価格帯は約18万~約175万円だ。
最後はビジネスモデルのサクシード。中古車の流通台数は約586台で、平均価格は約85.6万円。中古車の価格帯は約19.8万~約314.9万円となっている。
どのモデルも、高価格帯のクルマはカスタム済みの中古車となっているのが特長だ。そしてパワートレインの構成を見てみると、2018年に追加されたハイブリッド車はプロボックスが約39台、サクシードは約19台と非常に少ない。
一方、5速MT車はプロボックス/サクシードすべて足しても約40台しかなく、MT車の中古車の多くは海外へ輸出されていることがわかる。また、ディーゼル車も約9台しかない状況で、ほとんどが1.3Lもしくは1.5Lのガソリンエンジン車となっている。
2002年から販売されているロングセラーモデルながら、海外での人気に支えられて中古車は高値安定傾向が続いている。
その中で、プロボックスワゴンの中古車の平均価格が、3カ月前の約92万円から約9万円の値上がり。そしてサクシードワゴンの平均価格は3カ月前の約60万円から約18万円の値上がりを記録している。
カスタム済み中古車の影響もあるが、これだけ年式の進んだ中古車が値上がりするのは、やはり輸出の影響が大きい。スポーツカーだけでなく、実用車の中古車高騰も輸出の影響が出ているのだ。
プロボックス/サクシードの中古車を買うなら、やはりタマ数の多いプロボックスのバン仕様が狙い目だろう。エンジンはハイブリッドがまだまだ割高なので、燃費もパワーも優秀な1.5Lがおすすめ。
ただしビジネスユースとして荒く使われたかどうかはチェックしたい。必ず試乗してエンジンやトランスミッションの調子を確認しよう。
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