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イタリアの「ジオラマ製作コンクール」行ってみた 企画した人物、想像より深~いカーガイでした

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イタリアの「ジオラマ製作コンクール」行ってみた 企画した人物、想像より深~いカーガイでした

テーマは「ミッレミリア」

イタリア北部ブレシアといえば、ヒストリックカー・ラリー「ミッレミリア」のスタート&ゴール地点として長年知られてきた街である。

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同市で2023年2月12日から20日まで、ミニチュアカーを用いたジオラマ製作コンクールのエントリー作品が公開された。

正式なイベント名は「第2回コンコルソ・デレガンツァ・イン・ミニアトゥーラ・ロプレスト」で、今回のテーマは「ミッレミリア」である。

ミッレミリアはイタリア語で1000マイルの意味。オリジナル版は速さを競いながらイタリア半島を縦断する公道レースとして1927年に始まった。

以後、数々の伝説的レーシングドライバーが参戦。彼らが駆り、好成績を収めた車の多くは、のちに名車となった。草創期のフェラーリも果敢に参加した。しかし、重大な事故が多発したことから1957年、その歴史に幕を閉じた。

今日催されているミッレミリアは1977年に始まったリバイバル版。オリジナル版に出場した車両、もしくはその同型車のみ参加を許されている。また速さではなく、区間ごとの通過時間の正確さを競うラリー形式が採られている。

今回のコンクールでは、オリジナル時代に各地で展開された風景が、55×55cmのジオラマの中に、既存のモデルカーを活用して再現された。

全12作品で、いくつかの例を挙げれば、1927年の第1回ミッレミリアで難所の1つであるフータ峠に挑む「イソッタ・フラスキーニ」、1931年にルドルフ・カラッチョラをウィナーに導いた「メルセデス・ベンツSSKL」、小さな村を通過する1950年の「フェラーリ166MMスパイダー」、羊に阻まれる1953年大会のフェラーリ「340メキシコ」がある。

さらに、村の坂道でランチア・アプリリアの脇を駆け抜けるスターリング・モスの1955年メルセデス・ベンツ「300SLR」もある。

いっぽうで、狭い商店街で藁束の間をすり抜ける1955年大会の「フィアット1100/103TV」も。当時の参加車がいかに多岐にわたっていたかに思いを馳せることができる。

授賞式は2023年5月16日、同じ会場で開催される。

溢れるイタリア風情

このジオラマ・コンクールは、2022年5月に第1回がミラノで開催された。

ジャッジには、ヴィラ・デステやペブルビーチなど実車のコンクール・デレガンスで審査員を務める人々も参加した。

日本からは日産自動車の元チーフ・クリエイティブ・オフィサーである中村史郎氏、京都コンコルソデレガンツァ創立者の木村英智氏が名を連ねた。

そのときのテーマは「映画」で、1971年「栄光のル・マン」のワンシーンを「ポルシェ917」のスケールモデルと、主演したスティーヴ・マックイーンのフィギュアで再現した作品がウィナーとなった。

第2回で審査員たちが、どのような点を重視するかは不明だ。だがイタリア在住の筆者の目で見ると、いずれの参加作品も秀逸だ。

時代考証はもちろん、民家の漆喰の経年変化、他の欧州諸国のものとは違う煉瓦や石のサイズ、といったイタリアの建物だけが醸し出す、独特の風合いまで緻密に再現されているからである。

とくに町を再現した作品は、1973年の名作映画「フェリーニのアマルコルド」で少年たちが走り去る車を応援しながら、自分もドライバーに憧れる場面を思い出させる。

こうした雰囲気が今後も継続すれば、同じジオラマの出来を競うコンクールでも、イタリアならではのものとして、独自のスタイルを確立できるだろう。

主催者のコッラード・ロプレスト氏についても記しておこう。

C.ロプレストという人物

コッラード・ロプレスト氏は1959年南部レッジョ・カラブリア生まれ。建築士の肩書こそもつが、それ以上に知られているのは、イタリアを代表する自動車コレクターとしてである。

2018年に「ザ・クラシックカー・トラスト」が発表した世界の主要自動車収集家100人ランキングでは、24位に挙げられている。

18歳のときに手に入れたフィアット「バリッラ」で自動車に目覚め、今日までに所蔵車は100台を超える。収集にあたっては「イタリア製」「プロトタイプ」「ワンオフ」という、いわば三原則を貫いてきた。

コンコルソ・ヴィラ・デステの常連参加者で、2017年には「アルファ・ロメオ・ジュリエッタSS」でベスト・オブ・ショーを獲得。ゲスト投票によるプライズ「コッパ・ドーロ・ヴィラ・デステ」では同コンクール史上初の4回受賞を果たしている。

屈指のカー・ガイが提案する楽しみ方

コレクターというと、持ち駒をトレードしながら巧みに良い車にステップアップしてゆく人物を想像しがちだ。

だが、2004年からロプレスト氏を知る筆者は、そうしたイメージとはまったく違う素顔を見てきた。

ロプレスト氏は、実車以外にもイソッタ・フラスキーニや「ベルトーネ」など、かつてイタリアを代表しながら不幸な末路を辿った企業の設計図や資料を丹念に収集してきた。

彼はその理由をイタリアのメディアに「自動車以前に美術品を収集していたとき、完成作よりもスケッチのほうが、製作者の思考過程がわかるからだ」と述べている。

なぜ、広く評価が定まった自動車ではなく、コンセプトカーやワンオフに焦点を当てるのか?

筆者の質問に、以前彼は「私が収集した車をデザインしたり、手掛けた人々は(自動車愛好家には知られていても)一般人にはほぼ知られていません。しかし、彼らこそ誰もが知るイタリアのカロッツェリアを伝説にまで昇華させた人々なのです」と説明した。

国際コンクールに参加するだけではない。イタリアの小さな村興し的イベントにも、自動車の素晴らしさを伝えるべくコレクションを携えて出向く。パレード走行では世界に1台の車両であろうと惜しみなく走らせ、動く姿を人々に見てもらう。

ちなみにある年のヴィラ・デステで、来場者が少ない朝方、みずから車を磨くロプレスト氏を発見した。このレベルの収集家になると、雇ったスタッフやメカニックにそうした役をさせるのが一般的なだけに印象的な光景だった。

生粋のカー・ガイである。

ジオラマ・コンクールは、そうした彼が新たに提唱する、ひと味変わった自動車文化の楽しみ方なのである。

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