新型フィットがWLTCモード燃費のほかにJC08モードを表示している理由

2020年2月にフルモデルチェンジ、4代目へと進化した「ホンダ フィット」はこれまでとはずいぶん異なるキャラクターになっています。SUVスタイルの「クロスター」を除き、グリルレスのフロントマスクも新鮮です。

ハイブリッドシステムは2モーター式の「e:HEV」へと大きく進化しましたが、スペック上の燃費を最優先したわけではないというのも、これまでのクルマづくりから大きく変化した点です。数字よりも感覚を重視しているわけです。

カタログを見ると燃費表示がWLTCモードと従来のJC08モードで併記されているのに気付きます。世界共通化を進めるなら、WLTCモードだけでいいはず。同じ時期に「ヴィッツ」の後継モデルとして登場した「トヨタ ヤリス」はWLTCモードだけの表記です。なぜ、新型フィットはJC08モードも併記したのでしょうか。

2月に開催されたメディア向け試乗会でその理由を聞くと、「燃費を最優先してはいないものの、燃費性能が先代比で向上していることは示したかった」という正直な気持ちを聞くことができました。

新型フィットのWLTCモードは、もっとも燃費に優れたe:HEV BASIC（FF）で29.4km/L。WLTCモードとJC08モードを比較するのはナンセンスとはいえ、旧型フィットハイブリッドのJC08モード燃費は37.2km/Lなので、数値はどうしても見劣りします。

フィットというモデルはホンダの中でも保有台数が多く、旧型からの乗り換え需要もかなりあります。そうしたモデルで旧型より燃費が悪いというイメージはけっしていいものではありません。まして、ハイブリッドシステムを一新しているのですからなおさらです。

そこで新型フィットでもJC08モード燃費を併記することで、旧型と同じ土俵で比べたときに燃費性能が改善していることを明らかにする必要があったというわけです。

新型フィットのe:HEV BASIC（FF）のJC08モード燃費は38.6km/L。先代に対して確実に向上しているのでした。

ところで、WLTCモード燃費においては、市街地・郊外・高速道路と3つのモード別の燃費も公表することになっています。新型フィットハイブリッドの各モードの数値は次のようになります。

WLTCモード：29.4km/L
市街地：30.2km/L
郊外：32.4km/L
高速道路：27.4km/L

こうして見ると、新型フィットのハイブリッドもまた、得意としているのは流れのいい幹線道路を一定のペースで走ること。また、渋滞や信号待ちのある市街地でも燃費があまり落ちないことがわかります。燃費スペックにこだわることなく、自然な乗り味を重視したという新しいハイブリッドシステムですが、その数値から街乗り領域が得意なパワートレインに仕上げられていることが見て取れるのではないでしょうか。

文：山本晋也（自動車コミュニケータ・コラムニスト）

Comments

情報が多い事は良い事。
中には意図的に隠したり騙したりするメーカーもあるからね。

ホンダ「（使える間は最後まで宣伝に使いたいから…）」

10・15モードからJC08モードに切り替わる時も、
ホンダはぎりぎりまで10・15モード燃費をHPで
でかでかと表示していたよ。