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【現役の評価ドライバーに聞く!】 ハンドリング 乗り心地… クルマのよしあし どう測る?

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【現役の評価ドライバーに聞く!】 ハンドリング 乗り心地… クルマのよしあし どう測る?

「ハンドリング性能がよくなりました」「乗り心地がよくなりました」とメディアで読んだり、ディーラーのセールスマンに説明されても、いざそのクルマを試乗した時に「よくなった(気がします)ねー」と、ホントはイマイチよく理解しないままで終えてしまっている人は多いのではないだろうか。

 言葉で説明されても、感じ方は人それぞれだ。ハンドリングのよさや乗り心地のよさはどう運転すれば感じられるのか。

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 それがわかればクルマへの理解も進むし、ベストカーを含め、自動車メディアのコンテンツもより楽しく読めるようになると思う。

 とはいえ、じゃあ誰に教えてもらうか……? そうだ、実際に開発の現場でクルマの評価をしている人に聞くのが一番確実じゃない? そういやちょうどうってつけの友人がいたな…ということで、今回解説をお願いしてみた。

※本稿は2019年6月のものです
文:ベストカー編集部/写真:池之平昌信
初出:『ベストカー』 2019年7月10日号

■必見! 現役の評価ドライバーに聞いたクルマのテストのやり方

 今回解説をしてくれる友人だが、ペンネームはまだないので、本企画限定で「令和マン」と呼ばせていただく。

 令和マンは自動車の開発評価のプロフェッショナル。ハンドリングと快適性の感性評価が専門。日本のほか、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの各メーカーの車両開発を評価ドライバーとしてサポートしており、今回の企画にはうってつけの人材である。

顔出しNGのためこんなマスクを被る羽目になってしまったが、自動車の感性性能開発評価のプロフェッショナルである。サスペンション領域のハンドリングと快適性の感性評価が専門。今回が自動車メディア初登場&初評価。令和おじさんとの関連性はない

 では本題の「クルマの評価はどうやればいいのか」について、令和マンにさっそく解説してもらった。

*   *   *

■評価をはじめる前に

令和マン(以下、令和):まずは空気圧とタイヤのアライメントをメーカーの指定している値に調整します。

ベストカー:やっぱり大切ですか。

令和:これをやらないと、そもそも評価できません! アライメントは設備が必要で難しいのですが、最低限空気圧は確認しましょう。タイヤの空気圧は適正値より高くても低くても性能が落ち、乗り味も変わってしまいます。必ず適正値にしておきましょう。

クルマの乗り味はタイヤの空気圧によってガラリと変わる。常に適正な空気圧を維持したい

■動力性能のチェック

令和:絶対的なエンジンパワー以外に、アクセルとブレーキのコントロール性も重要な要素です。

ベストカー:アクセルとブレーキのコントロール性とは?

令和:ペダル操作に対して反応がリニアかどうかです。踏んだ分だけ加速し、止まれるかですね。

テストの際は軽く踏んだ際の加速感や、踏み込んだ際の加速感を見るほか、ブレーキも同様に軽く踏み込んだ際や大きく踏み込んだ際の効きをチェックします。

ベストカー:踏んだ分だけ加速や減速をするほうがいいと。

令和:そういうことです。リニアだとストレスなくコントロールできるので、長時間運転しても快適です。駐車場や段差乗り越えの低速走行、走行中の微妙な速度コントロールなどすべての面で効いてきますよ。

■ハンドリング性能のチェック

令和:直進安定性は、ハンドルの修正操作を加えずどれだけまっすぐ走れるかを見るほか、先程のアクセルとブレーキを大きく踏み込んだ時にもチェックします。クルマが左右に曲がったりしないかを確認するわけです。

ベストカー:ペダル操作が直進安定性に影響を与えるかどうかも見ているんですね!

令和:コーナリング性ですが、公道ではまず、ハンドルを指1~2本分だけ左右に切って、クルマがどう曲がるかを見ます。通常、ほぼまっすぐに走る時間が圧倒的に多いので、この「ほぼハンドルを切っていない領域」が実は一番大切です。

ハンドル操作に対するクルマのレスポンスと、曲がりのリニアさ、どれだけロールするかなどですね。カーブでハンドルを大きく切り込んだ時も同じポイントを確認します。サーキットでの限界走行でも確認します。

指数本分ハンドルを切った際、クルマがどう曲がるかを感じよう。どのくらい切れば曲がるか、切ってから曲がるまでの時間差などに注目だ

ベストカー:いいハンドリングとはどういうものですか?

令和:操作した分だけ素直に曲がることです。リニアであることはもちろん、レスポンスもロールも高すぎず低すぎず、人間が心地よいと感じるレベルであることです。

ベストカー:奥が深い……あとはインプレッションの際に解説お願いします!

■乗り心地の評価方法

令和:さまざまな入力(路面の状態や、凹凸のほかいろいろ)に対して、車体がどう動き、振動するかですね。

ベストカー:体全体で振動とかを感じ取るわけですか?

令和:そんな感じです。シートを通して体で感じたり、足、ハンドルを握っている手などからも感じ取ります。

プロのドライブポジション。評価の際はもちろんマスクは付けずに行った

ベストカー:ボディ剛性やサスペンション、タイヤも乗り心地に影響ありますよね?

令和:そのとおりです。何より大事なのはボディ剛性で、乗り心地のほか、ハンドリングや静粛性などすべてに効いてきます。硬さだけでなく、変形のさせ方もとても大事なんですよ。

サスペンションとタイヤについては、どちらかが硬すぎてもやわらかすぎてもダメで、互いのバランスが大切です。

■ロングドライブの快適性を見る

令和:これまでの3要素(動力性能、ハンドリング、乗り心地)すべての総合力です。意図どおりに加減速し、曲がれること。シートのよさも乗り心地だけでなくハンドリングに影響を与えます。静かなノイズ性能も大切ですね。

サーキットやワインディングでグイグイ曲がる楽しいハンドリングは、ロングドライブでは敏感過ぎて疲労につながることもあるので注意が必要です。

ベストカー:これまた深い!

令和:評価には2種類あり、何度も決められたとおりに走るものと、いろいろな乗り方をして幅広く評価をするもの。

前者は主にデータ計測のためですね。後者を「感性評価」といいます。

ベストカー:令和マンは後者のスペシャリストということで?

令和:そういうことです。

■評価ドライバーがインプレ! カローラスポーツ vs. VWゴルフ!

 今回は評価用に2台のCセグメントハッチバックを用意した。日本代表としてカローラスポーツ、ドイツ代表にゴルフだ。まずはゴルフから評価してもらおう。

ともにCセグメントでは評価の高いゴルフとカローラスポーツ。日独Cセグターボ車頂上決戦だ

●ゴルフTSIハイラインテックエディション

令和:いやーイイッすねー、ゴルフ。久しぶりに乗りましたけど、やっぱりサイコー!

ベストカー:いいですね~!

令和:動力性能は必要充分って感じですね。アクセルコントロール性も高い! 踏んだ分だけ加速しますし、ブレーキも踏んだ分だけ効く。

ベストカー:なるほど!

令和:出発してすぐは切り始めのレスポンスが悪かったんですが、適正な空気圧にしたらよくなりました。リニア性もイイです。

ガソリンスタンドやディーラーで空気を入れてもらう際、空気圧を高めにするところが多いんですよ。時間がたって多少抜けてもいいようにと……でも、それだと性能落ちるし寿命も縮まるので、適正値にしてもらってください。

ベストカー:ハンドリングは?

令和:カーブ中にペダル操作(加減速)しても安定して曲がってくれますね!

編集担当としては「ゴルフ、こんなにイイの?」。フォルクスワーゲン、舐めてました。カローラスポーツは今回評価が芳しくないが、ハイブリッド車の上級グレードGZであれば、スポーツタイヤを履いているためまた評価が変わると思っている

ベストカー:というと?

令和:スポーティなクルマだと、カーブでペダル操作だけで曲がり具合を調整できると“運転の楽しさ”となり、いいんです。

しかし、普通のクルマで普通の人が運転する場合は、カーブでペダル操作しても曲がり具合が変わらず安定しているほうが、カーブ中の余計な修正舵が必要ないのでよいわけです。

ベストカー:勉強になります!

令和:ハンドルを切ると、フロントが曲がって、ワンテンポおいてリアがついてくる。このさじ加減が絶妙で素晴らしい。

BMWの一部モデルでは、フロントもリアも反応がよすぎる場合があるんです。スポーティでいいんですが、普通の人が普通に運転する場合は、ハンドル操作に対してある程度ゆっくり反応してくれたほうがいいわけです。

ベストカー:乗り心地いいですね~。助手席でもわかります。

令和:このクラスでは最高でしょう! 入力に対して車体が動かない、ゆすられない。小さな段差、コツコツした突き上げも丸く吸収してくれています。

大きな段差、ガツンとくるものもフワっと上手くおさめています。総じて丸くおさめてくれますね。

ベストカー:路面のザラつきも拾っていませんね。

令和:シートのクッションもウレタンが厚いのでしょうね、懐の深い吸収感ですね。ハンドルの微振動もないです。

ベストカー:ロングドライブの快適性で見るとどうです?

令和:素晴らしいです。走行音も静かなんですが、必要なノイズは残してあり、路面インフォメーションはわかりやすい。

総じてこのクラスで文句ない性能ですが、ナビが少し不満(笑)。どこを走ればいいかわかりづらい……。

ハンドリング、乗り心地、ロングドライブでの快適性の3項目で10点がつき(下部の採点表を参照)、総合評価で10点満点のゴルフ。このクラスだと文句ない性能ですと令和マンは評価

■カローラスポーツ1.2Lターボ Gグレード

令和:もう少しパワーがほしいですね。高速での合流がやや苦しいです。アクセルコントロール性もゴルフと比べて悪いです。

踏み始めの反応が薄く、途中でドカンと大きく反応する。ブレーキ時のピッチが大きくて、つんのめる感じがします。

ベストカー:ハンドリングは?

令和:切り始めはあまり動いてくれなくて、少し経つと急激に曲がります。

ベストカー:あ、今ギュンって急激に曲がりましたね。ゴルフの時と同じハンドルの切り方ですよね?

令和:同じです。タイヤがよれてしまって、フワフワします。接地感が悪いです。フロントがブニョンと曲がってから後ろがついてくる。ロールは大きい。多分フロントが弱いんでしょう。ゴルフはニュートラルでしたがカローラスポーツはアンダーステア気味です。

ベストカー:乗り心地は?

令和:路面のザラつきを感じやすいですね。ショックの当たりは丸いのですが、大きい入力でブルッと振動が残ります。荒れた路面でもバネ上がヒョコヒョコ揺すられます。

総じて性能がゴルフに比べて低くて、ロングドライブでの快適性も劣る感じです。

日本の同クラスと比べるとトップクラスなのだが、相手が悪かったカローラスポーツ。悪くないが、飛び抜けて性能がいい部分がなく、個性が少ないと令和マンは評価した。心なしか表情も暗い

ベストカー:カローラスポーツには厳しい結果になりましたねぇ……。

令和:カローラスポーツは従来の同クラスの日本車に対してめちゃくちゃいいクルマだということはハッキリと言っておきます(笑)。

実質の先代であるオーリスや、一般的な日本車と比べても大きくレベルが上がりました。同じTNGAで評価のいい先輩のプリウスよりさらによくなっています。

ゴルフのほうが性能は高いですが、値段も高い(笑)。カローラスポーツのほうが安くて使い倒せます。日本車の耐久性は本当に凄いですから!

※10点満点、合格=6点。一般道を普通に(たまに元気よく)走った場合

*   *   *

■まとめ

 今回のように、違うクルマを2台揃えて比べるというのは、普通はできないこと。では我々素人はどうクルマのよしあしを測ればいいか。まずは自分のクルマの挙動を覚えてものさしにすることだろう。

 ペダル操作やハンドル操作に対して、路面の入力に対する自分のクルマの反応はどうかを覚える。次に、同じ操作を試乗したクルマで行い、違いを体感する。

 機会があったらそのクラスで最高性能のクルマ(Cセグならゴルフ)に乗ってみて、同じように試してみる。これで、クルマのよしあしを素人でも体感できるようになるのではないかと思う。

 何が原因でハンドリングや乗り心地がいい/悪いと感じるかは、プロの評価を参考にしてほしい。

編集のレベルに合わせ、わかりやすく説明してくれた令和マン。次回の登場も近い!?

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