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こんなにフレンドリーなドゥカティがあっただろうか?

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こんなにフレンドリーなドゥカティがあっただろうか?

進化を続ける人気のネイキッドマシンが過去最大の改良を受け、MY21モデルに。アルミフレームの採用などにより、「レーシング由来の車体に、ストリートでも扱いやすいエンジン」というコンセプトを、さらに理想に近づけた。

最高峰マシンと同じアルミフレームを採用

現代的ラグジュアリーへと進化した“ファミリーSUV”

スポーティさを全面に打ち出した新時代のネイキッドマシンとして1992年にケルンショーで登場したモンスター。その後、長く同社のベストセラーモデルでもあったドゥカティきっての人気モデルだ。それだけに、様々なバリエーションがリリースされており、これまでに35万台以上が世界中に送り出されているという。

そんなモンスターが2021年、過去最大ともいえる改良を施されて登場した。

最大のトピックは、スチールパイプを組み合わせて作られた伝統のトレリスフレームを廃し、アルミフレームを採用している点。「ムムム!?」と思われた方も多かったのではないだろうか。

しかし、レーシングマシン由来の車体に、ストリートで扱いやすいエンジンを搭載する、というパッケージがモンスターのルーツである。モンスター登場当時のレーシングマシンが用いていたのはトレリスフレーム。その後も、長きにわたってトレリスフレームとLツインエンジンの組み合わせは、同社のアイデンティティでもあった。ところが現在では、MotoGPでもスーパーバイクでも、トレリスフレームは採用されていない。新しいモンスターは、市販車最高峰となるスーパーバイクでの戦闘マシン、パニガーレV4由来といえるアルミ製フロントフレームの構造を用いたのだ。

元々このトレリスフレームは、剛性コントロールのイージーさ(といってもこれは同社が長年培ってきたノウハウありきなのであるが)とともに、エンジンにピッタリと沿うカタチでレイアウトできるためマシンのスリム化に貢献してきた。しかし現在では、剛性コントロールが解析化されたことや加工技術の向上によって、アルミフレームでも非常にスリムな車体作りが可能となっている。アルミ化によって得られた恩恵は大きく、車重も166kgと驚異的とも言える軽さを実現している。

そして、エンジンにはムルティストラーダ950やスーパースポーツにも搭載され、現在同社の主力ともいえるテスタストレッタ11°を採用。それをモンスター用にしっかりと最適化している。

“ドゥカティらしさ”を多くのライダーが体感できる

日本仕様はシート高が低いということもあり、非常にとっつきが良い。ワイドでやや前傾となるハンドルバーを含めた少し特殊なライドポジションもモンスターらしさと言われているが、よりオーソドックスなポジションになっている。

走り出したモンスターは軽さが際立っており、意のままにマシンを振り回していける。手強さがどこかにあって、それもドゥカティらしさと言われたのは、もう過去の時代のものになったのか? と衝撃を受けるほどだ。ネイキッドスタイルの割にハンドル切れ角が少なかったり、街乗りで多用する極低回転域でガクガクッと回転が安定しないなんてことはもはやない。

スポーツバイクだから、という一言で片付けられていたネガな部分としっかり向き合い、それをクリア。スポーツ性ばかりがフィーチャーされがちなドゥカティのモデルにあって、新型はストリートにおける普段使いにもぴったりマッチしたキャラクターが備わっているのだ。

その一方、サーキットでも高い汎用性を示すのがドゥカティらしい。

こちらもとにかく取っ付きが良く、軽快で自由度が高い。前輪荷重の確保が難しいとされるLツインエンジンであるが、それを逆手に取ったヒラヒラ感は他ではなかなか味わえないフィーリングである。ビッグツインと称されても良いほどの排気量ではあるが、アクセルを開ける方向でも戻す方向でもエンジンが過剰な反応をすることがない。これはエンジンマネージメントが優れているとともに、素の状態でのバランスが良い証拠でもある。

クセであるとか手強さといったものがなく、まったくと言ってよいほど不安を抱かせない。過去に、こんなにフレンドリーなドゥカティがあっただろうか?

そのうえで、特別なテクニックを用いなくてもマシンは良く曲がる。トレリスフレームの硬質なしなりとは異なり、もっと車体全体が柔軟で、曲がる方向にフレームが絶妙にお辞儀してくれているかのように旋回力をサポートしてくれる。

ヒザスリがあっけないほど容易だったことも特筆すべきことで、サーキットビギナーにも喜ばしいキャラクターとなっている。

ただ、よりハイペースで走る際には、この軽すぎるハンドリングにはもう少し手応えが欲しくも感じるし、バンク角の限界はもっと深いほうが攻め込みやすいだろう。しかし、そういったハイペースな状況をメインに考えるのではなく、あえて敷居を下げることで、不安感を感じさせないキャラクターとしたことに好印象を抱いた。

新型は“らしさ”は引き継ぎつつ、多くのライダーが満足出来るオールラウンドさが魅力のマシンに進化した。

文・鈴木大五郎 写真・ドゥカティジャパン 編集・iconic

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