クーペフォルムをまとったクロスオーバーSUVはスポーティなエクステリアに負けず劣らずきびきびした走りで人気となっている。そのの三菱エクリプスクロスにクリーンディーゼルエンジン搭載モデルが追加された。
デリカD:5で力強さは証明されている待望のクリーンディーゼルを搭載したエクリプスクロスの走りの実力は? 鈴木直也氏が静岡県朝霧高原近郊のワインディングロード、オフロードコースで試乗しレポートする。
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文:鈴木直也/写真:中里慎一郎
デリカD:5と同じ2.2Lディーゼルを搭載
ルノー・日産アライアンスに加わったことで、経営的にはひと息ついた感のある三菱。ただし、それと引き換えに「三菱らしい個性が失われるのでは?」という点は気がかりだった。
しかし、それは現時点では“杞憂”と言ってよさそう。今回エクリプスクロスに追加されたディーゼルモデルの試乗会に参加してみて、三菱らしいクルマ造りが復活しつつあることが大いに心強かった。
【画像ギャラリー/エクリプスクロスディーゼル搭載車】
エクリプスクロスは クーペとSUVのクロスオーバーカーという三菱初のチャレンジを盛り込んでと 2018年3月にデビュー。スタイリッシュなSUVとして人気
今回エクリプスクロスに搭載される4N14型2.2Lディーゼルは、先にデリカD:5に搭載されたもの。145ps/38.7kgmというスペックも含めて、まったく共通のユニットだ。
このエンジン、基本ブロックは従来型踏襲だが、尿素SCRの採用、燃焼室形状の変更、新世代直噴インジェクターの採用、ムービーングパーツの見直しによるフリクション低減など、あらゆる部分に手が入れられていて、実質的にブランニューといっていいユニット。しかも、ATもアイシンの最新8速ATが組み合わされる。
デリカD:5のマイチェンで刷新された2.2L直4ディーゼルターボ。型式こそ4N14で変更ないが新エンジンと言ってもいいほどの激変ぶりを見せている
ライバルはマツダCX-5 XD
いま日本車で乗用ディーゼルに力を入れているメーカーといえばマツダだが、例えばライバルと目されるCX-5 XDを見ると、4WDで280万円台から350万円台のラインナップ。
エクリプスクロス・ディーゼルは306万~340万円で、ほぼ同じ価格ゾーンでようやく国産ディーゼルSUVのライバルが出現したということになる。
三菱はこの市場では挑戦者だから、メカニズム的にはマツダ以上に攻めている。
エクリプスクロスはクリーンディーゼルエンジンを搭載するSUVを日本のマーケットで認知させたマツダCX-5に挑むことになる。価格的にもバッティングさせてきた
マツダのスカイアクティブDは、EGRと酸化触媒で排ガス規制をクリアする低コスト化技術が特徴。それはそれで素晴らしいのだが、これ以上排ガス規制が厳しくなると、なんらかのNOX浄化システムを追加せざるを得ない。実際、北米仕様ではすでに尿素SCRが装備されている。
また、ATもマツダ内製の6ATに対して、三菱は評価の高いアイシン製8AT。レシオカバレッジも広いし変速もスムーズ。ATに関しては明らかにエクリプスクロス・ディーゼルがリードしている。
おそらく、このあたりの原価は三菱のほうがかなり高いと思われるが、それをほぼ同価格でぶつけてきたというあたりに、いまの三菱の「ヤル気」を感じるわけだ。
エクリプスクロスのインテリア。基本的なデザインは1.5Lターボ、ディーゼルとも同じだが、ディーゼルはアイシン製8ATが奢られている(1.5Lターボは8速CVT)
エクリプスクロスの1.5L直4ターボ搭載車と2.2L直4ディーゼルターボ搭載車の外観上の違いはリアにDI-Dのエンブレムが装着されることくらい
デリカD:5より軽いことが災い!?
ドライバビリティも、三菱にはユニークなキャラがある。
デリカD:5でこの2.2Lディーゼルに初試乗した時には、車重2トン近い重量級ミニバンをグイグイ走らせるトルク感に大いに感心した。
最大出力発生回転数はわずか3500rpmで、全開時の自動シフトアップもほぼその回転付近。8速ATを細かくシフトして、回転を上げずにスイスイ走らせるのがこのエンジンの醍醐味なのだ。
エクリプスクロスのディーゼル搭載車は、低回転からトルクが盛り上がるためタイムを計測すれば確実に速いが、その速さを体感しづらい
ところが、誤算だったのは車重が300kgも軽いエクリプスクロスだと、トルク感を感じるより先にむしろ頭打ちの早さが気になってしまうこと。
グイッと蹴り出す力強さを実感するにはある程度の負荷が必要なのだが、エクリプスクロス・ディーゼルは車重が軽いためか、いわゆる「タメ」を感じる間もなくシフトアップポイントまで吹き上がってしまう。結果として、加速タイムは早いのだがトルク感を実感できないのだ。
最近のエンジンはセッティングをいじると排ガス処理やら燃費マネジメントやら、いわゆる「適合」の作業が膨大に増えるため、どうしてもメーカー側は及び腰になりがちだが、エクリプスクロス用にはもう500rpmくらい回して、パワー・トルク値も170ps/42.8kgmくらいに上げてほしいところ。
このエンジンにはそのくらいの潜在能力はあるはずだし、三菱のようなニッチ市場を目指すメーカーは、そこを攻めなくちゃいけないと思う。なんといっても、ライバルのCX-5は190ps/45.9kgmなのだから……。
本格オフロード走行を目指すには最適
今回の市場は朝霧高原付近の一般公道を中心に走らせたが、こういう郊外のワンディング路では、乗り心地やハンドリングは特筆すべきポイントもないかわり欠点もなし。
このへんの乗り味は1.5Lガソリンに試乗した時と変わらず、シャシー性能はまぁ素直だが平凡という評価が妥当だと思う。
エクリプスクロスは1.5Lターボもディーゼルもオンロードでハンドリング、乗り心地などどんなシチュエーションでもソツなくこなし不満はない
ただし、ディーゼルは1.5Lガソリンより前輪荷重が100kg近く重いはずだが、操舵レスポンスやターンイン時の挙動でアタマの重さを感じることはほとんどなく、むしろ車重が増えたぶん乗り心地にドッシリとした落ち着きが加わって好印象。「イイもの感」は確実にディーゼルのほうがワンランク上といえる。
いっぽう、一般路での「悪くないね」という評価が、「スゴイね!」に変わるのが、荒れたオフロードに乗り入れた時の走破性だ。
本格的なオフロード走行も難なくこなすのはさすが。S-AWCの威力は絶大で同クラスにライバルは存在しない。オフロードを走ると凄さが際立つ
1.5LターボモデルにはFFと4WDが設定されているが、クリーンディーゼル搭載モデルは4WDのみ。オフロードを走るとエクリプスクロスが無性に欲しくなる
試乗コースとして用意された富士ヶ嶺オフロードの急坂やモーグル路をガシガシ攻めると、パジェロで培った三菱車ならではのタフネスにいつもながら感心させられる。
普通のSUVはまぁ行っても雪道程度だが、本当のオフロードを目指すならエクリプスクロス・ディーゼルの信頼感は格別。
このキャラはやはり三菱車ならではの個性で、ここを伸ばしてゆくのが今後の三菱のブランド戦略にとって重要なテーマ。改めてそう思った次第であります。
ミニバンとSUVのクロスオーバー的キャラクターのデリカD:5が世界でライバル不在の唯一無二の存在だ。三菱が今後追求すべき点はここにある
【三菱エクリプスクロスディーゼルエンジン搭載車価格】
■M……306万1800円
■G……323万280円
■G Plus Package……340万3080円
■ブラックエディション……342万4680円
■ブラックエディション(オーディオレス)……332万7480円
※駆動方式は4WDのみ、ブラックエディションは特別仕様車
特別仕様車のブラックエディションは、グリル、ドアミラー、前後スキッドプレート、再度ドアガーニッシュ、アルミホイールがブラックとなる。期間、台数の限定は特になし
【参考:エクリプスクロスガソリンエンジン搭載車の価格】
■M……253万9080円/275万5080円
■G……271万8360円/293万4360円
■G Plus Package……289万1160円/310万7160円
■ブラックエディション……291万2760円/312万8760円
■ブラックエディション(オーディオレス)……281万5560円/303万1560円
※価格は左側が2WD、右側が4WD、ブラックエディションは特別仕様車
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