この記事をまとめると
■北米市場ではピックアップトラックが自動車販売台数の上位を占める
仕事用? レジャー向け? 日本で普及しないピックアップトラックとは
■今回はフォードのピックアップトラックを紹介
■ラインアップや中古車相場などについて解説する
アメリカでもっとも出荷台数が多いフォードのトラックの魅力とは?
北米市場では貨物運搬用としてはもちろん、乗用として個人ユーザーの使用も多いピックアップトラック。そんななか、長年、ベストセラーとなっているのがフォードF-150です。
今回は2022年には約64万台を売り上げたF-150をはじめとするフォードのピックアップを紹介していきましょう。
ピックアップのフルラインアップ
北米市場ではフォードF-150をはじめとするピックアップトラックが自動車販売台数の上位を占めています。
トヨタ・タコマなど日系メーカーも同市場で健闘していますが、ピックアップトラックの販売台数上位を占めるのはフォード、シボレー、ラム(クライスラー/ステランティス)といったアメリカの自動車メーカー。
そのなかで、とくにフォードのピックアップシリーズは車種が多く、ユーザーのニーズに合わせて選択することが可能です。
トラックでありながら先進安全装備が充実
2020年にデビューした現行F-150には、衝突被害軽減ブレーキなどの予防安全機能はもちろん、ピックアップトラックとしては初となるハンドオフ機能を備えたACCを搭載。乗用車に劣らない先進安全装備が備わっています。
F-150以外のモデルにも衝突被害軽減ブレーキやバックカメラなどを含む「Ford Co-Pilot360 2.0」と呼ばれる安全装備を用意。いまどきのクルマに備わっていて欲しい先進安全装備が充実しているのはユーザーにとって大きな魅力といえるでしょう。
長い歴史と伝統
フォードのピックアップトラック「Fシリーズ」の初代は1948年にデビュー。フルサイズピックアップシリーズの歴史はここから始まりましたが、フォードはそれ以前にもピックアップトラックを販売していました。
1925年からピックアップトラックの販売をはじめたフォードでしたが、運転席の後方に荷台を備えたクルマ……いわばピックアップトラックの祖といえるのがT型フォードをベースに架装メーカーが1913年に発表した荷台付き車両。
その車両はフォードが開発したわけではないですが、乗用車を普及させたT型フォードがベースとなっていることなど、同社とピックアップトラックとの関わりは長い歴史を誇っていることは間違いありません。
多彩なパワーユニット
クルマをあまり知らない人はもちろん、クルマ好きの多くはアメ車についていまだに「大排気量」「燃費が悪い」などのネガティブなイメージを持っていることでしょう。
ただ、そのイメージはひと昔前のもの。いまどきのアメ車はダウンサイジングエンジンやハイブリッド、またBEVをラインアップしているモデルが中心となりつつあります。
それはピックアップトラックも同様で、2020年にデビューしたフルサイズピックアップトラックF-150でさえ、ハイブリッド車をラインアップしているほど。
※写真はF-150 ライトニング(EVモデル)
とはいえアメ車ファンの憧れともいえる大排気量V8エンジンもスーパーデューティには用意。F-150にはBEVが追加されるなど多彩なパワーユニットを用意していることもフォードピックアップトラックの特徴です。
フォードのトラックのシリーズと歴史
フォードのお膝元、北米市場で現在販売されているピックアップは4種類。それらのモデルを歴史とともに紹介していきます。
マーベリック(Maverick)
ボディサイズ:全長5072mm、全幅1979mm、全高1745mm
ホイールベース:3076mm
車両価格:22,595ドル(約314万円)~
フォードのピックアップシリーズにおいてエントリーモデルとなるのがマーベリック。フォード・マーベリックといえばファルコンの後継モデルとして販売されていたセダンをイメージする方がいるかもしれませんが、現在はピックアップトラックにその名が用いられています。
同車は2021年から販売をスタート。フルサイズピックアップトラックのF-150とミドルサイズのレンジャーとともにラインアップされるマーベリックは、とくに都市部のユーザーをターゲットに開発されました。
生産はフォードの北米工場やメキシコ、およびスペイン工場で行われ、エッジが効いた四角いフォルムで高い人気を誇っています。
マーベリックはエントリーモデルとはいえ全長は5mオーバー。パワーユニットは2.5リッター直4エンジン+モーターのハイブリッドと2リッター直4エコブーストエンジンをラインアップ。
フォードが販売するピックアップのなかでもっとも燃費が良いことをPRしています。
エントリーグレードにも装備される8インチタッチディスプレイや上級モデルには6.5インチメータースクリーンなどを備えるなど装備も充実しているのは、商用ではなく日常での使用を目的に購入するユーザーが多いためでしょう。
レンジャー(Ranger)
ボディサイズ:全長5354mm、全幅1862mm、全高1796mm
ホイールベース:3221mm
車両価格:27,400ドル(約381万円)~
フォードが販売するピックアップトラックのなかでもっともグローバル展開を行うのがレンジャーです。
元々、レンジャーは1983年から北米で販売を開始したコンパクトトラックで、2代目が1989年、3代目が1993年にデビュー。しかし2012年に北米市場での販売を終了。ただ、1998年にデビューした4代目レンジャーはタイで生産。アセアン地域はもちろんオーストラリアや欧州で販売を行いました。
余談ですがマツダがアセアンで販売するBT-50はレンジャーの兄弟車でした。ただ、現行モデルはいすゞからのOEM車となっています。
とくにアセアン地域で好調な販売を行っていたレンジャーは、ピックアップシリーズの拡充を図るため、2019年にデビューした5代目となる現行モデルから北米販売を再開。これまでのレンジャーのひとクラス上に位置するピックアップとして好調な販売を続けています。
ただ北米以外の欧州市場でも人気が高く、F-150のハイパフォーマンスモデルに名付けられる“ラプター”をラインアップ。北米市場でも今年5月にレンジャー・ラプターが発表されました(執筆時点でははまだ未発売)。
中古車でおすすめのモデルは?
F-150
ボディサイズ:全長5885mm~6185mm、全幅2029mm、全高1920mm~1971mm
ホイールベース:3693mm~3993mm
車両価格:33,695ドル(約468万円)~
昨年まで46年連続でアメリカではもっとも売れたピックアップ(自動車としては40年連続)となったF-150。F-150はフォードが販売するフルサイズピックアップで初代は1948年に登場。車名は歴代モデルやサイズに応じて異なるためFシリーズと呼ばれています。
Fシリーズは初代デビュー後、2代目が1953年、3代目が1957年、4代目が1961年にフルモデルチェンジで登場し現行モデルは2020年にデビューした14代目となります。
現行モデルは3人乗りレギュラーキャブ、6人乗りスーパーキャブ、さらに4ドア化し後席の居住性を高めたスーパークルーを用意。商用としてはもちろん、乗用目的で購入するユーザーもターゲットにしています。
歴代モデルのなかで大きな注目を集めたのが2010年、12代目に追加されたF-150ラプター。オフロード性能を大きく高めたスペシャルモデルとしてデビューしたラプターは6.2リッターV8エンジンを搭載して巨大なボディを軽快に走らせることを実現。大きな衝撃を与えました。
ラプターは現行モデルにも用意されていますが、初代とは異なり3.5リッターV6ターボエンジンを搭載。とはいえ最高出力は450馬力を発揮。ピックアップトラックとは思えないパフォーマンスを実現しています。
また2022年からBEVピックアップのF-150 ライトニングが販売を開始しました。
スーパーデューティ(Super Duty)
ボディサイズ:全長5888mm~6462mm、全幅2032mm、全高2002mm~2068mm
ホイールベース:3592mm~4168mm
車両価格:43,970ドル(約611万円)~
F-150より大きく、また積載重量&牽引能力を高めたフォードのピックアップトラックでもっとも大型となるスーパーデューティ。元々はFシリーズの大型タイプとして販売されていましたが、現在は専用設計のボディが与えられています。
スーパーデューティとして販売を開始した初代は1999年に登場。初代は5.4リッターV8をはじめ7.3リッターV8ディーゼルエンジンもラインアップしていました。
その後、2008年に2代目、2011年に3代目、そして現行モデルとなる4代目が2015年に登場しています。
現行モデルは2023年の一部改良により内外装を一新したほか、最新のナビゲーションシステムや外部給電機能を装備。パワーユニットは6.8リッターV8、7.3リッターV8のガソリンエンジンと最高出力が異なる2種類の6.7リッターV8ディーゼルターボエンジンをラインアップしました。
F-150と比べると商用ユーザーが圧倒的に多く、アメリカの建設業界などでは同クラスでもっとも高いシェアを誇るモデルです。
フォードのトラックを買うなら中古がおすすめ?
フォードがラインアップするピックアップトラックは、三井物産が取り扱っていたF-150と、フォード・ジャパンによって正規輸入された先代エクスプローラーに用意されたスポーツトラック以外、国内で正規販売されていません。
そのため並行輸入車を購入する、もしくはそれらの中古車を購入するしかありません。
と、欲しくても手に入れにくいフォードのピックアップトラック。並行輸入で新車を購入するには時間とお金がかかってしまいます。
一方、中古車でフォードピックアップトラックを購入する場合、スムーズに手続きが進めば遅くても1カ月程度で納車されるのは大きなメリットといえるでしょう。
ただ、希少なモデルとなるため中古価格は高め。とくにマニアックな人気を誇るF-150ラプターは1000万円を超える中古車も珍しくありません。
国内で出回っているフォードのピックアップトラックは中古車相場を比較できるほど数は多くありません。
そのなかでF-150は執筆時点で36台の中古車が販売中。先代、先々代が中心ですが中古相場は80~1685万円。高額な車両の大半はラプターで、同車は先々代モデルでも500万円以下で販売されている車両はありませんでした。
F-150以外で中古車が出回っているのが、現在、スーパーデューティとして販売されているF-250とF-350。ただ、どちらも2、3台と相場を出すほど出回っていません。
どうしてもフォードのピックアップトラックを欲しいのであれば現在はラインアップされていないエクスプローラー・スポーツトラックがおすすめ。
先代、先々代に設定されていた同社は全国で26台(執筆時点)販売中。こちらも数は少ないですが、中古相場は119~285万円で2008~2011年式と比較的新しい中古車が出回っています。
筆者は先代エクスプローラーに設定されていたスポーツトラックをインポーターからよく借りて試乗していましたが、全長(5370mm)はともかく全幅(1870mm)など日本の道路インフラでも使いこなせるサイズでありながら、とくにV8搭載車はそのぶ厚いトルクとゆとりある走行フィールを備えているなど「これがアメ車のいいところなんだよな~」と感心するクルマでした。
まとめ
日本でトラックといえば商用モデルのそれをイメージしますが、北米市場でピックアップトラックといえば、ある意味特別なもの。そのなかでも長年、ベストセラーを誇るF-150をはじめとするフォードのピックアップトラックは車種が多彩のうえ、それぞれに多くの魅力を備えていることがわかります。
トヨタ・ハイラックが販売されるなど日本でもピックアップトラックが注目されつつあるなか、本場アメリカで支持されるフォードのピックアップトラックは今後、注目を集めていくかもしれません。
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みんなのコメント
世界シェア的にはトヨタ・いすゞ・フォードの三つ巴。
ただ、皮肉にも日本では重税とミニバン文化のせいかピックアップトラックはほとんど見ない。