ミドシップだった最初のポルシェ356
現代のポルシェ911には、多様な仕様が存在する。開かないルーフを背負い、公道での能力を追求したベーシックな後輪駆動のクーペだけではない。四輪駆動でソフトトップを備えるものもあるし、ルーフが半分開く911もある。
【画像】911 カレラ4 GTSの「偉大な源流」 英国最古の356/2 最新のダカールとGT3 RSも 全123枚
サーキット重視の仕様もあれば、最高速を重視したものもある。最近は、オフロードにも対応する「ダカール」が登場した。細かく分類していくと、合計26種類もの992型911が販売されている。リアエンジンという点では共通するが。
しかし今から80年近く前、ポルシェが自身の名前を冠して始めて作った小さなスポーツカーは、大きく違っていた。そもそも当初はドイツではなく、オーストリアの製材所で組み立てられていた。
ポルシェを創業したフェルディナント・ポルシェ氏と、彼の息子、同じくフェルディナントの名を継いだ通称フェリー・ポルシェ氏の親子は、2シーターのロードスターを設計。ポルシェ356の最初の試作車は、ミドシップだった。
シャシーは、複雑にスチール製パイプを組んだスペースフレームで、ボディは軽量なアルミニウム製。ポルシェは、現在でもその処女作を大切に保管している。
そして、量産仕様として改良を加えるうえで、フェリーはポルシェにとって馴染み深いレイアウトを採用した。彼の父は、フォルクスワーゲン・タイプ1、別名ビートルを設計していたためだ。
偉大なスポーツカーの雛形が誕生
かくして、最初期の356/2では、タイプ1由来の1089cc水平対向4気筒エンジンとトランスミッションが、リアにマウントされた。モノコック構造のシャシーと、サスペンションも基本的にそのままといえた。
この変更により、製造が容易でローコスト化できただけでなく、フロントシートの後方へ充分な荷室を用意することも可能になった。スポーツカーでありながら、実用性を担保することができていた。
第二次大戦後、予算の確保に悩んでいたオーストリア政府は、輸出を前提に356の生産を認可。1948年から1951年にかけて、外部サプライヤーの協力を得ながら、44台のクーペと8台のロードスター、合計52台の356/2が製造されている。
その後、親子はドイツ・シュツットガルトへ戻り、改良を加えつつ本格的に量産を開始。自動車史に刻まれる、偉大なスポーツカーの雛形が誕生するに至った。
この最新版といえるのが、992型の911だ。今回用意したのは、最高出力480psを発揮する、カレラ4 GTS。水平対向6気筒エンジンの排気量は3.0Lあり、ターボチャージャーで過給されている。
0-100km/h加速は3.3秒で、最高速度は308km/hが主張される。こんなに速くても、現在のラインナップでは特に公道を前提としたポジションにある。
多様な911に通された1本の筋
現在の911は多様だが、共通する特徴があるといえ、筆者はそれが好きだ。オフロード前提のダカールと、サーキット前提のGT3 RSは大局的な仕様といえるが、それでも、1本の筋が通されているように思う。
リアエンジンだから、フロントノーズは比較的軽い。大きな金属の塊が存在しないため、ボンネットは低く短くできる。その結果、優れた前方視界が得られる。
確かに、カレラ4 GTSはサスペンションが引き締まり、舗装の管理状態が良くない英国の公道では、乗り心地が落ち着かない。BMWやメルセデス・ベンツなどと比べると、ロードノイズは大きい。
とはいえ、我慢できないレベルではない。速度域を問わず、それを凌駕する報酬をドライバーへ与えてくれる。特にステアリング・フィールは珠玉。フロントが軽いため、パワーアシストを強める必要がないためだ。
ソリッドな姿勢制御と、クルマとの一体感、得られる充足感は他に例がない水準にある。カレラ4 GTSの英国価格は、11万6690ポンド(約2205万円)とお高いけれど。
そっとドアを開き、とても貴重な356/2のシートへ腰を下ろす。最新の911との共通点は、あるのだろうか。
飛行機のように滑らかなボディ 繊細で上品な印象
このアイボリーのクルマは、32番目に作られた356/2で、オーストリアのタトラ社が部分的に製造している。スウェーデンのトラックメーカーで、かつてフォルクスワーゲンの輸入代理店をしていたスカニア・バビス社によって、スウェーデンへ輸入された。
しっかり、その歴史が文書として残っている。工場で完成したのは、1950年6月12日。同時に14台が輸出され、11月9日にスウェーデンへ到着。その9日後に、ニクヴィストAB社という自動車販売店に登録された。
これまで15名のオーナーが存在し、現在はロンドンの西部、チョーリーウッドに拠点を置くDKエンジニアリング社の名義になっている。同社はメカニズムのリビルドを終え、新たなオーナーを探しているという。買い手が付く前に、筆者へ1日貸していただいた。
飛行機のように滑らかなボディは、1980年代に再塗装されている。だがそれ以外は、きれいなインテリアも含めて、オリジナル状態とのこと。繊細で上品だ。
全高は、数字の上では1301mmに対して1300mmと、ほぼ同じ。だが、356/2の方が低く見える。細身のタイヤがフェンダーの内側に組まれ、ボウルを伏せたようなシルエットで、宇宙開発競争の激しかった時代のデザインにも見える。未来を予見したように。
1949年に、AUTOCARはスイス・ジュネーブ・モーターショーで発表された356を記事にしている。戦前のアウト・ユニオン・グランプリマシンのデザイナーが手掛けたエレガントなクーペは、技術的に大きな関心を生むと伝えていた。
この続きは、911 356/2 新旧ポルシェ比較試乗(2)にて。
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