現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > フェラーリやマセラティと公道レース ACエース・ブリストル 3台のみの空力ボディ 後編

ここから本文です

フェラーリやマセラティと公道レース ACエース・ブリストル 3台のみの空力ボディ 後編

掲載
フェラーリやマセラティと公道レース ACエース・ブリストル 3台のみの空力ボディ 後編

フェラーリと競い合ったACエース・ブリストル

鮮やかなレッドのボディに139のゼッケンを付けた、シャシー番号BEX148のACエース・ブリストルは、しばしばイタリアのクラス上とも渡り合った。当時の写真では、8台のフェラーリと並んで走る姿が撮影されている。

【画像】3台のみの空力ボディ ACエース・ブリストル・ペンツ 歴代のACカーズ 最新コブラも 全84枚

ベネズエラの大きなレース・イベントとして数えられたのが、トロフェオ・シェル・ラ・トリニダード。ACエース・ブリストルは、初代オーナーのオスカー・ルピ博士によるドライブで、1958年に7位、1959年には2位を掴んでいる。

翌1960年のイベントへ参戦した後、ルピは新しいACエース・ブリストルを購入。善戦したシャシー番号BEX148は一線を退くと、新しいオーナーが1990年までスポーツカーとして公道で堪能したようだ。

数年後、ACオーナーズクラブのティム・アイルズ氏が眠っている状態で発見。専門家のナイジェル・ウィンチェスター氏の協力を得ながら、可能な限りオジリナル部品を活かし、当時の姿を蘇らせた。

ドイツの技術者、カール・ペンツ氏のチューニングが与えられたACエース・ブリストルは、2013年のグッドウッド・リバイバルまでに再生。イベント内のフォードウォーター・トロフィー・レースで、その勇姿を披露した。

ティムは数年間オーナーとして状態を維持し、ドイツ人コレクターに売却。最近になって、英国のクラシックカー・ディーラー、ペンディン・ヒストリックカーズ社へ渡ってきたという。

BMW由来の2.0L直列6気筒エンジン

ノーマルのACエースのスタイリングは完成しており、そこへ手を加えることは余計な作業にも思えてしまう。しかし、低められたフロントノーズによって空気抵抗が抑えられ、ある程度は最高速度が上昇したことは間違いないのだろう。しかも美しい。

小さなドアを開いてドライバーズシートへ飛び乗ると、ピッタリ身体にフィットする。ACエースを着たような、心地良い感覚は変わらない。

足もとには滑らかに傾くフロアヒンジのペダルが3枚。ステアリングホイールは大径だが、想像より軽く回せ、直感的にクルマの向きを決めていける。

中折れしたシフトレバーの下には、ブリストル社の4速マニュアル・トランスミッションが構えている。航空機水準の極めて正確なタッチで、明確なゲートへ積極的に導ける。

コンパクトなエンジンルームには、BMW由来のブリストル社製2.0L直列6気筒エンジンが収まっている。ヘミヘッドに3連のソレックス・キャブレターを載せ、走りにふさわしい勇ましいサウンドが放たれる。

高音の響きを伴って、2500rpmを過ぎた辺りからパワーが高まる。4500rpmを過ぎると、間違いなく力強い。当時の一般的な6気筒は、これほどスムーズに高回転域まで吹け上がらなかった。

キャブレターのジェットと点火プラグがマッチしていれば、6000rpmまで引っ張れる。2速で110km/h、3速で160km/h近くまで到達できる。

サーキットで渡り合える有能なマシン

サスペンションは少し硬めだが、ドライバーを激しく揺らすほどではない。コーナーでは殆どボディロールせず、ステアリングはニュートラル。ACエース・ブリストルを高速に安定して走らせる、自信が湧いてくる。

速度域を問わず、コーナリングラインを調整するのに大きな筋力は不要。必要以上の集中力もいらない。スピードが増すほどにステアリングホイールは軽くなり、本能で操れるような、精度も高まっていく。

1950年代後半のショールームに並んでいたスポーツカーで、ブリストル・エンジンを搭載したACエースと互角に渡り合える、純粋なモデルは存在しなかったといえる。初代オーナーだったベネズエラのルピも、その訴求力へ惹かれたに違いない。

公道でも不安なく190km/h近いスピードに迫れ、燃費は7.1km/Lと当時としては優秀。乗り心地の良い、2シーター・スポーツカーだった。フェラーリやマセラティを工面できない有能なドライバーにとっては、サーキットで渡り合える頼れるマシンにもなった。

政治の不安定なベネズエラで生き抜いた1台

カール・ペンツ氏は、3台のACエース・ブリストルに手を加えている。残りの2台のうち、アントニオ・イスキエルド氏のACエース・ブリストル、シャシー番号BEX149は1960年代以降の所在が不明。少なくとも、多くのイベントへ参戦した記録はある。

イスキエルドは後に売却し、ACカーズから新しいACエースを買い直したようだ。こちらのクルマは、1959年までコロンビアやベネズエラのレースに参戦し、現在もコロンビアで生き抜いている。

レニー・オットリーナ氏のACエース・ブリストルは、1957年のカラカス1000キロメーターズを走り終えると、マセラティ200Sと交換された。その200SにはV8エンジンが押し込まれドラッグレーサーへ転身したが、1980年代にスクラップと化した。

オットリーナ自身はレーシングドライバーでありながら、テレビ番組の司会者としても人気で、1978年のベネズエラ大統領候補にも選ばれている。しかし、選挙直前に飛行機事故で命を失った。

カール・ペンツ氏や、ACカーズの輸入代理店を営んでいたフアン・ジャック・フェルナンデス氏の消息も明らかではない。少なくとも政治の不安定なベネズエラで、1台のACエース・ブリストルが生き抜いたことだけは明らかだ。

協力:ペンディン・ヒストリックカーズ社

ACエース・ブリストル・ペンツ(1957年)のスペック

英国価格:2165ポンド(1957年時)/35万ポンド(約5775万円/現在)
販売台数:3台(ペンツ仕様のみ)
全長:4165mm
全幅:1500mm
全高:1245mm
最高速度:194km/h
0-97km/h加速:8.7秒
燃費:6.4-9.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:813kg
パワートレイン:直列6気筒1971cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:129ps/5750rpm/170ps(レース時)
最大トルク:17.6kg-m/4500rpm
ギアボックス:4速マニュアル

こんな記事も読まれています

無冠の帝王が汚名返上。苦節13年で初王者のヌービル「本当に長かった。大変な努力へのご褒美だ」
無冠の帝王が汚名返上。苦節13年で初王者のヌービル「本当に長かった。大変な努力へのご褒美だ」
AUTOSPORT web
フェルスタッペンがドライバーズ選手権4連覇【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP 決勝
フェルスタッペンがドライバーズ選手権4連覇【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP 決勝
AUTOSPORT web
古さと新しさが同居した天才的デザインに仰天!! ディフェンダーの「貫禄」にシビれた!!!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
古さと新しさが同居した天才的デザインに仰天!! ディフェンダーの「貫禄」にシビれた!!!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
ベストカーWeb
ドリキンが自腹購入したホンダ「シビックタイプR」でチューニング指南! 無限×ヤマハコラボの「パフォーマンスダンパー」は買いです
ドリキンが自腹購入したホンダ「シビックタイプR」でチューニング指南! 無限×ヤマハコラボの「パフォーマンスダンパー」は買いです
Auto Messe Web
【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
AUTOSPORT web
1.2L 3気筒+モーター3基で300ps ルノー・ラファール E-テックへ試乗 アルピーヌに相応しい走り
1.2L 3気筒+モーター3基で300ps ルノー・ラファール E-テックへ試乗 アルピーヌに相応しい走り
AUTOCAR JAPAN
ヒョンデ「アイオニック5」がマイチェンで航続可能距離703キロに! 気になる車両価格は523万6000円から…30台限定の「コナ マウナ ロア」にも注目
ヒョンデ「アイオニック5」がマイチェンで航続可能距離703キロに! 気になる車両価格は523万6000円から…30台限定の「コナ マウナ ロア」にも注目
Auto Messe Web
『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
AUTOSPORT web
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
VAGUE
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
WEB CARTOP
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
Auto Messe Web
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
レスポンス
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
AUTOCAR JAPAN
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
AUTOCAR JAPAN
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
AUTOSPORT web
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

172.0250.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.1290.0万円

中古車を検索
フィットの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

172.0250.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.1290.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村